伝統の和傘について
和傘は竹が多用された昔ながらの生活道具のひとつです。竹虎も百年前の創業当時は和傘の材料を大量に扱っていたと言う事で傘との縁は浅からぬものがありますが 現在の生活では軽く、丈夫で機能性にも優れた洋傘が沢山あって和傘を使う事は、ほとんど無くなっているのではないでしょうか。自分は竹といえば目のないほうですし、 当時は本店でも和傘は普通に販売されていた事もあり 実は20代の頃に母のおさがりの和傘を使っていました。今にして思えば細身で比較的軽いものでしたがやはり使い勝手や携帯には決して便利が良いとはいえず常に車に積んで手ぶらの時にだけ使用していたのです。それでも少しくらいボロボロになっても醸し出す風合いが良く結局ずっと長く愛用させてもらいました。竹虎本店でも扱う事のなくなった、この和傘ですが ご縁があり今回は少し無骨な男性向きの番傘を 別誂えで見た目にもお洒落な朱胴にしそして、特産の黒竹を柄に使い特別に製作していただく事になったのです。
蛇の目模様の番傘
傘の白抜き模様の輪が蛇の目のように見えることから「蛇の目」と呼ばれます。さて、蛇の目傘、番傘は和傘の中でも比較的よく聞く言葉です。一体どこが違うのかと言いますと蛇の目傘は作りが繊細で番傘に比べて約200グラムほど軽量、一方番傘は持ち手も太く、どちらかと言うと男性向けの和傘と言えます。
朱胴
竹の傘骨部分の蛇の目部分を朱色に塗りあげた仕上げなので傘を広げたら白い蛇の目模様が現れ、傘を閉じると胴の一部分が朱色に見える朱胴のあしらいです。
竹骨48本
和傘ならではの伝統の繊細な細工は、48本の竹骨に集約されているように思います。惚れ惚れとするうつくしさからは、閉じたり開いたりする確かな機能性を感じるのです。
黒竹柄と削り部分
高知県特産の黒竹を丁寧に真っ直ぐに矯め直しています。自然な竹の油で拭き上げられた渋い光沢を放ちます。和傘の構造上、黒竹柄の一部分の表皮は薄く削られています。
ハジキ
傘が閉じないように留めているのがハジキ。黒竹番蛇の目傘には金属製のハジキが付いています。上下2カ所に上ハジキ、下ハジキと付く傘もありますが、ハジキは一カ所だけに付いています。
黒竹のこだわり
黒竹は、細くても非常に丈夫な竹です。黒竹のツヤは、塗料ではありません。竹をバーナーであぶった時に竹からにじみでる竹の自然な油分です。この丈夫さと竹の独特のしなりを生かして竹虎では縁台や玄関すのこに使っています。表面の色は、生えてから秋頃までは緑色ですが、次第にメラニン色素が増えてきて紫黒色、又は、紫褐色に帯びてきます。青竹と比べて幹が細いのが特徴です。
伐採してきたばかりの黒竹は自然のものですから一つとしてまっすぐなものはありません。そこでまず黒竹をまっすぐに直すため「ため直し」という作業を行います。黒竹はガスバーナーで一本づつ丁寧にあぶられ、竹自身から出る油分で拭き上げると見違える様にツヤが出て美しくなります。黒々とツヤが出た黒竹は、匠の熟練の技でため直され(曲がりを専用のため木で矯正する)真っ直ぐな黒竹の製品へと生まれ変わるのです。
カッパ
頭部分にはカッパと呼ばれる布が、取り付けられています。つり紐は持ち歩きの際や、ぶら下げて保管する場合に使います。
黒竹柄の番傘
もともと番傘は実用性が第一で一般的に使われる普及品というイメージがあり、作り自体もどちらかと言うと粗い作りものだったようです。
雨が恋しくなる。
久しぶりに手にした和傘。黒竹を使い色合いも別誂えにしてもらった、こだわりの一本。見上げれば青い空…雨が恋しくなる不思議な気持ちなのです。
サイズ
天然素材を手作りしておりますので、形や色目、大きさが写真と若干違う場合があります。
※お手入れ方法
使用した後は黒竹持ち柄を下にして水切りをして開いて日陰干しをしてください。長期間使用されない場合には年に数回程度は開けて風をいれるのが長くお使いただくコツです。