虎竹の油抜き(矯め直し)
竹の油抜きとは?
虎斑竹の特徴は何と言っても表皮に浮かぶ日本唯一の美しい虎模様です。しかし、その虎模様は群生している竹に鮮明に浮かんでいる訳ではありません。美しい虎竹細工をお届けするには、伐採後に竹の「油抜き」という加工や「矯め直し」と呼ばれる竹の矯正作業が必要なのです。竹の油抜きとは、どのような工程なのか?竹職人の伝統の技でもある竹の製竹作業を紹介していきたいと思います。
なぜ「油抜き」の作業が必要か?
油抜きにはガスバーナーや炭火を使う乾式油抜き(火抜き)と、熱湯を使う湿式油抜き(湯抜き)があります。竹は油分の多い植物なので、余分な油抜きをする事で耐久性の向上・竹表皮の汚れ落としやツヤだしの効果が出ます。油抜きを施した虎竹は、山に生えているときに比べて虎模様が綺麗に現れています。
なぜ「矯め直し」の作業が必要か?
矯め直しでは、油抜きをした熱を利用して竹の曲がりを一本一本矯正していきます。竹は真っ直ぐというイメージがあるかも知れませんが、一本として真っ直ぐな竹はありません。この矯正作業がないと、真っ直ぐな竹を利用した竹細工はできないのです。
700度の炎で炙る
竹の太さや個性、乾燥具合などによってバーナーに竹を差し入れるタイミングや火に炙る時間はバラバラです。焦がさないよう、それぞれ時間を微妙に調節しながら油抜き作業をしていきます。油抜き作業が始まると、糖質豊かな竹からは鼻をくすぐる甘い香りが工場一杯に広がります。
ガスバーナー
日本唯一の虎竹は、この大型のガスバーナーを使い油抜きしていきます。5本のバルブからゴーゴーと音をたてて炎が吹き出す中は700度の高温になるのです。
短い竹は専用バーナーで
短い竹はそれ専用の小型バーナーがあり効率よく仕事ができるようになっています。竹に付着していた汚れを落とし、虎模様をより美しくさせます。
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竹瀝(ちくれき)
天然の油成分を多く含んだ竹からは熱を加えると切り口や表面から竹瀝(ちくれき)と言って竹の油分が噴き出します。この油分を利用してウエスと呼ばれる布で竹を手際よく拭き上げていくのです。
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ウエス
竹からにじみでる油成分を、竹の汚れと一緒にウエスで綺麗に取り去り竹の自然なツヤを出していきます。 油と一緒に拭きとられた竹表面の汚れで、ウエスは真っ黒になり、油でカチカチに固まってしまいます。竹の油分を含んだウエスは火をおこす際の着火剤としても使われます。
腕前はウエスでわかる
竹虎では油抜き作業と言えば、まずこのウエスの扱い方を先輩職人から教わります。ウエスを上手に使うことができず、汚れた部分でぬぐってしまうと、竹に汚れが残ったまま綺麗に拭き上げることが出来ません。「油抜きの上手さはウエスを見ればわかる」と昔からの職人がつぶやきます。
矯め直し
竹は熱を加えると柔らかくなる性質があるため、油抜き後の竹が柔らかくなっている状態で矯め直し作業を行います。矯め木と呼ばれる穴の開いた大きな木に竹を差し込み、曲がりのある部分を一節ずつ押し曲げながら、竹を真っ直ぐにする作業です。
竹虎の矯め木
竹虎工場の矯め木には、よく見ると彫り込みが6箇所あります。彫り込みは、それぞれ幅を微妙変えてあり、太かったり、細かったりと、どのような竹の曲がりでも矯正できるように工夫が施されています。
矯め木は職人の手作り
竹虎の矯め木は、もちろん職人の手作り。一枚の分厚い木材からノミを打ち続けて作り上げます。手作りだからこその、この工夫。念入りに削り上げた矯め木は、10年近く使い続けられ、矯め作業を支えてくれます。
水で冷やしながら
矯め直しは熱くなった竹の繊維を伸ばしながら整えていきますが、竹が熱いままでは、また元の曲りがある状態に戻ってしまいます。竹に水をつけて冷却しながら矯め直しをするのも、矯正作業の技のひとつです。竹を真っ直ぐに矯め直せるということは、反対に曲がりをつけることも出来るということ。縁台足元の支えに使う竹などは曲がりを入れたりもします。
日本唯一を届けるために
竹虎の工場ではこの製竹作業を4~5人のチームで行っています。竹枝の付け根部分を取り払う目打ち作業を行った後、油抜き、そして矯め直し...どの工程も日本唯一の虎竹を、そして虎竹のある暮らしを全国へ届けるために欠かすことのできない大切な仕事なのです。
矯正作業を終えた美しい虎竹
群生している竹そのものが真っ直ぐ、そして美しい色をしていて、製竹作業が行われていること自体をご存知ない方も少なくありません。そんな方に少しでも竹文化と職人技を知ってもらいたい...そのため製竹作業は竹虎工場見学やインターンシップ、マスコミ取材でも必ずといって良いほどご覧いただいている工程です。
伝統の技を繋ぐ、竹文化を考える
竹の油抜きに矯め直し、竹の矯正作業は、何百年と続く竹文化を守るための基本の技でもあると同時に、継承し続けねばならない伝統ある技でもあります。一人でも多くの方と一緒に、地域の伝統を繋いでいくこと、竹文化を紡いでいくこと、それが100年後のかけがえのない宝物のひとつになると信じています。
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