百三十一年目、竹の道
■虎竹の里に職人あり
「ガタガタガタ!ゴトゴトゴト」
普段静かな虎竹の里に、竹運搬機の大きな音が響きます。虎斑竹は、晩秋から1月下旬までが伐採のシーズン。細く険しい急斜面の山道を、竹の束を担いでひょいっと下りてくるのはベテラン山職人のノブちゃんです。キャタピラーのついた竹運搬機に一束ずつ積んでいきます。
伐採した直後の竹は水分を多く含み、慣れない方は一本持ち上げるのもやっとの重さです。竹運搬機は、農業用の機械を改良して使用。エンジンブレーキをかけながら後ろ向きに急斜面を下るのです。竹虎では、職人と共に、この「竹の道」を約百三十年間守り続けてきました。
虎斑竹は日本唯一の美しい虎模様が特徴です。ただ、竹林の虎竹達に鮮明な模様が現れている訳ではありません。伐採後に「油抜き」や「矯め直し」など職人が手を施すことで、虎斑竹の魅力が引き出されます。
ガスバーナーの温度は七〇〇度。竹を炎で炙る「油抜き」では、竹の太さや個性、乾燥具合などを見極め、竹を差し入れるタイミングや時間を調節します。竹は油分が多いため余分な油を抜く事で耐久性の向上・竹表皮の汚れ落としやツヤ出し効果が出るのです。一本として真っ直ぐな竹はありません。矯め直しでは、油抜き後の熱を利用して竹の曲がりを一本一本矯正していきます。この工程を経て、初めて竹細工に使える竹材となるのです。