読売新聞 2019年12月2日

新聞掲載
読売新聞で、四国の伝統工芸として竹虎が紹介されました。竹虎の歴史や四代目の思い、ベテラン職人が袖垣を作っている場面が掲載されています。


四国の伝統工芸知っていますか

編み込む 無二の模様

竹林に足を踏み入れたかのような、爽やかな竹の香りが工場に漂う。高知県須崎市安和の「竹虎 山岸竹材店」は、地元の山でのみ育つ「虎斑竹」を材料に、庭や玄関回りを飾る袖垣、草履、バッグといった竹細工製品を手がけてきた。この竹は名の通り、トラのような茶褐色のまだら模様が表面に入り、その独特の風合いは唯一無二の存在だ。模様が入る理由には、土壌中の菌の影響など諸説あり、はっきりしていない。4代目の山岸義浩社長(56)は「竹それぞれで模様は全て違う。同じ製品は二つとない」と話す。竹虎は1894年、須崎市の山主の娘と結婚した初代宇三郎氏が大阪市で創業。2代目が終戦直後、焼け野原となった大阪から原産地へ拠点を移した。今、職人約10人が加工に打ち込む。高さ10メートルほどの虎斑竹は、まず耐火れんが製の窯に通し、炎と約700度の熱であぶって余分な油分を飛ばす。この「油抜き」で耐久性が増し、つやも出るという。蒸発した糖分の甘い香りが工場内に広がる。

袖垣は、この道約30年の大崎正俊さん(57)らの担当だ。格子はまだら模様が見えるように虎斑竹を背中合わせにして組んでいく。外枠には孟宗竹を使い、細く割った虎斑竹を巻く。大崎さんは「枠に丸みを持たせた玉袖垣は、孟宗竹に切れ目を入れ、曲げていく。途中で折れてしまうこともあり、一番難しい」と汗を拭った。現代人の生活からは徐々に縁遠くなっている竹細工だが、高知県は全国に誇りうる伝統的特産品11点の一つとして、竹虎の虎斑竹細工を指定し、PRを進めている。「若い世代にどうアピールし、虎竹の里をどう守っていくか。試行錯誤していくしかない」。山岸社長は表情を引き締めた。


(新聞「読売新聞 2019年12月2日」より転載)

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