虎斑竹
虎斑竹の歴史
高知県には日本で唯一、県内のほぼ中央に位置する山里、須崎市安和にしか生息しない「土佐虎斑竹」の工芸品がある。表面に虎のような模様が入った竹。大正五年、県出身の植物学者・牧野富太郎氏により命名された。淡竹の仲間に分類されるが、このような模様が入った竹は珍しく、他の場所に移植を試みてもなぜか虎模様が綺麗に出ないというから不思議。専門家が調査しても、確かな理由はいまだ分かっていない。この土佐虎斑竹で製品を作り始めたのは、現在も須崎市安和で製竹業と竹製品の加工販売を行なう「竹虎」の創業者、山岸宇三郎氏。元々大阪で竹商人をしていた氏が、土佐の虎斑竹に魅せられたことが始まり。当初は虎斑竹を関西に持ち帰り、加工、輸出していたが、二代目・義治氏より須崎市安和に移住し、現地での加工を開始。今や、メイドイン土佐の竹細工として世界的に知られるようになった。
手作業、手作りの結集
希少な虎斑をいかした竹細工
間口の狭い急斜面の谷あいでしか生息しない虎斑竹は、大正の初め頃から竹虎と山主さんが協力して地道に生産量を増やし、手入れをしながら竹林を守ってきた。生育過程で一切の薬剤や化学肥料を使わず、暮らしの中で使われる竹製品を、安心・安全の竹材でつくることにこだわっている。製品は、もちろん全て手作業、手作り。竹の旬である11~1月に伐りだし、太さ、模様のつき方、用途別に選別し、必要なサイズにカット。ガスで油抜きをし、曲がりを矯正したら、手仕事で様々な製品へと生まれ変わる。重労働で手間ひまのかかるこれら一連の作業にはベテラン職人さんの存在が欠かせない。完成した多彩なアイテムは、虎模様がアクセントとなり、ひと味違うシックでモダンな佇まいだ。
竹虎(株式会社 山岸竹材店)
暮らしが華やぐ竹製品の創造
治27年、初代が大阪で竹材商として創業。現在は四代目の義浩氏が代表を務め、竹材と竹製品の製造販売を行なう。初代がほれ込んだ「虎斑竹」を、地域の宝として生産者と共に大切に守り続け、日本で唯一の取り扱いを誇る。他にも、白竹、黒竹、煤竹、孟宗竹など竹のことならお任せ。工場と本社に併設されたショップでは、日用雑貨、インテリア雑貨、エクステリア、竹炭、竹酢液などバリエーション豊かな竹製品が所狭しと並び、眺めるだけでもワクワク。古くから日本人の身近にあった「竹のある暮らし」の良さを、再び感じさせてくれる。また、縁台や袖垣等は日本全国特注でのオーダーも可。オンラインショップや電話から問い合わせを。
山岸義浩さん、社員の皆さん
メディア出演も多い四代目、名物社長。「竹文化の創造と発信で豊かな竹のある暮らしを提案する」を企業理念に掲げ、世界中を奔走。インターネットでの情報発信や販売、海外での講演、虎斑竹の電気自動車製造など、アグレッシブに活動中。日本の竹の魅力をさらに広め、未来に向けて新しい価値を創り、虎斑竹を守り続けていくことを使命とする。
(雑誌「土佐の手づくり工芸品」より転載)