猫家具に職人の技
数万~数十万円「猫の手借りたい」ほど人気
猫ブームとともに、日本の職人の技を駆使した猫グッズに注目が集まっている。ベッドにソファ、手提げ籠...。木や竹といった温かみのある素材を使った手作りで、精巧さは人間用と変わらない。数万~数十万円と高価だが、生産が追いつかないものもある。
家具のまち 大川
家具のまちとして知られる福岡県大川市で7日に始まった約200社、約1万点の家具が展示販売される「大川木工まつり」の会場の一角。「かわいい」と言いながら携帯電話で写真を写す人だかりの先に、猫が使うための小さなベッドやソファが並んでいた。大川家具の品質の確かさをPRしようと、1年前から市と家具業者が協力して作り始めた「ネコ家具」だ。
人間用の家具を猫のサイズにあわせてそのまま縮小し、職人が同じ材料、作業で作る。昨年10月、2社がつくったベッドとソファの動画をネットに投稿。受注生産のため、いずれも11万円(税抜き)と高価だが、昨年11月の販売開始移行、国内だけでなくフランスやベルギー、シンガポール、香港からも注文があり、50個以上売れた。今年4月からは大川市のふるさと返礼品にもなり、さらに話題を呼んでいるという。動画再生は50万回を越す。
木工まつりを機に、新たな5社が参入(うち2社は非売品、値段は12万~27万8千円)。今回初めて7社のネコ家具がそろって展示された。自宅で6匹の猫を飼う北九州市小倉南区の松島幸子さんは、ネコ家具を見るために家族3人で会場を訪れた。「値段は高いですが、同じ命、同じ家族。私のを我慢してでも買ってあげたくなります。」
大川市インテリア課の担当者は「海外からの問い合わせもあり、猫の手も借りたい状態」と笑顔を見せていた。木工まつりは8日まで。
新潟も 高知も
新潟県関川村で作られている「猫ちぐら」。コシヒカリのわらを使ってかまくらのような形に編み上げた、わら細工の猫の家だ。
生産する「関川村猫ちぐらの会」によると、ちぐらは子守の「ゆりかご」の意味。わらに保温性があり、狭くて暖かい場所を好む猫の性質に適した構造だという。1個に約1週間かけて手作りしている。1匹用サイズで2万3千円。大正時代ごろから村で親しまれていた猫ちぐらを、町おこしのために商品化したのは1980年。ここ4~5年、猫ブームに加え、デザイン性の高さがネットの口コミで広まったことで注文が相次ぎ、納品まで3ヶ月~1年弱かかるという。
1894年(明治27年)年創業の竹材店「竹虎」=高知県須崎市=は、竹で編んだ「ねこ手提げ籠」を販売している。限られた地域でのみ育つ虎斑竹を用い、丸みを持たせたデザインで猫がすっぽり入る。制作した職人が猫好きで、中に猫を入れたことから名前が付いた。価格は4万円。山岸義浩社長(55)は「猫好きの人が竹細工の魅力に触れるきっかけになれば」と願う。
(新聞「朝日新聞 2018年10月8日」より転載)