とさびと
虎斑文様 世界へ駆ける
竹虎 山岸竹材店 山岸義浩さん
「何てクール」「すばらしい」。8月、メキシコ・ハラパであった世界竹機構の世界竹会議。竹製の外装が目を引く電機三輪自動車が登場すると、会場が沸いた。乗っていた須崎市の竹材加工販売店「竹虎 山岸竹材店」社長の山岸義浩さん(55)は「つかみはOKじゃったねぇ」。日本の竹文化を知ってもらおうと狙った試みだった。
山岸さんはこの会議で世界竹大使に任命された。京都大学大学院の柴田昌三教授(竹林生態学)に続いて国内で2人目。任命した国際団体「世界竹機構」(米)は「竹の天然資源の可能性を見出し、世界に示すために積極的に関与した」と評価した。
「竹虎」は須崎市安和地区の特産「虎斑竹」を扱う。虎の毛皮のような模様が特徴の淡竹。模様は美しく土佐藩は藩外に出さなかったという逸話を残す。山岸さんは大学を卒業し、1980年代後半に家業を継いだ。
「和から洋へ」と生活様式の多様化や安価なプラスチック製品の普及で、竹製品の需要は年々減り続けた。「デパートなどでの地場産品フェアでは土下座して買ってもらったこともありました」という。潮目は2000年代に入り、変わった。ウェブを通じ、国境を越えて注文が舞い込んだ。デザインや機能性の要求が高い世界の顧客とのやり取りを通じ、「竹虎」の製品も洗練されていく。バッグ、照明、スリッパ、フォークやスプーン、コーヒードリッパー、 名刺入れ、枕などと次々に商品化を進めた。2016年には米・ニューヨークの展示会に「ニューヨーカー」と名づけた竹バッグを出品。虎竹の文様と切削や曲げなどの竹材加工技術の粋を集めた竹の曲線が評価された。民芸品のレベルを超えたファッションブランド化も見据える。
「借金を抱えて廃業しかないと追い詰められた時期もあったので今は夢のよう。竹の神様に救われて今がある、と思っています」
(新聞「朝日新聞 2018年10月11日」より転載)