竹虎四代目の挑戦
株式会社山岸竹材店 山岸 義浩
日本人の暮らしの衣食住に深くかかわってきた竹が忘れられつつある今を、どのように変えていくのか。大きな課題に直面しているかと思いますが、皆様のお陰で今年で創業122年を迎えます竹虎も百年守り育ててきた虎竹の里の竹文化をこれからも守っていきたいと思っています。
田舎の小さな竹屋ですので、大きな事はできません。ささやかながらでも自分たちのできる事をコツコツとやっていくだけでありますが、そんな中でここ数年、試行錯誤しながら、取り組みをさせていただいている事がいくつかあります。
その一つが地元大学生のインターンシップ受け入れです。最初は自分達のような竹屋に大学生が来てもらっても何ら学ぶものがないと心配していましたが、始めてみますとそれぞれの学生さんは未知の体験をした事に大喜びしてくださり、安心しました。
何よりも嬉しく思ったのが、先生役をする職人が日頃ふれあう事のない若い皆様との交流の中で、自分達の仕事を再認識してくれていると感じた時です。そして、竹林見学なども積極的に受け入れるようにして、虎竹の里の竹の事を、出来る限り知ってもらえる機会を作っています。
インターンシップや竹林見学など一見非常に小さな事のように思われるかも知れませんが、全ての人がスマホを持ち、フェイスブックやツイッター、ラインなど情報発信できる時代には、このような小さな積み重ねが大きな竹の輪を作っていくことになると考えています。
数年前に京都の東洋竹工さんが京都大学さん初め地元企業、研究所、京都市などと共同開発された竹の電気自動車「Bamgoo(バングー)」を知り、このような竹自動車を高知特産の虎竹で製作したいと思い、製作費用をクラウドファンディングという新しい手段を使いました。
資金が集まるというだけでなく、出資いただいた一人一人の皆様にとって、今まで知らなかった竹の自動車が自分事となると言う利点があり、それがSNSで共感を広めながら次々と広がっていきます。時速50キロのスピードがでる車で長距離を走っても、竹編みが全く問題がないという竹の強さやしなやかさをアピールすべく、この夏、虎竹自動車「竹トラッカー」で高知から横浜まで約1,000キロの道のりを走破しました。
その道中で出会う人たちからも竹虎の情報拡散があり、日本の皆様は竹を知らないのではなく、竹を忘れているだけなのだと、竹への可能性を強く感じる旅となりました。
最後に何よりも最近、力を入れていきたいと考えているのが、2006年から毎日続けている朝礼と、毎月続けている全社会議です。自分達のような小さな会社でも部署が違えば、毎日の業務に流され、一堂に会して話し合うことなど実は意外と機会が少ないものです。毎朝の朝礼でもそうですが、全員が揃う全社会議では虎竹の事や竹虎の歴史、自分の竹への思いを毎月少しずつ伝えるようにします。
自分では当たり前と思っている竹の知識を若い社員は当然知るよしもありません。竹を知り、竹の良さが分かってきた社員は毎日の生活の中でも自ら自社の竹製品を使うようになります。竹文化の見直し、復活には何か特効薬や近道があるわけでもなく、まず自分達の足元から竹を見直し、自分達が変わっていく他にないと考えています。
(雑誌「特産情報 2017 4」より転載)