朝日新聞 高知版 2017年2月8日

新聞掲載
四国経済「明日を拓く」のコーナーで、老舗竹屋の竹虎が紹介されました。生活から竹製品が減ってきた現在でも若い人に竹を知ってもらいたいという思いも込め、2017年3月には虎竹バッグをパリの展示会に出展予定です。



明日を拓く

山岸竹材店(高知県須崎市)

虎模様 ファッションに


竹籠、竹財布、竹名刺入れ、竹インテリア......。高知県須崎市安和の山岸竹材店には約4千点の竹細工が並ぶ。特に人気は「虎斑竹」の製品。表面はトラの皮のような模様で覆われている。模様が浮かび上がるのは、700度の窯の中で熱してから。熱で竹の中から油が出て、表面がつやっぽく光る。この竹にちなんで、店の屋号は「竹虎」だ。 4代目の山岸義浩社長(53)は「虎斑竹はこの地区に生える貴重な竹。曽祖父の代から使っているので、この伝統を大事にしたい」と話す。

創業は1894年。大阪市天王寺区で曽祖父の宇三郎さんが竹材店を開いたのが始まりだ。良質な竹を求めて全国を歩いたという宇三郎さん。大阪と高知を小舟で行き来し、虎斑竹を運んでいた。太平洋戦争のさなか、跡を継いだ2代目の義治さんは出征。帰国すると、大阪市の店は空襲で跡形も無くなっていた。戦後、家族が疎開していた須崎市に店を移した。

山岸竹材店はやがて虎斑竹の竹細工を積極的に売り出すようになった。山岸さんは「幼い頃から虎斑竹に囲まれて生活していた。だから、いずれは店を継ぐを思っていた」と振り返る。山岸さんは1985年に大学を卒業後、すぐに店で働き始めた。竹製だった生活用品が、海外の安価なプラスチック製にどんどん変わっていったころだ。100円ショップも誕生し、全国に広がっていた。

店の売り上げは伸びず、経営は厳しかった。販売促進のイベントに参加したり、県外のデパートに販売に出向いたりしたが、「何をやっても駄目」だった。97年には「もうインターネットしかない」と意を決してネット販売を始めたが、3年間で売り上げはわずか300円。店を閉めることさえ考えた。2000年、県産業振興センター主催の「e商人養成塾」に参加した。ネットを活用したビジネスに取り組む中小企業向けのセミナーだ。ネットで衣料販売を手掛ける講師の社長に指導を仰いだ。

ようやくネット通販が軌道に乗り始め、01年12月には1カ月で100万円を売り上げた。「パソコンの画面からもこちらの熱意は伝わる。ネット通販も目の前で売る対面販売と同じだ」と気づいた。

そのころ、大学生のインターンシップを店に受け入れていた。竹の生活用品が身近なものではなくなり、中には青竹踏みを知らない学生もいた。「若い人にも竹を知ってもらおう」と山岸さんは思った。「海外で注目を浴びれば一段と価値が高まり、日本の若い人にも受けるのでは」

16年2月にニューヨークのファッション展示会に参加し、竹バッグ「ニューヨーカー」を出店。来場者に「アメイジング」「ビューティフル」と声をかけられ、好評だった。今年3月にはパリの展示会に、改良した竹バッグを出店する予定だ。「竹には人を引き付ける魅力がある。竹を手に取ったお客さんが笑顔になってもらえるように100年後も商売を続けていたい」(高木智也)


虎斑竹で覆った電気三輪自動車は「竹林見学に使っています」と山岸義浩社長=高知県須崎市安和の山岸竹材店

創業当初の屋号は「竹亀」。1951年に株式会社に。従業員は20人。ネット販売はホームページ(https://www.taketora.co.jp/)で。竹の葉を軽くあぶった虎竹茶も人気。問い合わせは電話(0889・42・3201)


(新聞「朝日新聞 高知版 2017年2月8日」より転載)

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