石垣 2017 1月号

雑誌掲載
「長寿企業の秘密」のコーナーで、竹虎の歴史が紹介されました。創業以来百年以上続けてきた竹虎の歴史と虎斑竹への思いを、これからの百年へもつないでいきます。


長寿企業の秘密 竹虎
百年続けてきた虎斑竹の歴史を
これからの百年につないでいきたい

里から出た竹は全部買い取る


山地が多く、県総面積のうち森林が占める割合は全国一の約84%という高知県。海と山に囲まれた須崎市安和に竹材専業メーカーの竹虎はある。初代・山岸宇三郎氏が明治27(1894)年、大阪市天王寺区で竹材商として創業したのが始まりである。竹製品をつくる業者や職人に竹材を卸す商売を営んでいた。

「初代が良質な竹材を探して全国各地の竹の産地を巡っていた際、ここ安和でであったのが虎斑竹でした。初代はこの虎斑竹に惚れ込み、何度もここに足を運びました」と四代目の山岸義浩さんは言う。虎斑竹は表面にきれいな虎模様が出る竹で、全国でも安和のわずか直径1.5㎞圏内にある特定の竹林でしか育成しない。ほかの地に育成を試みても、なぜか虎模様が出てこない普通の竹になってしまうのだという。

「虎斑竹は江戸時代、土佐藩への年貢として納められていましたが、藩令で禁制品と定められていたため藩外に出されることがなく、全国的には知られていませんでした。昔は木材として需要のある杉やヒノキを山に植えるのが普通でしたが、初代は安和の山主に虎斑竹の生産を続けるよう頼み込みました。里から出た竹は全てうちが買い取るからと、それから百年がたった今でもその伝統は続けています」

初代はその後、足しげく通った安和の山主の娘と結婚。大正4年、神戸の工場でも輸出用の竹材の製造を始めた。


会社の火事で固くした決意

第二次世界大戦の空襲で天王寺と神戸の工場が焼け、戦地から復員してきた2代目の義治氏は安和に会社を移すことを決心。そこは、初代の妻の実家もあり、家族が疎開していた場所でもあった。そして、虎斑竹の仕入先もあった。

「屋号を創業時の『竹亀』から『竹虎』に変え、祖父母は盆暮れ正月もなく働きました。今と違って閉鎖的な地域でしたから、よそ者への風当たりも強く、苦労したそうです」と義浩さん。この話を聞いていたからこそ、会社が倒産しかけたとき、初代や二代目が築き上げた竹虎をつぶしてはいけないとふんばれたのだという。

その後、二代目は竹材の卸だけではなく竹製品の製造も始め、縁台や庭園用品、生活用品などを販売していった。生産すればするだけ売れ、昭和50年には虎斑竹の年間取扱数は8万束、社員数も66人まで増えていった。

ところが59年、火事が発生し、会社が全焼。大学4年生だった義浩さんはその日たまたま帰省しており、火事の第一発見者となった。「燃えさかる工場の前で泣き崩れている母の肩を抱いたとき、あんなに大きくて強いと思っていた母の体が軽かった。オレがなんとかしなければと思い、その場で母に『オレが会社を立て直すから任しとけ』と言ったんです。小さいころから自分が継ぐものとは思っていましたが、この時が本当の意味で後を継ぐ決意をしたときでした」と義浩さんは振り返る。翌年、大学を卒業すると竹虎に入社。四代目の道を歩み始めた。




つくる人の思いを伝える。
そのころすでに安い輸入品が出回るようになっていたことに加え、日本人の生活スタイルが変化したことで竹製品の需要も減り、売り上げが落ちていた。「展示会に出したり、ホテルやデパートに商品を置いたり、通販もやりましたが全部ダメ。売り上げは以前の3分の1にまでへりました」という義浩さんが、最後の手段として平成9年に始めたのが、パソコン1台でできるネットショッピングだった。

「でもアクセスはほとんどなく、売り上げは3年間でったった300円でした。12円ン委なっていよいよ倒産かなというとき、eコマースの勉強会に参加する機会があり、そこで目からウロコが落ちました。」義浩さんは自分でネットショッピングをしたことがなく、買う人の気持ちを分かっていないことに気が付いた。そこで、実際にほかのネットショッピングで買い物をし、サイトの内容を研究、13年5月に自社サイトを一新した。すると、その月の売り上げは16万円にも跳ね上がった。その後も自社サイトの改良を続け、今では売り上げの7割をネット販売が占めている。

「ネットショップで重要なのは、商品の紹介ではなく、だれがどんな思いでつくっているのかという商品の背景を伝えることです。販売の方法や商品は昔と変わりましたが、変えてはいけないものは『竹』という背骨。代々百年続けてきた竹虎の歴史をこれからの百年につないでいけるようにしたいというのが、私の一番の思いです」

竹離れが進む日本で、土佐の山と太平洋の潮風に育まれた日本唯一の虎斑竹の魅力をもっと知ってもらいたい。義浩さんは今日もその思いを発信し続ける。


初代・山岸宇三郎氏。竹を使った釣竿製造をはじめ、竹製品の海外輸出も行っていた。

世界的な植物学者である牧野富太郎博士が大正5年に「土佐虎斑竹」と命名した

昭和36年に社員旅行で高知城に行った際の記念写真。50人以上の社員が写っている。

竹虎の店内。道路が整備されて交通の便も良くなり、高知市内や四万十川観光の途中で立ち寄る旅行客も多い

虎斑竹が生育する竹林からの眺め。一切の薬剤・化学肥料を使用しない無農薬の竹で11~1月ごろにかけて伐採する

虎斑竹をガスバーバーであぶって油抜きをすると、虎模様が竹の表面に出てくる。

「昔みたいに生活の中に竹があるようにはならないとは思いますが、最近は新たな竹の良さが見直されてきているということは感じます」と竹虎四代目の山岸義浩さん。


竹虎の強さの秘密

一、安和の山の竹林でしかできない、日本唯一の虎斑竹
二、創業以来百年以上に及ぶ会社の歴史と竹への思い


(雑誌「石垣 2017 1月号」より転載)

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