高知―横浜トコトコ1026キロ
職人技 駆ける
電気自動車「竹トラッカー」
高知県須崎市の安和地区だけで採れる竹「虎斑竹(とらふだけ)」で車体を飾った小さな電気自動車が今月、同市から横浜市まで1026キロを駆けた。竹の加工品を手掛ける山岸竹材店が"動く竹製品"として製作。11日間で12府県を巡り、虎斑竹の美しさや伝統の技を印象付けた。
車の名前は「竹トラッカー」。幅1メートル、全長2.5メートルの三輪電気自動車を、虎に似た模様がある長さ4メートルの竹50本を材料にドレスアップした。
外装は太めの竹材を編んだ「ヤタラ編み」で覆い、内装にも細い竹を編んだ「網代編み」などの技を凝らした。製作には4人で7カ月かかった。
今回の旅は6月に完成した車の披露などが目的で、同店の山岸義浩社長(53)がハンドルを握り1日に出発した。コンビニエンスストアなどで充電しながら、時速30、40キロでのんびり進んだ。一般的な100ボルトのコンセントで6時間充電すると約50キロ走る。
「竹トラッカー」誕生のきっかけは、若い世代の"竹離れ"だ。同社で就業体験した大学生が竹製の「青竹踏み」すら知らないと知った山岸社長が、竹の魅力を伝える手段として発想した。「竹の可能性と本物をつくる心意気を多くの人に知ってほしかった」という。
一方、今回の挑戦は竹細工に関心を寄せる人の多さも浮き彫りにした。製作前に費用をインターネットで募ると、135人から約350万円が集まった。旅のゴールに横浜市を選んだ理由は、特に熱心な支援者がいたからだ。道中でも竹の車は人気を集めた。山岸社長は充電場所で出迎えたり、先導を買って出たりする人に勇気づけられた。
横浜市には11日朝に到着。出迎えた同市で新聞販売店を営む廣田実さん(63)は「虎斑竹の製品は使い込むごとに模様が変わるところが魅力。復活させたいという思いに共感した」と話した。
山岸社長は「代々守ってきた竹を次の100年につなげるため、新たな加工品を開発し続けたい」と意欲を燃やす。
(新聞「日本農業新聞 2016年8月14日」より転載)