竹の電気自動車1030キロ走破
高知から横浜11日かけ 山岸さん笑顔
竹を編み込んだボディーの電気三輪自動車で高知県須崎市から走り続けてきた同市の竹材店社長、山岸義浩さん(53)が1030キロを11日間かけて走破し、11日に目的地の横浜市青葉区の新聞販売店経営、広田実さん(63)宅前に到着した。広田さんは今回のプロジェクトの大口出資者。山岸さんから返礼の竹製ランドリーバスケットを受け取り、笑顔を見せた。
山岸さんは虎の模様が浮き出る虎斑竹を使った竹製品専門店の4代目。竹の素晴らしさをもっと多くの人に知ってもらいたいと、虎斑竹を使った電気自動車を走らせることを発案。クラウドファンディングで資金を募った。製品を愛用していた広田さんが新聞購読者に呼びかけると76万円集まり、24万円足して100万円を寄付した。
返礼として、広田さんは昨年12月に須崎市で竹の伐採や選別、油抜きなどを体験。この時できた竹材で編んだ製品を、竹を使った電気自動車で届けてもらうことになっていた。
電気自動車は構想から8カ月、職人が5人がかりで3カ月かけて製作。座席、ハンドル、後部の荷物置きまで竹で包んである。家庭用のコンセントで6時間充電すると、45~50キロ走る。山岸さんは1日に須崎市を出発し、高松からフェリーに乗り、倉敷、岡山、神戸、京都、名古屋、静岡などを通って、10日に小田原に到着。箱根越で電気がなくなるアクシデントもあったが、行く先々でタオルや飲み物の差し入れを受け、中には車を点検してくれる人もいたという。
11日は近所の人たちなどが出迎える中、広田さん宅前に到着。「おめでとう」と声を掛けられると、感きわまって涙を流した。山岸さんは「夜道を1人で走っている時は心細かったが、応援してくれた皆さんのおかげでここまで来られた」と満面の笑み。広田さんは「失敗しても前へ向かう山岸さんの人柄にひかれ、支援してきた。無事到着してよかった」とほっとした様子だった。
(新聞「毎日新聞 2016年8月12日」より転載)