世界でまとう虎斑竹
須崎特産の竹 服飾に採用
須崎市安和地区特産の、竹の表面に虎のような斑模様が入った「虎斑竹」を、高知市出身で英国王立美術大でファッションデザインを学ぶ中山直哉さん(27)が取り入れ、6月にロンドンで開催された学生の卒業制作のファッションショーで発表した。虎斑竹を提供した「山岸竹材店」社長の山岸義浩さん(52)は「高知の若者が海を渡って日本の伝統文化、しかも故郷の竹を使ったことに感激した」と喜ぶ。【錦織祐一】
虎斑竹は、菌の繁殖で表面に斑紋が現れるとみられる。岡山県真庭、津山両市の自生地は江戸時代から珍重されて乱獲が進んだため、国の天然記念物に指定されている。安和の虎斑竹は、淡竹の変種で、植物学者の牧野富太郎(1862~1957年)が「土佐虎斑竹」と命名し、安和以外への移植を目指したが成功しなかった。これに、1894(明治27)年に大阪で創業した「山岸竹材店」が着目。戦後に安和に移転し竹材や加工品の「竹虎」を開店。現在は4代目社長の山岸さんがネット通販に力を入れている。
高知出身中山さん 英国の卒業制作で発表
中山さんは高知高時代から美術アカデミーで学び、卒業後渡英。2013年に王立美術大に進んだ。昨年から「自然素材を服に取り入れたい」とリサーチする中で、「高知出身ながら知らなかった」虎斑竹を竹虎のサイトで知り、家族や山岸さんの協力で入手した。
スカート裾やバックル、ボタンに
虎斑竹などの竹でスカートの裾やジャケットの背面、バックルやボタンを作り、13点を発表。中山さんは「欧州の人達が想像する竹の使い方とはアプローチが異なるので、美しい曲線美やしなやかな動き、虎斑竹の表皮の美しさに驚かれ、べっ甲と間違われるほどでした」と中山さん。現地のウェブマガジンに取り上げられるなど高く評価された。5月にロンドンを訪れた山岸さんは、「竹の持つしなやかさ、優しさが布の特性と相まって本当によく考えられていると思った。竹も喜んでいると思います」と感慨深げに話す。
(新聞「毎日新聞 2015年8月8日」より転載)