厳選したエレメントで表現する力強く、美しい竹の生命力
ジャパンクリエイティブの最新プロジェクトに参加したステファン・ディーツ。
彼が素材として選んだのは、日本の里山で見つけた「孟宗竹」だった。
プロジェクト:JC14
竹虎・山岸竹材店×ステファン・ディーツ
他の植生への侵入などから、一部では厄介役として扱われることもある孟宗竹。ディーツは素材そのものに注目し、竹の美しさを伝えるアイテムとしてテーブルやベンチを提案した。協働した山岸竹材店4代目の山岸義浩社長も「今までの僕たちは丸竹をそのまま使うと割れてしまうという定説にとらわれすぎて、ディーツさんのように発想を転換したことがありませんでした。作り方として、大きなことを学んだ気がします」と、彼のデザイナーとしての能力を高く評価する。
小手先の技には頼らないストイックで大胆なデザイン手法
「竹にチャレンジすること自体、生まれて初めての経験でした」
ジャパンクリエイティブのプロジェクトで明治27(1894)年創業の高知の老舗、山岸竹材店と協働することになったステファン・ディーツ。初めて取り組む素材に対する新鮮な感覚を生かし、大胆なアプローチで現代的な家具をデザインした。
日本最大級の竹の息吹を明快なデザイン表現に
リサーチのために来日したディーツの視線を釘付けにしたのが、散策中に四国の竹林で見つけた孟宗竹(もうそうだけ)だった。
「ヨーロッパには存在しない圧倒的な大きさと存在感」とディーツが言うように、孟宗竹は日本でも最大級といわれる竹の一種で、なかには直径が18センチにも及ぶものもある。
「丈夫で成長も早いこの竹から感じる生命力を、明快なデザインに集約していきたかった」
竹細工などに多く見られる繊細な表現ではなく、切り出した青竹をそのまま組み上げるというストレートで力強い仕様を提案。一方で、無駄を省いたシンプルな構成に留めながらも、合理性と機能性を極限まで引き出すことに成功した。
素材との率直な対話からステファン・ディーツが導き出した答えは、竹を見慣れた我々日本人にも新鮮な感覚を与えてくれる。
1.ストックホルム国際見本市内のジャパンクリエイティブの発表会場にて。和気あいあいと肩を組むステファン・ディーツと山岸竹材店の山岸義浩社長。
2.丸竹とそのまま組んだ架台は業界でも珍しい取り組み。ガラス板を載せると、さらにシャープな印象が際立つ。
3.組み立て、解体が簡単にできるので、フラットパックにして輸送することが可能だ。オンラインショップを持つ山岸竹材店の販売展開を考えて、ディーツはこうした項目も製品化の条件に取り入れ、デザインを開発していった。
4.フシの揃った孟宗竹を組み合わせて、ベンチが仕立てられた。座面に使われている3本の丸竹を、「巻き込み」という技法を応用した脚部で固定している。
5.ジョイントの仕組みを自ら身振りも加えて説明する山岸義浩社長。「昔はどの家庭にもあった日本の縁台が、デザインの力でこんなふうにアレンジされ、現代に蘇るとは」と感動。
6.脚部分を底から見た様子。幹の内部に入れられたコマを、ネジの要領で回していくいと、どんどん脚が縛り上げられ、しっかり固定される仕組みになっている。
(雑誌「ELLE DECOR No.138 June 2015」より転載)