ストックホルムで絶賛されたジャパンクリエイティブの挑戦
初出展となる「ストックホルム・ファニーチャーフェア」で注目を集めたJC。新たに3名のデザイナーを迎えて発表された、最新プロジェクトを紹介しよう。
ストックホルム・ファニチャーフェアにおけるジャパンクリエイティブの展示会場。これまでに発表した作品を紹介するとともに、手前の楕円形ブースで新作を発表していた。「ストックホルム・ファニチャーフェア」は、他の国際見本市と比べると、比較的会場がコンパクトということもあり、来場者と出展者とのコミュニケーションが生まれやすいのが美点。ジャパンクリエイティブのブースにやってくる人たちも、これまで見たことのない日本のもの作りの新しい側面に触れて「これどうやって作っているの?」と興味深々。
真っ白な雪に覆われた2月初旬のスウェーデンの首都で開催された「ストックホルム・ファニチャーフェア」。同会場において、ジャパンクリエイティブ(以下JC)が、3つの新作を発表した。活動開始から4年目に突入したJCがさらに進化し、次なるフェーズに入ったことを予見させる見応えのある展示となった。
未知の領域に潜む力を日本の技で最大限に引き出す
参加したのは、ピエール・シャルパン(フランス)、ステファン・ディーツ(ドイツ)、バーバー&オズガビー(イギリス)という今のデザイン界を代表する3組のクリエイター。
ピエール・シャルパンは、福井のシリコーンメーカー、SHINDOとタッグを組み、お香立て&キャンドルホルダーを開発。調理器具などに頻繁に使用されるシリコーンに最大の特徴はその耐久性にあるが、シャルパンはさらにその素材特性を引き上げながら、日本的な色調の再現に挑戦。また、同社が得意とする繊細な表現域をわかりやすく示すため、製品の表面にミリ単位の細かな模様を施している。
ロジカルな展開を得意とするステファン・ディーツは、1894年創業の高知県の老舗、竹虎が持つ精巧かつ高度な竹細工の技術を応用した家具シリーズを発表。艶やかで美しい青竹の表情をそのままに、しなりを利用した"巻き込み"と呼ばれる技術により、美しい構造体を導き出した。
竹素材の特性を巧みに生かしたベンチとテーブルベースが話題に!
プロジェクト:JC14
竹虎・山岸竹材店×ステファン・ディーツ
来日した際、竹林を歩きながら、青々としたその美しい姿に魅了されたというステファン・ディーツ。「竹虎の作る竹製品があまりにも多くて驚いた。ヨーロッパではこれほど豊富なバリエーションは揃わない」。製品のほとんどが細かく割かれ、編まれていることにも着目。試行錯誤を繰り返し、一部をカットした竹を曲げて、一カ所で縛り上げることで固定する独自の手法を考案した。フラットパックにして流通コストを抑えるというメリットもディーツは見越している。
そして、バーバー&オズガビーは、長崎で波佐見焼の窯元を仕切る西海陶器と協働し、幻想的な照明器具を発表。光を透過するという磁器の特徴に着目したことで、テーブルウェアを得意としてきた産地が照明を作るというチャレンジングな取り組みとなった。
得意とする技術を的確に捉えながら、まだ見ぬ表現域に果敢に攻め込むことで、もの作りの力がさらに高まることをJCは証明している。これまで日本が誇る伝統産業と最先端技術を現代的かつ国際的な視点から見つめ、プロジェクトに取り組んできたJCだが、本展をきっかけに更なる一歩を踏み出したことにも注目したい。
それは、海外で本格的にこれからの作品を販売することを視野に入れ、プロジェクトを進行した点だ。すでに一部の製品は販売も決定。近いうちに国内のショップで手にすることができるだろう。
ミラノ、パリ、フランクフルトと、毎年海外での発表を重ねてきたJC。その歩みはゆっくりとしたものながら、確実に前へと進んでいる。日本のもの作りの未来にも、新たな足がかりが見えてきたように思う。
(雑誌「ELLE DECOR No.137 April 2015」より転載)