仕事とパソコン 2005年5月号

雑誌掲載
「繁盛サイトの秘密を探れ!」のコーナーの第39回目に竹虎が掲載されました。ネット通販をはじめるきっかけから、虎竹に対する熱い思い、自分たちの商品を全国の方に紹介させていただく毎日の業務など載せていただいています。
仕事とパソコン 2005年5月号

成功事例に学ぶネット通販のツボ
繁盛サイトの秘密を探れ!
竹虎
店長 山岸義浩

『竹虎』の扱う「虎斑竹(とらふだけ)」は全国でも高知県安和の里でしか育たないという不思議な竹。『竹虎』ではこの虎斑竹を、竹皮草履や、プラスイオンを吸収する竹炭、竹を編んだカゴなど、さまざまな商品に加工して販売している。この虎斑竹を人に知ってもらいたいという想いからサイトを作った、創業100年を超える山岸竹材店4代目の山岸義浩氏に話を訊いた。

生まれながらの竹屋だった私が山岸竹材店の4代目です

虎斑竹(虎竹)は、表面に虎皮状の模様が入っているところからそう呼ばれています。この模様は、幹に付着した寄生菌の作用によるという学説もありますが、本当のところ、理由はまだわかっていません。全国でも安和でしか育成しない不思議な竹です。安和は今でこそ国道が通り沢山の車が行き交わっていますが、昔は人の往来には不便な交通の難所でした。そのため豊かな自然を残し、虎斑竹を守っていたよう
です。

そんな珍しい竹ですが、私にとっては幼い頃から「竹」といえば虎斑竹のことでした。私の曾祖父である初代宇三郎が明治27年に創業した山岸竹材店は、100年に渡って竹の商いを続け、私で四代目になります。小さな頃から、私の周りには竹がありました。工場の周りには短く切った竹、割った竹などが積み上げられ、工場の中に入ると竹の甘いような香りがしました。職人さんたちに囲まれて、「僕も大きくなったら竹をかつぐ」自然にそう思って成長したのです。

こんなに素晴らしい竹を誰も知らない!

サイト「竹虎」を立ち上げた当初、じつはあまり"サイトで竹を売ろう"という気持ちはありませんでした。他の場所に移そうとしても決して育たないこの不思議な竹を見るため、アメリカからわざわざ来る人もあり、イギリスからは何とBBC放送が取材に来ていました。海外メディアからも注目されるような虎斑竹でしたが、じつは日本ではほとんど知られていませんでした。地元ですら、知らない人が大勢いたのです。
私は、なんとか世間の人に虎斑竹の存在を知ってもらいたいと思うようになり、その手段として世界中に情報発信ができるインターネットを選びました。

サイト『竹虎』を開設したのは、1997年のことです。私にはパソコンの知識がなかったため、人に頼んで作ってもらいました。虎斑竹の説明と虎斑竹で作った製品をカタログのように並べ、更新もせずにただ置いてあるだけのサイトでした。そしてそのうちに、「せっかくサイトがあるのだから商品を売ればもっと人も集まって、虎斑竹を知ってもらえるかもしれない」と考え、オンラインショップに切り替えたのです。

ところが、「虎斑竹をみんなに知ってもらいたい」という想いだけは大きくても、どうやってPRすれば良いのかがサッパリわかりません。アクセスもほとんどなく、3年間に渡ってまったく売れない日が続きました。私の人生を変えた"ある人"との出会いまで、『竹虎』は「虎斑竹の情報発信サイト」とはとても言えない状態だったのです。

「高知e商人塾」の塾長 岸本氏との出会い

この"ある人"とは、Tシャツ販売サイト『京都イージー』を運営する岸本栄治さんです。
1995年のサイトオープン以来、ユニークな運営スタイルが評価され、数々のメディアにも登場しているネットショップの先駆者とも言える人です。『竹虎』があまりにも売れないため「もうやめてしまおうか」と思い始めた2000年の夏、私は「これで最後」と、ある勉強会に参加しました。そこで聞いたのが「(1)本物(2)女性(3)IT化」という3つの"これから伸びる"キーワードでした。『竹虎』の商品が本物だということは自信がありましたし、ターゲット層が女性というのも当てはまっています。もしかしたら『竹虎』は追い風に吹かれるかもしれないな、私は単純にそう思いました。あとは「IT化」をきちんとすれば...。俄然やる気の出た私は、たまたま同じ会に参加していた方に、岸本さんが主催する「高知e商人養成塾」を紹介していただき、その足で岸本さんのもとに向かったのです。

岸本さんとの出会いは、衝撃的なものでした。
「サイトで絶対売るんだ」という燃えるような岸本さんの信念に触れ、私は感動しました。それまで私は"売りたい、虎斑竹を広めたい"と思いつつも『竹虎』を人任せにしてしまっていました。しかし、岸本さんは、自分で作ることの大切さ私に気付かせ、ネットでものを売る難しさを教えてくれました。その後、私は商品の撮影から、文章の構成の考案、ページ作成、メルマガ発行まで、すべての作業を手探りで始めたのです。得意とは言えないパソコンですが、サイトは少しずつ形になっていきました。

しかし、まったく売上げがない頃のことです。パソコンの仕事というのは結果を出さなければ、遊んでいるように見られてしまうものです。私は毎日、昼間は仕事を終えてから深夜までパソコンに向かっていたのですが、少し席を離れた間に「電気代がもったいない」と社長に電気を切られてしまったこともありました。結果を出さなければ、誰も認めてくれない。本当にパソコンなんかでものが売れるんだろうか...何もかもがうまくいかず、パソコンだけが光る暗い事務所の中で私は真っ暗な宇宙に一人ぼっちでいるような気分でした。そんな風に迷った時や困った時は、いつも『京都イージー』のサイトを見たり、岸本さんに教えを請うことによって、随分と元気づけていただきました。

岸本さんは私にとっては神様みたいなもの。まったく売れなかった頃、山中湖で行われた講演会中に岸本さんに買っていただいた缶コーヒーが本当に嬉しくて、今でも私のお守りとしてパソコンの上に飾っているほどです。

(画像右下テキスト)隅から隅まで言いたいこと、主張したいことがいっぱいのサイト。



仕事とパソコン 2005年5月号

全国に何百人もいるかも知れないお弟子さんですが、私は「自分こそが岸本さんの一番弟子」と勝手に信じています。
岸本さんの教えでサイトのリニューアルは完了しました。そして、会う人会う人に「どうやったらサイトでものが売れるんでしょう」と聞いて回っているうちに出会った方のご縁で日経流通新聞に取り上げていただいたこともあり、ぽつりぽつりとお客様がやって来るようになりました。
その後も、インターネットそのものが一般に普及するにつれ、『竹虎』の売り上げも伸びていったのです。

石鹸、草履、箸...「本物」を扱うことに誇りを持っています

『竹虎』の商品の中でも、ナンバーワンのリピートを誇るのが、竹を焼いた炭で作り上げた「炭せっけん」です。もともと私の家族がアトピー体質で肌が弱かったため、自分たちが使いたくて全国を探し回り、ようやくたどり着いた石けんメーカーさんにお願いして開発したものです。"竹炭のパワーですっきりと洗いつつ、敏感な肌にもやさしく、しっとりする"と大勢のお客様からうれしいお便りをたくさんいただいています。 クマ笹エキスを原料とした炭シャンプー・リンス」は、販売までに2年の期間がかかりましたが、環境にも髪にもよく、『竹虎』ならではのシャンプーとして好評です。

虎斑竹そのもので作ったグッズでは、竹皮の草履もおススメです。昔、地元の小学校で履かれていたという話を聞いたので自分で使ってみたところ、履いていて脱ぎたくないほど気持ちがよかったので扱い始めたのです。ほかにも、竹独特のしなりがあって丈夫で小魚などもたべやすいと評判の「竹箸」、県外から職人さんを探してきて復活させた竹の「買い物かご」、「脱衣かご」や「洗濯かご」なども人気の商品です。
虎斑竹を広めたい、とサイトを始めたわけですから、新しい竹グッズを創造していくのも『竹虎』の使命。そんな思いから、扱う商品は、徐々に増えていきました。

ネットショップは実店舗に比べると、メールなどで気軽にお客様からのご意見をいただきやすいので、そういったやり取りの中から生まれた商品などもあります。リピートして『竹虎』のファンになってくださったお客様の中には、わざわざ県外から山岸竹材店にお越しいただく方もいらっしゃいます。その時に、オンラインでお買い上げいただいた「買い物かご」を提げているところなど見ると、なんだか嬉しくなってしまいます。
商品への嬉しいメールは、それこそ沢山いただいており、日々幸せを感じています。「こんなメールが来たよ」と職人に見せると、みんな本当に喜びます。受注担当や荷造りスタッフにまでねぎらいのメールを頂戴することがあります。それらはすべてプリントアウトするようにしており、朝礼時に回し読みをしているのですが、時にはうれしくて涙する社員もいます。このようなお声が直接いただけるのもインターネットならではのよいところだと感謝しています。

すみずみまで読んでみて欲しい竹への想いがぎっしりのサイト

サイトを見てもらえればおわかりいただけると思うのですが、『竹虎』のサイトはとても見やすいとは言えません。長くスクロールしなければならないトップページには、主張したいことが隅から隅までギッシリと詰まっています。
私は土佐の人間ですから、ストレート勝負しかできません。不器用だけれど、竹へのこだわりは人一倍強く、どれもこれも大きい声で言いたいとなるとこんなサイトになってしまうのです。良く言えば、にぎわい感があってインパクトの強いサイトでしょうが、お客様によっては使いづらいと感じたり、探したいものが見つからなかったりするようです。
ですから、このにぎわい感を残しながら、夏くらいまでにもう少し使いやすいサイトにリニューアルするつもりです。サイトの更新はリニューアル以降からすべて自分で行っていたのですが、最近は多忙になってしまい、思うように更新の時間が取れなくなっています。ですから、『竹虎』への想いを込めてサイトを作れるスタッフの育成もこれからの課題の一つです。

私はネットのプロではなく竹のプロです

「日本オンラインショッピング大賞」、「オールアバウトスーパーおすすめメールマガジン大賞」などを受賞させていただいたり、マスコミに取り上げていただいたりで、「竹虎と言えば4代目」というように私ばかりが目立ってしまっているのですが、『竹虎』の成功は私だけの力ではありません。山を育てている安和の里の人たち、コツコツと商品を創る工場の皆、私を支えてくれているスタッフや家族、そんなみんなの力でできているのが『竹虎』です。私はただ、虎斑竹に命をかけていた祖父のようになりたいという気持ちでがむしゃらに進んできただけです。以前、古い机の引き出しから、祖父の竹の商品デザインやメモが出てきて、それをパラパラめくるうちにあまりの強い竹への思い入れにこれはかなわないと思いました。そんな、尊敬してやまない大好きな祖父とあの世で再会した時に、「おまえも良くやったな」と言ってもらいたいのです。

ネットショップでいくら成功したとしても、やっぱり私はネットのプロではなく、竹のプロです。「竹のある暮らし」の素晴らしさをもっともっとたくさんの人に伝えるのが私の使命だという想いは今も昔も変わりません。その方法として、世界中の人とつながることのできるインターネットは、素晴らしいツールだと思っています。
いつか、世界中の人が、『竹虎』のサイトを通じて虎斑竹を知る...そんな日を夢みながら、私は今日も美しい竹林を歩くのです。

(画像左上テキスト)人気商品の「竹皮健康ぞうり」。夏は涼しく冬は暖かく、一年中手離さない。
(画像右下テキスト)美しい虎斑竹の林。さらさらと風が通ってゆく。


(雑誌「仕事とパソコン 2005年5月号」より転載)

メディア掲載履歴(年別/掲載タイプ)

  1. 2024年(5)
    1. 2024年 テレビ(1)
    2. 2024年 新聞(1)
    3. 2024年 雑誌(3)
  2. 2023年(10)
    1. 2023年 テレビ(1)
    2. 2023年 雑誌(7)
    3. 2023年 新聞(2)
  3. 2022年(15)
    1. 2022年 雑誌(2)
    2. 2022年 新聞(5)
    3. 2022年 テレビ(5)
    4. 2022年 ラジオ(1)
    5. 2022年 WEB(2)
  4. 2021年(15)
    1. 2021年 雑誌(11)
    2. 2021年 テレビ(3)
    3. 2021年 ラジオ(1)
  5. 2020年(11)
    1. 2020年 雑誌(5)
    2. 2020年 新聞(4)
    3. 2020年 テレビ(1)
    4. 2020年 ラジオ(1)
  6. 2019年(22)
    1. 2019年 雑誌(6)
    2. 2019年 新聞(8)
    3. 2019年 テレビ(6)
    4. 2019年 ラジオ(2)
  7. 2018年(22)
    1. 2018年 雑誌(8)
    2. 2018年 新聞(8)
    3. 2018年 テレビ(6)
    4. 2018年 ラジオ
  8. 2017年(22)
    1. 2017年 雑誌(14)
    2. 2017年 新聞(5)
    3. 2017年 テレビ(2)
    4. 2017年 その他(1)
  9. 2016年(67)
    1. 2016年 雑誌(17)
    2. 2016年 新聞(33)
    3. 2016年 テレビ(15)
    4. 2016年 ラジオ(1)
    5. 2016年 WEB(1)
  10. 2015年(41)
    1. 2015年 雑誌(31)
    2. 2015年 新聞(8)
    3. 2015年 テレビ(1)
    4. 2015年 ラジオ(1)
  11. 2014年(33)
    1. 2014年 雑誌(24)
    2. 2014年 新聞(3)
    3. 2014年 テレビ(4)
    4. 2014年 WEB(1)
  12. 2013年(31)
    1. 2013年 雑誌(23)
    2. 2013年 新聞(5)
    3. 2013年 テレビ(3)
  13. 2012年(32)
    1. 2012年 雑誌(31)
    2. 2012年 新聞(1)
  14. 2011年(32)
    1. 2011年 雑誌(21)
    2. 2011年 新聞(9)
    3. 2011年 テレビ(2)
  15. 2010年(29)
    1. 2010年 雑誌(24)
    2. 2010年 新聞(4)
    3. 2010年 テレビ(1)
  16. 2009年(33)
    1. 2009年 雑誌(25)
    2. 2009年 新聞(3)
    3. 2009年 テレビ(4)
    4. 2009年 その他(1)
  17. 2008年(32)
    1. 2008年 雑誌(22)
    2. 2008年 新聞(7)
    3. 2008年 テレビ(2)
    4. 2008年 その他(1)
  18. 2007年(26)
    1. 2007年 雑誌(21)
    2. 2007年 新聞(3)
    3. 2007年 テレビ(2)
  19. 2006年(32)
    1. 2006年 雑誌(26)
    2. 2006年 新聞(3)
    3. 2006年 テレビ(3)
  20. 2005年(18)
    1. 2005年 雑誌(16)
    2. 2005年 新聞(1)
    3. 2005年 ラジオ(1)
  21. 2004年(10)
    1. 2004年 雑誌(5)
    2. 2004年 新聞(1)
    3. 2004年 テレビ(4)
  22. 2003年(13)
    1. 2003年 雑誌(10)
    2. 2003年 新聞(3)
  23. 2002年(10)
    1. 2002年 雑誌(10)
  24. 2001年(4)
    1. 2001年 雑誌(1)
    2. 2001年 新聞(3)
  25. 2000年(4)
    1. 2000年 雑誌(4)
  26. 1999年(2)
    1. 1999年 雑誌(2)
  27. 1998年(1)
    1. 1998年 雑誌(1)
  28. 過去年(5)
    1. 過去年 雑誌(1)
    2. 過去年 テレビ(4)
  29. 雑誌(369)
  30. 新聞(120)
  31. テレビ(70)
  32. ラジオ(8)
  33. WEB(4)
  34. その他(3)