第9回モールに頼らない、独自サイト運営のコツ
竹用品のECサイト「竹虎」
勉強会に参加、生きた情報を取り入れる
竹用品のECサイト「竹虎」を運営する山岸竹材店(本社高知県、山岸義浩社長)は、日本を代表する数々のアワードを受賞しているEC業界の有力店舗。国内最大の有料会員制のEC勉強会、オンラインショップマスターズクラブ(OSMC、運営はこきょう)主催の「OMSC最優秀実践者賞」、全国イーコマース協議会(当時)の「ベストECショップ大賞2007準大賞受賞」、「イーコマース事業協会エビス大賞09大賞受賞」(一般社団法人イーコマース事業協会主催)などを獲得している。
EC業界に名が知れわたっている山岸竹材店だが、これまでの道のりは順風満帆ではない。97年のサイト開設から00年まで、「竹の和紙でつくったレターセットの1商品(価格は300円)分の売り上げしかなかった」と振り返る山岸社長。その後、徐々に売り上げは伸びたものの01年5月度の月商は16万円にとどまっていた。何をすればいいのか、どうしたらいいのかが分からなかった」(山岸社長)。ECを始める事業者が増えてきていたが、当時は自社サイトで売り上げを伸ばすための情報は皆無。山岸社長は5年超、高知県の山間で売り上げを伸ばそうと1人でもがいていた。
転機となったのは01年に滋賀県で開かれたECの合宿勉強会への参加。ネットショップ支援などを手掛けるグリーゼ(本社東京都)の、こみやまたみこ社長(現在)など、ECに携わる人たちとの出会いだ。山岸社長は当時を振り返りこう話す。「誰もテクニックを教えてくれなかった。だが、合宿に参加し、田舎の竹屋が売り上げを伸ばすために必要なことは、検索順位を上げるといったテクニック論ではなかった」。合宿で出会ったEC経営者との情報交換で得た情報をもとに事業を実践。01年12月度には念願の月商100万円を突破した。高知県内で開かれた「e商人養成塾」という勉強会で、EC業界のカリスマ店長として知られる「京都イージー」の岸本栄司社長との出会いも大きい。岸本社長に問われたのは「他人のサイトで買い物をしますか?」。他のサイトで商品を購入し、良い面を自社のサイトに取り入れるようにした。ネットで物を売るために必要なこととして、情報発信を毎日できるかどうかも痛感。新商品をアップしたり店長ブログを更新したりと、地道な作業の繰り返しが必要だと実感した。「小手先のテクニックはそのときだけしか通用しない」(山岸社長)。毎日の積み重ねが今日の成長を築いたという。
持論は「移動距離と売り上げは比例する」(同)。これまで全国で開かれる勉強会に参加しては、良い面を自社のサイトに取り入れた。本やネットにはない生きた情報を勉強会で仕入れ、自社の成長の糧にする。こうした自身が得た体験を多くのネットショップに取り入れてもらおうと、山岸社長は「e商人養成塾」の会長を務めている。毎年高知県で開く「e商人養成塾」の合宿には、全国の有名店舗が集まり勉強と情報交換を行う。今年も9月7~8日に実施する予定で、参加者を募っている。
(新聞「日本ネット経済新聞 2013年5月30日」より転載)