ネットショップコンテスト北陸 2013
巻頭特集
4人の繁盛店店主が打開策のヒントを語る
ISICOは3月8日、県地場産業振興センター新館で「ネットショップコンテスト北陸2013」の表彰式とモチベーションアップセミナーを開催した。当日は、192サイトの中からフクイカメラサービス(福井市)をグランプリに選んだほか、全国から集まった人気ネットショップの店主4人が「これからのインターネット販売に必要なこと」と題してパネルディスカッションを繰り広げた。今回の特集では各氏の発言のエッセンスと上位入賞サイトの評価ポイントについて紹介する。
パネラー
㈱BUNZA 代表取締役社長
上野 真歳 氏
紀伊国屋文左衛門本舗(和歌山県)
㈱山岸竹材店 代表取締役社長
山岸 義浩 氏
虎斑竹専門店 竹虎(高知県)
㈱栗原商店 代表取締役
栗原 康浩 氏
ところてんの伊豆河童(静岡県)
㈱サカエヤ 代表取締役
新保 吉伸 氏
近江牛ドットコム(滋賀県)
コーディネーター
九谷物産㈱ 代表取締役
西田 上 氏
和座本舗(石川県)
モチベーションアップセミナー
ブログでもらす本音が利用者の共感を呼ぶ
西田● ネットショップを開業しても10年以上続く店舗は10%弱です。そんな中、10年以上にわたって店舗を運営し、繁盛させてきた皆さんにとって、最初のブレークスルーポイントはどこでしたか。
新保● 私の場合は牛肉に対する自分の本心や本音を書き続けるブログを始めたことでした。私の牛肉への思いに共感したお客さんがサイトに集まってくるようになったのです。伝えるべき相手に伝えるべき価値を伝えることが大切です。
栗原● 白だし販売で人気の通販サイト「味とこころ」の犬塚社長からさまざまなノウハウを教えてもらい、売り上げを伸ばすことができました。また、人気ショップの運営者が講師となる勉強会への参加も成長のきっかけになりました。
上野● 一番売り上げが伸びたのはテレビに取り上げられた時ですが、お客さんの意見に注意深く耳を傾けることが大事だと思います。「家で干し柿を作りたい」という声をヒントに渋柿を商品化したところ、ヒット商品になりました。
山岸● 1泊2日で参加した勉強会が転機となり、月商を16万円から100万円に増やすことができました。ネットショップでは月商100万円が一つのボーダーラインで、これを超えると社内でも協力を得られやすくなり、5年、10年と続けていけると思います。
ピンチの時こそ仕事を見つめなおす好機
西田● 売り上げが伸び悩むなど苦しい時期もあったと思います。そうした停滞期をどうやって乗り越えましたか。
栗原● ある人気テレビ番組で紹介されたことから、信じられないくらい売れた時期があったのですが、その後注文が激減しました。3年連続で減収が続く中で考えたのは、自分がどういう仕事をしたいのかということです。伊豆の天草は日本一ですが、海女さんが減り、衰退の危機を迎えています。そこで伊豆の天草と海女さんを守ることを使命と考え、なぜそれらにこだわるのかをしっかりと PRするようにしました。その結果、現在はブームの時の売り上げを超えられる用になりました。
上野● オープンから数年は食品卸と2足のわらじを履いていたため、ネットショップに専念できず、売り上げが伸び悩みました。そこで、食品卸を弟に任せ、時間を作ることで販売状況も好転しました。また、以前は安いセール品のミカンが一番売れていたのですが、さらに安く売る競合店が出てきたため、当社では農家を前面に打ち出し、その農家のミカンを好んで買ってくれるお客さんが増えるよう工夫しました。戦略を転換しなければ、今頃は価格競争に巻き込まれていたでしょうね。
西田● 竹虎さんは以前、ユニクロさんとコラボTシャツを作りましたよね。田舎の企業に世界的な企業から声がかかった経緯を教えてください。
山岸● 竹虎ではこの10年間、2週間に一回は必ず取材を受けいます。私の扱っている虎斑竹が世界一の竹だと思っていますから、竹で何かをやりたいならうちに声をかけてくることは当たり前だと思いますし、こだわりを持った商品を地方から発信している皆さんはそれぐらいの気概を持ってほしいですね。そして、こだわりの商品を無料でPRできるのがインターネットのいい所です。昔なら広告にお金がかかりましたが、今はフェイスブックなど便利なツールがありますから、どんどん情報を発信してほしいと思います。
西田● 新保さんが販売する「熟成肉」が最近ブームになりつつあります。取り組みのきっかけは何ですか。
新保● 子牛を出産した経験牛は肉がやせ細るので廃棄されます。これを何とか商品化できないかと考えたのが最初です。経験牛の肉はとても硬いのですが、ニューヨークでドライエイジングという手法に出会い、2~3年かけて開発に成功しました。どこに商売のネタがあるかわかりませんので、絶えずアンテナは伸ばしておいてほしいと思います。
本質を突き詰め発信する時代に
西田● これから10年先を見据えたアクションプランについて聞かせてください。
上野● 日本のミカンは気軽に手でむいて食べられる貴重なフルーツであり、その中心である和歌山のミカンを海外で販売したいと考えています。あさってから早速、市場調査のため、台湾、香港に行ってきます。
栗原● 昨年テレビの取材を受けて、年配の女性からの電話注文が増えました。ネットのお客さんにはメルマガを送るなどしてフォローできるのですが、電話注文のお客さんはそうもいきませんので、今後は紙媒体を使った通販にも挑戦し、ネットに続く販売の柱を作りたいと思います。
新保● 私が小さい頃の食は胃袋を満たすだけでしたが、その後、舌を楽しませる時代になり、今は頭で楽しむ時代です。そして、これからは心の時代であり、私は自分が好きな肉を好きな人にだけ売るような心と心の商売をしたいと思います。そうすると事業は縮小してしまいますが、その中でもしっかりと利益を残し、会社を運営できる体制作りに取り組んでいきます。
山岸● 竹文化の創造と発信で豊かな竹のある暮らしを提案するという企業理念に向かって真っすぐに進むだけです。売り上げが上がらなくて悩んでいる人も多いと思いますが、明けない夜はありません。やってもやっても成果が出ない時もありますが、必ず報われる日が来ますので頑張って続けてほしいと思います。
西田● ネットビジネスの世界がどんどん広がる中、小手先のテクニックではなく、本質を突き詰めて、その本質を多くの方々に知ってもらうことが重要になってきたと言えそうですね、本日はありがとうございました。
(雑誌「ISICO vol.69」より転載)