●シリーズ企画 百年企業
(株)山岸竹材店
「虎竹製品」を普及するために時代に合わせた販路を開拓!!
(株)山岸竹材店の創業は1894年(明治27年)。高知県須崎市の安和地区でしか育たない「虎竹」を使った製品を製造・販売する竹専門メーカーだ。戦中・戦後の動乱、プラスチックの台頭、団体旅行客の減少など、さまざまな困難を乗り越えながら、現在も全国に虎竹の魅力を発信し続けている。さっそく、同社の4代目・山岸義浩社長に同社の歴史と今後の発展について聞いてみた。
虎竹とは表面をガスバーナーなどで炙ると、虎のような模様が浮き上がる竹のこと。その美しさは古くから高い評価を得ており、表具や茶道具、花道具などに使用されてきた。(株)山岸竹材店ではこの虎竹の竹材を中心に、竹かご、ざる、竹箸、竹皮草履、竹鬼おろし、蒸篭、竹弁当箱、竹家具、竹炭、竹酢液、竹布といった製品も取り扱っている。
4代目の山岸義浩社長は「当社はもともと大阪で創業した竹材商だったのですが、曾祖父が安和の山主の娘と結婚し、戦争中に疎開せざるをえなくなったのを機に、こちらに移り住むようになった」と話す。そして安和に拠点を移した同社は、自然と虎竹製品の販売を行うようになったという。「当時は嫁入り道具などに虎竹を使った製品が大人気で、作っても作っても製造が追いつかない時代があった」そうだ。しかし、高度成長期になるとプラスチック製品が急激に台頭し、虎竹をはじめとした竹製品の需要は激減。それと同時に、同業者も続々と廃業していったという。
そこで、同社は70年代から小売りだけでなく、自社商品の開発と販売に挑戦。「四万十川ブームで、本社前の国道を自動車がたくさん通っていた。この人の流れを生かそうと、本社に隣接した実店舗を構え、自社製品の直接販売を展開しはじめた」のだ。直販のおかげで「顧客のニーズを知ることができるようになり、商品のバリエーションを増やすことができた」と山岸社長。現在、直営店では3,000種もの竹製品を扱っており、その1割程度が自社製品になっている。
しかし、平成元年頃になると団体旅行ブームにかげりが出るようになり、直営店を訪れる客足が減少。頭を悩ませた山岸社長は店舗の規模を3分の1程度に縮小し、インターネットショップを開設。すると「当初は今ひとつだったが、徐々に成果があがってきた。今では、ありがたいことにネットショップで100回近く購入してくれているリピーターも出てきた」と話す。
加工品のニーズが増える一方で、竹材の販売もしっかりと続けている。「虎竹がメディアで取り上げられたりしたことで、尺八や万華鏡などの作家からも注文が来るようになった。なかには、海外から仕入れに来るような作家もいる」そうだ。無論、製材にも老舗ならではの技と経験が生かされている。「竹は生えてから3カ月で親竹と同じ見た目になる。しかし、若い竹は強度が弱く、3年経たないと商品にはならない。そのあたりの見極めには職人の勘が必要になる」と山岸社長。
ただし、製材の分野では職人の高齢化と後継者不足という問題が浮上している。そのため、今後は「製材分野を内製化出来るような体制づくりを進めていきたい」と山岸社長は意欲を見せる。時代の変化に柔軟に対応しつづける山岸竹材店、これからも地域資源である虎竹の普及に励み続けてほしいものだ。
<後藤俊夫の百年企業レポート>
虎竹というオンリーワンの素材をフル活用している老舗企業です。虎竹はその美しさと珍しさから、日本のメディアはもちろん、イギリスのBBCにも取り上げられるなど、世界的にも注目を集めている素材です。これを所有していることは、同社の最大の強みといえるでしょう。
しかし、いかにオンリーワンの商材を有しているとはいえ、竹材そのものの需要が減っていることは間違いありません。その点、同社は急激な時代の変化、ニーズの変化に柔軟に対応し続けてきたことで、つねに新しい販路を開拓することに成功しています。事実、商品ラインナップも頻繁に変えており、つねにいま必要とされているモノづくりに注意を払っていることがうかがえます。山岸社長によると「近いうちに新商品も発表できる」とのことですし、まさにこれからも要注目の百年企業だと思います。 抗菌性、消臭性のある天然竹皮を使った竹皮草履
(雑誌「月刊税理士事務所 CHANNEL 2011年6月号 No.358」より転載)