キレ物すご技
使うほど手になじむ 土佐の心意気
虎模様の竹小物
虎斑竹。別名「虎竹」と呼ばれ、表面に虎皮状の模様が入った珍しい竹だ。淡竹の仲間で、その美しい模様は幹に付着する菌の作用によるとも言われる。
虎竹は、高知県須崎市安和の特産だ。江戸時代、土佐藩の山内家が藩外に出さなかったという貴重な竹で、財布や名刺入れ、システム手帳、眼鏡ケース、バッグなどを作っているのが、「竹虎」こと山岸竹材店。創業明治27(1894年)から竹材・竹製品の製造卸業を営む老舗企業だ。
「もともと大阪の天王寺で商売をやりよったけど、わずか1.5キロの谷間にしかできん竹を求め、先々代の時にここに移ってきた」と語るのは4代目の山岸義浩さん(48)。幼い頃から虎竹に囲まれて育った。
秋から1月にかけ、山から竹を切り出す「山出し」。ガスバーナーであぶる「油抜き」。ため木という道具を使っての矯正。熟練の職人による手作業を経て最後に布で拭くと、美しい虎模様が浮かび上がる。その神々しい姿はイギリスのBBCでも紹介されたことがある。
昔はブラシやほうきの柄、今は生け垣や内装に使われるこの虎竹で、個性的なアイテムを作り始めたのは2003年ごろ。「自分が形にしたい、使いたいから始めただけ」というが、使うほど手になじみ、癒しを与えてくれる小物ばかりだ。
卸業の傍ら、今後も商品開発を続ける。「これでもうけようとは思わない。こんなもんがあるぜよ、高知の田舎で竹でこんなんしうぜよ、と言いたいがです。プライドですよ。117年やりよるワシらの心意気を感じ取ってくれたらええ」
(竹端直樹)
(新聞「朝日新聞 2011年4月21日」より転載)