日本の誇り 虎斑竹
竹のある暮らし
写真右上:虎竹名刺入れ
写真右下:竹炭ヘチマかご、虎竹二段ピクニックバスケット、虎竹削り箸、虎竹ランチボックス
明治27年創業の山岸竹材店は、日本で唯一、高知県須崎市安和地区の1.5キロの間でしか成長しない「虎竹」を専門に扱う。現在は安和に工場があるが、元々大阪の天王寺に工場があった頃から虎竹を扱っていたため、船を使って運搬していた。当時は電車もなく、旧道と言ったら何も無い中で頻繁に仕入れに来ていたという。そうして守り続けてきた虎竹の魅力は何と言ってもその虎模様の美しさである。山に成育している時からうっすらとある虎模様だが、決して山に生えている竹全部が虎竹ではない。山の職人は色の良い親竹を残して色の悪い竹を間引きながら、さらに虎模様のある虎竹を選ばなくてはならないのだ。そうして運ばれた虎竹は火で炙られることによってその模様を鮮やかに浮び上がらせる。竹には油分が多く含まれるため竹の成分だけで驚くほどの艶も出る。
毎年11月~1月に竹の伐採が行われ、稲刈りが終わった田んぼで選別されるが、切ったばかりの竹は通常の3倍もの重さがあるという。まさに縁の下の力持ちの存在がそこにはある。そんな重労働の竹屋の仕事は、4代目である山岸さんにとっても最初は辛いものだった。しかし、家業を継ぎ、竹屋の魅力に気づくまでには2つのきっかけがあったという。
「私は中学、高校、大学が全寮制だったので、小学校までしかこの土地にはいなかったんです。だから、竹屋の仕事がどんなものなのかも分からない状態でした。でも、大学4年の夏、実家に戻ってきている時にどうしても寝付けない夜があったんです。何か竹に呼ばれている気がして工場に行ってみると工場が燃えていたんですよ。その時、『ここに戻ってこい』と言われてる気がして家業を継いだんです。それでも、実はずっと毎日辞めたいと思っていました。どうやったら自分に納得がいって辞めれるかということばかり考えていたんです。でも、またある出会いによってこの仕事の魅力に気付かされたんです。袖垣を造りに行った先でのこと、出来上がった袖垣を見たその方に『私はこの竹を見たら心が癒される、ありがとう。あなたの仕事は素晴らしい』と言われたんです。帰り道では、泣けて泣けてしょうがなかったですよ。それからは仕事が楽しくて楽しくて。やはり、どんな仕事でも人の役に立って喜ばれることが嬉しいんですよね。辞めたいと思いながらも、結局辞めなかったのも竹屋の血だったのかとも思いますけどね」
見た目や香り、肌触りなど多くの魅力を持つ竹だが、昔の日本を懐かしんだり、癒しを求めてという方も多い。最近では、環境問題やエコの意識が強くなってきたこともあり、竹の良さが一般的にも知られてきたという。お箸やお弁当箱は人気商品だ。竹炭の認知度も10年ほど前から一気に増し、洗濯洗剤や食品まで使用されている。
「竹には、本当に良い成分が含まれているんです。だから、合成洗剤が残ると痒いというアトピーやスキンケアに気を使う方やお年寄りなどには効果的なんですよ。それと、このあたりの人は普段から竹の葉っぱを炒ってお茶を煎れているんですね。竹には糖分が多く含まれているので、甘みがあってとても美味しいんです。枝も垣に使用されますし、竹は本当に捨てるところがないですよね」
株式会社山岸竹材店
竹虎四代目 山岸義浩
1894年創業の竹材専門メーカー。日本で唯一の虎斑竹は国内だけでなく、海外でも注目されている。竹文化を通じて「竹のある暮らし」を提案し、インターネットでも自社サイトを立ち上げ、第7回日本オンラインショッピング大賞最優秀中規模賞をはじめ数々の賞も受賞している。
(雑誌「LIFE work 2009 vol.7」より転載)