Wa風生活
エコバッグならぬ虎斑竹カゴの、作為のない美しさ、ぬくもりを身近に。
虎斑(とらふ)竹専門店 竹虎
1 虎斑竹の伐採は10~1月に。竹山は、定期的に伐採することで竹の品質を維持していくことができる。
2 山から運び出した虎斑竹を、刈り入れの済んだ田んぼ一面に広げ、乾燥させる。
3「ため木」という昔ながらの道具を使い、竹の節々を矯正する。細工しやすくするための作業。
4 独特の虎模様は、幹に付着した寄生菌の作用という説も。ガスバーナーであぶり、竹自体から出てくる油分で磨き上げる。
5 竹かごの周囲はござ目に編む。この技術を持つ職人が今は少なくなっているという。
6 外側の底部分にはすじかいも組まれ、買い物カゴとしての強度は万全。
7「虎竹買い物かご(だ円)」
8 虎竹買い物かご(丸)
買い物のときにエコバッグを利用する人が増えた。しかし、カジュアルなきもの姿に似合うのは何といってもカゴである。ご紹介するのは虎斑竹(とらふだけ)製のカゴ。しなやかな竹のフォルムと作為のない自然の斑模様が美しく、こんなカゴに、食材を入れたらどんなにおいしそうに見えるだろうか......、と想像してしまうのである。
虎斑竹が自生するのは、全国で二ヵ所。岡山県下久世町三坂と高知県土佐安和(とさあわ)だ。工芸品の材料として珍重された三坂の虎斑竹は、江戸時代より乱獲、盗伐に見舞われ、絶滅の危機に瀕している。現在は国の天然記念物で、伐採は一切禁止だ。一方、土佐安和の虎斑竹は交通不便な地にあり、江戸時代の藩令による鎖国で広く知られることがなかったため保護条例から除外された。土佐安和の人々は、暮らしの道具を作る材料として虎斑竹を身近に生かしてきたのである。
そんな虎斑竹の里で、明治二十七年から虎斑竹製品を作り続けているのが「竹虎」である。買い物カゴは、四代目社長・山岸義浩さんが、生産が途絶えていたものを復活させた。
「昔のお母さんたちが手に提げて買い物に出かけたカゴが、いつの間にかスーパーのビニール袋になり、虎斑竹でカゴを作る伝統技術も途絶えていきました。しかし、環境を意識する人々が増えている今、もう一度復活させるべきではないかと思ったんです。現役を引退した職人さんたちを再び訪ね、お願いして歩きました」。
熟練した職人の手により、しっかり編まれたカゴは、使っているうちに生じた傷みや破損の修理もしてくれる。私たちの愛するきものと同様「もったいない」精神が生きた美しい日本の伝統工芸品なのである。
(雑誌「和の生活マガジンSakura 睦月号 Vol.160」より転載)