朝日新聞ビジネス高知 2008年7月号

新聞掲載
特集「はばたけ、土佐のe商人たち」の中で、竹虎も参加している高知県内のネットショップオーナーによる団体「e商人養成塾」が紹介されました。県内のネットショップの紹介から、お客様に喜んでいただくための様々な取り組みが掲載されています。
朝日新聞ビジネス高知 2008年7月号

BK特集 はばたけ、土佐のe商人たち

誰もがインターネットでモノを買う。探し物はすぐに見つかるし、その場でカード決済し、数日もすれば商品が手元に届く。信頼できるメーカー品なら、もうネットで十分と考えている消費者も多いのではないだろうか。欲しいモノをどこよりも安く買い、入手困難だったレアなアイテムですら、金さえ出せば手に入れることのできる時代。そして、逆に誰でもネットショップを持てる時代。
しかし、モノを売り、ショップを維持していくのは簡単なことではない。ショップを持つまでの投資は少なくても、成功することはリアル店舗よりも難しいと言われている。それほどネットショップの世界は激しい競争が繰り広げられている。
ところが、この高知県には月商数百万、一千万を超えるネットショップが数多く存在している。もともと店舗を持たず、ネットのみで成功した例もあれば、逆にネットショップのみに切り替えて成功した例もある。またリアル店舗存続の危機を救ったネットショップもあるという。
今回の特集では、こうしたe商人たちを多く輩出するe商人養成塾の活動と注目の商人たちを紹介する。

地場産業活性化に貢献

e商人養成塾とは県内のネットショップオーナーらが、「ネットショップで月商100万円達成」を目標に各種セミナーや勉強会を開催している任意の団体だ。開校したのは平成12年。オンラインショップ業界のパイオニアとして知られる株式会社イージー(当時、有限会社)の岸本栄司社長を塾長に迎え、当初は産業振興センターの事業として始まった。
1期生として入塾したのは9社。その後、塾生は年々増え、多くの繁盛店が生まれる中、1期生の山岸竹材店が日本オンラインショッピング大賞を受賞するなど、全国的にもその活動は高く評価されるまでになった。こうした養成塾とそのOBたちの活動は、地場産業活性化に貢献しているとして、平成16年度の地場産業賞(e商人養成塾OB会の活動)にも選ばれている。
そして平成17年3月、産業振興センターの事業としては終了し、現在の任意団体へと引き継がれた。塾長は岸本社長が継続。会長には1期生で養成塾の中心人物でもある山岸竹材店の山岸義浩社長が就任し、現在に至っている。

ノウハウや成功例、失敗例も共有

養成塾は塾生の学び合う場であり、さまざまな情報を共有する場だ。著名な講師を招待してのセミナーや、互いのビジネスの現場で起こっていること、成功例や失敗例までも情報交換し、自らのビジネスに生かしていく。
インターネットの世界は、常に新たなノウハウやアイデアが生まれ、実践と改善が繰り返されている。どれだけ多くの事例や対処例を蓄積し、ビジネスに生かせるか。それが成功のカギを握っている。
こうしたナレッジ共有を可能にしているのが養成塾の存在だ。経営の大切な資産ともいえる情報を、惜しげもなく共有する。こうした意識の高さに共鳴するように、多くの講師が高知へと足を運んでくる。「(岸本)塾長の威光もあります。ネット販売の神様ですから。普通では来てくれないような方にも、謝礼程度で来ていただけることもあります」(山岸会長)

小手先ではなく、中味で勝負

SEO(検索エンジン最適化)対策や懸賞キャンペーンによるメールアドレスの獲得、メールマガジンを使ったデータベースマーケティングなど、インターネットならではの手法を駆使して繁盛店をつくり上げてきた彼ら。しかし、こうした手法もすでにもう当たり前のものとなっている。
「昔はページ作りの勉強会に近かった。今はマーケティングや理念、経営について考え、意見交換する。小手先の手法よりも、お客様が本当に喜ぶサービスを提供しているか、そしてそれがストレスなく手に入る便利なサイトであるかということを重視しています」(山岸会長)。
また、これまで1人で運営している場合が多かったネットショップだが、徐々に分業され、すでに多くのスタッフによって運営されているショップもある。
「今から参入されるとしたら大変。先行している店が多いし、ネットの広告費も上がっている。新規のメール取得は高コスト化している上、メールの開封率も下がっている。僕らは先行業者として有利でもあった。ネットでの商売は難しくなっていると思う」(山岸会長)。熾烈な競争と、技術革新。ユーザーのニーズや生活環境も常に変化しているし、そのスピードは年々加速気味だ。
小手先の手法など、導入した時点でもう過去のものとなってしまう世界。その中で生き残るのは、やはり魅力的なコンテンツ(商品)を発信し、顧客に満足を提供し続けるショップなのだろう。これは、ネットであろうが実店舗であろうが何ら変わることはない。

成功し続けるネットの世界

「ネットショップの世界は、この数年で急激に変化してしまった。僕らは月商100万円を目指してスタートしたが、今は桁が2つ違う。県外では、初めてすぐに月商5千万なんて会社もある」と山岸会長は言う。
背景にあるのは、利用者の急増、そして大量販売を可能にする高度なシステム、バックヤード、流通体制といったネットショップを支えるビジネスの拡充だ。「売れすぎたら、パンク」というリスクがなくなれば、可能性は無限だ。
「ネットショップといえば、どこか個人商店のような規模の小さな商売に見られがちだが、そろそろ認識を変えるべきだと思う。会社として雇用を拡大しながら成長している企業も多い。若い方が自分の才能だけでチャレンジできる時代だし、県内企業にとっても同じようにチャンスがある。むしろ本筋だと思って取り組んでいってほしい。こうしたネットの仕事が増えれば、人材ももっと県内に残ってくれるはず」(山岸会長)。
「地産地消」がブームだ。地元企業のためにも、地球環境のためにも、それはとても重要な取り組みだ。しかし、県内市場が飽和していたら?県内だけでは市場性が乏しかったとしたら?いったい誰に、どうやって買ってもらうのか。
山岸会長は言う、「ネット以外に、何か方法があると思いますか?」「この高知県にはいいものがまだまだ眠っています。売り先は海外だっていい。本気で取り組むなら、e商人養成塾は本当に勉強になるし、役立つ場だと思う。ぜひ多くの方に参加してもらいたい」
養成塾は入会費3万円で、年会費は3万円。随時の情報交換と勉強会に加え、年6回程度のセミナー・懇親会が予定されている。入会は随時受付中だ。


(新聞「朝日新聞ビジネス高知 2008年7月号」より転載)

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