逸品 一品
竹皮、次第に心地よく
田植えに行った。柔らかい泥、その下にひんやり硬い地面。足が地面をしっかりつかむ感覚を取り戻した気がした。竹虎・山岸竹材店の竹皮ぞうりはそんな感覚を普段の生活で呼び覚ましてくれる。
スリッパ代わりになる屋内用と底を補強した屋外用がある。履きはじめのごつごつする感じから、しだいに足になじんでくる過程がいい。竹には抗菌消臭効果があり、水虫にも効くとか。なにより履いていて気持ちがいい。
竹皮はすべて高知県産。梅雨時にはがれ落ちたものを拾い集め、乾かし、三年寝かせてからあむ。鼻緒の芯にする稲わらは、農家に譲ってもらい、鼻緒の表はハギレを利用する。本来なら捨てられるものを生かし、しかも地元のお年寄りの雇用につながっているというのがうれしい。
竹虎・山岸竹材店は一八九四年創業。高知県でしか育たない虎斑(とらふ)竹をはじめ、竹材、竹製品の製造卸を営む。「竹は三カ月で生長し、その後三年で加工できるので、環境を保ちながら使い続けられる素材。その魅力を知ってもらいたい」と社長の山岸義浩さんは話している。
(ライター 北 玲子)
(新聞「日本経済新聞 2008年6月14日」より転載)