竹皮男下駄や竹皮右近下駄などの竹皮草履を貼った下駄は下駄屋さんに作ってもらった桐下駄の台に、その大きさに合わせて編んだ竹皮草履を貼り付け、鼻緒をすげた商品です。竹皮を編んだ草履を貼っている分、一般的な下駄に比べて、クッション性もよく、また足の形に馴染んでいくために大変履きやすいとのお声を頂くことの多い下駄です。
竹皮を貼った下駄に鼻緒をすげるのですが、竹皮を編んだ草履部分は大きなきりを差し込んで編み目を広げてから鼻緒を差し込みますが、桐下駄の台に鼻緒を通す際に穴が小さくて鼻緒が通りにくい時にリーマーという道具を使って桐下駄の台の穴を広げています。
リーマとは、あらかじめドリルなどによってあけられた下穴を、要求される精度で所定の寸法、形状、そして良好な仕上げ面に加工するために用いられる切削工具と言われ、主に工業製品の仕上げ加工に使用されることが多いようです。
円錐形の金属に複数の切刃を持つ形状で、桐下駄の穴を広げるために回転させながら、少しだけ穴の大きさを広げるのです。あまり緩くなっても鼻緒が動いたり、緩んだりする恐れがあるので、広げすぎに注意しながら加工します。そして一足一足丁寧にすげてから、お客様のもとにお届けしているのです。
前金とは下駄の鼻緒をすげた時に、前ツボの部分を隠すための金具のことです。昔は土の道だったために、裏側の前ツボ部分が汚れないようにとか、鼻緒部分が擦り切れないように保護をする金具です。
店によってその金具が違っており、その金具でどこで買ったのか分かるということもあったようですし、地方によって前ツボのすげ方が違っていたり、上手下手があったりで、それを隠す意味合いもあったようです。
昔の江戸っ子は金具で保護をして長持ちさせるのがケチくさいと捉えていて、前金をつけないのが粋だと思っていたようで、金具をつけずに履いていた人も多かったようです。
竹虎では虎竹男下駄や竹皮男下駄、竹皮女下駄などにこの前金を打ちつけています。やはり前ツボの部分は隠しておいた方がすっきりしますし、豪華にも見えるのではないでしょうか。しかし桐材は非常に柔らかくて、釘が抜けやすくなるので、少し斜めに打つようにしています。
おしゃれは足元からとよく言われていますが、下駄の裏側のこんな小さな金具一つとってもいろんな考え方や、伝統や風習があって、本当に面白いなと思います。そんなことを知っていると、下駄にも興味が湧き、鼻緒をすげるのも楽しくなってくるのです。
竹皮男下駄や竹皮女下駄、竹皮右近下駄などの下駄には桐下駄の台に竹皮が貼ってあり、夏でもさらっとした柔らかい履き心地で、また履いていくうちに足になじんで履きやすくなるために、この季節には竹虎でも人気商品の一つとなっています。
この下駄に貼る用に竹皮草履職人に型を持って行って、竹皮草履を作ってもらっていますが、とても難しいらしく、なかなか型通りには出来てきません。また平べったい桐下駄の面に貼るためには、竹皮草履の裏面もできるだけフラットに出来ていないと、綺麗に貼ることができないために、余計に難しくなってしまい、今は腕の良い一人の職人さんだけにお願いして作ってもらっています。
そんなに大量には出来ない上に、この下駄は鼻緒が選べるようになっているために、ご注文頂いてから鼻緒をすげるようにしています。下駄をすげる担当者がおりますが、注文が多い時などはたまに自分でも鼻緒をすげる時があります。下駄をすげる場合に一番気を使うのはやはり前の親指と薬指で挟む前ツボと呼ばれる部分の調整です。
鼻緒の先の縄をねじて、それを輪にし、その中に縄を通して固定するので、微調整が難しく、たまにやると左右対称や微妙な長さ加減に一苦労することもよくあります。しかしこの鼻緒をすげるという作業は、鼻緒のすげ具合を気にいって頂けるかと少しの心配もあり、また履いて頂いたお客様の笑顔を思い浮かべながらの楽しい作業でもあるのです。