うなぎの穴釣り用ヒゴ

刃を2本立てた幅取り(左)と厚引き銑(右)


うなぎの穴釣り用のヒゴを作りました。うなぎを取るには鰻筌が簡単で、近くに小川の流れている所にお住いの方は、一度くらいはやったことがあるのではないでしょうか。私も小学生の頃は近くの川にミミズを入れた鰻筌を仕込んで、取っていた思い出があります。


今回、うなぎの潜んでいそうな穴に餌のついたヒゴを差し込んで取る穴釣り用のヒゴ作製の依頼がありました。今までは自分でヒゴを作っていたそうですが、年を取って作れなくなったからとの依頼です。基本的にヒゴなどの製作は微妙なかたさやしなりなどがご本人の希望通りに作ることが難しく、お断りすることが多いのですが、見本を持って来社され、微妙なかたさなどはお客様のほうで修正いただけるということなので、製作することとなりました。


直径は2mm、2.5mm、3mmの3種類で、普段は孟宗竹で作られているそうですが、ちょうど真竹の材料があったので、真竹でも製作することになりました。竹を割って剥いで、幅をそろえたり厚みをそろえたりするヒゴは竹細工を作るのに必要な材料なので作れますが、竹串のような丸いヒゴはあまり作ることのないヒゴです。


少し大きく割っておいて、鉄に開けた希望より少し大きめの丸い穴にヒゴを通していき、少しづつ小さな穴に通していって、小さく丸くする方法はありますが、そんな道具も持っていません。幅2mm、厚み2mmの四角いヒゴを作ってから、そのあと角を取り、丸くしていくことにしました。


左の刃を2本立てた幅取りで幅を揃え、右の厚引き銑で厚みを揃えます。どうしても節のある部分は盛り上がっているため厚くなりがちですが、節部分を削って極力厚みを揃えます。そうして厚みと幅を揃えてから、切り出しナイフで角を取ります。


出来上がったヒゴは0.5mmの差ですが、明らかな違いがあり、場所や狙ううなぎで変えるようです。また同じ大きさでも孟宗竹と真竹ではしなりが全く違います。真竹が柔らかく粘りがある分、同じように持ち上げても真竹のほうが大きくしなります。


同じ大きさのヒゴでも竹の種類によってこんなにも違いがあることにお客様は驚かれていましたが、実際使われたときにどちらのヒゴが良かったのかは、また次回お越しいただいた時にでも聞いてみたいと思います。


竹虎が扱っている虎斑竹は綺麗な模様がついている竹ですが、ただ色が違うだけでなくハチクの一種なので、真竹と比べると少し堅い材質です。白竹網代弁当箱と虎竹網代弁当箱も色の違いだけでなく、なんとなく持った感じが違います。そしてもっと柔らかいスズ竹で編んだスズ竹弁当箱は明らかに柔らかく、弾力のある弁当箱です。


同じ籠でも少しヒゴの厚みを薄くすると、その籠は持った感じも見た感じも柔らかいものとなります。竹の違いや色や編み方だけではなく、日常でいつも使うものだからこそ、竹ならではの軽さや弾力性などの違いも理解してもらって、楽しんでいただければと思います。それも竹ならではの楽しさであると思うのです。

高知県伝統的工芸品等デジタルパンフレット

土佐の手仕事図録.jpg
高知県の作った土佐の手仕事図録(高知県伝統的工芸品等デジタルパンフレット)に掲載していただきました。


高知県では「土佐打刃物」と「土佐和紙」が国の伝統的工芸品に指定されており、高知を代表する工芸品として有名ですが、その他に地域で受け継がれてきた全国に誇りうる伝統的特産品を「高知県伝統的特産品」として指定しており、その中に「虎班竹細工」も指定していただいています。


伝統的工芸品に指定されている竹細工といえば大分県の「別府竹細工」が有名ですが、そのほかに岡山県の「勝山竹細工」や奈良県の「高山茶筅」などがあります。私は大分県別府市にある大分県竹工芸訓練センターの「竹工芸科」で学んだ経緯があり、その経験が自分の竹細工の基となっています。


竹細工といっても、その土地に多く自生している竹を使って製作することが多く、いろいろな歴史があり、それぞれが違う特徴や技法を持っています。「虎斑竹細工」は日本で唯一、ここでしか取れない虎模様のついた虎斑竹を使って製作した竹細工のことで、技法というよりも虎斑竹という竹に光を当てていただいていることは大変嬉しいことだと感じています。


高知県には「虎斑竹細工」のほかにもたくさんの伝統工芸があり、高知ならではの技法や特徴をもっており、それが一堂にみられるのが土佐の手仕事図録となっています。またそれを製作しておられる職人さんの紹介動画もあり、職人さんのものつくりへの想いや製作風景など、大変興味深く、作る物こそ違いますが、ものつくりをしている者としては大変勉強になり、刺激となりました。


こんなに楽しく高知の魅力の一端を知れるデジタルパンフレットですが、実際のところ、あまり見られていないのが残念に思います。ぜひご覧いただき、商品は違っても、その商品ならではの手仕事のこだわりや想いを感じていただきたいと思います。そして竹虎の商品を手に取っていただいた時にも、虎斑竹のことや、職人のこだわりや想いに触れてもらえれば、もっともっと竹製品を好きになってもらえると思うのです。



虎竹御守り福音鈴

虎竹御守り福音鈴


昨年のメキシコで開催された世界竹会議に竹トラッカーを持って行く費用を集めるクラウドファンディングではたくさんの方々にお世話になりました。無事に輸送費用も集まり、竹トラッカーと虎竹を世界中の方々に見ていただくことができました。


そのクラウドファンディングの特典の1つとして製作したのが、この虎竹御守り福音鈴です。この鈴はたった4本のヒゴから出来ています。少ないヒゴで編む方が簡単そうに思えますが、簡単に編めるものは簡単にほどけてしまいがちです。


4本しかないヒゴをしっかり押さえながら、ほどけないようになるまでヒゴを編み上げていきます。押さえている重なった部分をうっかり離してしまうと編み方が変わってしまったり、ほどけてしまいます。


そしてまず綺麗に編むためには、その作る物にあったヒゴを作ることが何よりも大事です。ヒゴの幅や厚みが少し違うだけで、出来上がりの雰囲気や硬さ、編みやすさなども大きく違ってきます。ほんの少しの厚さの違いで明らかに硬さが違ってくるので、編みながらヒゴの裏をナイフですっとさすって厚みを調整したりもするのです。


いろんな編み方の籠を見たり、どんな籠を作っても思うことなのですが、最初にその籠の編み方を考えた人は本当に凄いと感じます。覚えてしまうとなんてことない編み方も、最初に考えて形にするのにはどんな苦労があったのか、自分には想像すらできません。そんなことを改めて考える福音鈴作りです。

波網代の取り付け

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前回のブログで編んだ虎竹波網代に車体の曲線に合わせた縁を取り付けました。虎竹で波模様の網代を編んでもなかなか模様が出ず、サビ付けをして模様を浮き出さそうと考えました。試しに砥粉を主にしたサビ粉を編み目の凹部分に入れてみると、編み目模様は綺麗に出ますが、車体の他の部分との質感のバランスがよくありません。


サビ付けをあきらめて、縁に巻いた籐と網代編みの編組固めと強度を上げるために、カシュー漆を薄めて拭き付けると、虎竹表面に艶が出たので、見る角度によっては波模様が少し見えやすくなりました。


完全に後付けになりましたが、実は違う角度から見れば編み目が波模様に見える編み方ということにしておこうと思います(笑)取り付けは籐で巻いて固定しようと考えていましたが、動きのあるものですし、籐が切れて外れるということにならないよう、前部分はボルト止めにしました。


後ろ部分はサドルを差し込む穴に竹の輪切りを取り付け、サドルでその竹の輪を抑えて固定する方法にしました。こうしておくと前のボルトとサドルを外すだけで簡単に取り外しできます。いろんな点検や整備もあるので、こうしておいて正解です。そう思うと、他の車体部分も簡単に取り外しができるように作っておけばよかったと反省しています。

虎竹波網代

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竹虎創業125周年記念で製作したREIWA125号のハンドルから椅子にかけての部分に取り付けるため、虎竹で波網代を編んでいます。この製作には自分はほとんど関わっておらず、やったことといえばハンドル部分を竹に取り換えたくらいですが、竹そのままを使ったパーツが多く、勝手ですがちょっと遊んでみたくなりました。


網代編みはヒゴ幅や編み方によって表情が変わるのが面白く、竹細工を始めたころは網代編みの籠を多く製作していました。またヒゴの裏をナイフですっと撫でたくらいの厚みの違いで編みにくかったり、出来上がりが柔らかく見えたりと竹細工の面白さや難しさがよくわかります。


今回は編み模様が波状に見える波網代編みで編みましたが、裏面の竹の模様の無いほうを見ると波模様が見えますが、表面は虎竹特有の竹の模様があるため、編み目模様が綺麗に出ません。やはり虎竹は少し太めの竹の素材感のわかる使い方が一番いいのかなと思いながらも、また逆に虎竹ならではの網代編みの表情があり、これはこれでいいのだと思います。


とはいえ、せっかくの波網代の模様をもう少し出すために編組の凹凸を立体的に見せる効果のあるさび付をしようかと考えています。これは編組の凹部分に砥の粉などで作ったさび粉を付着させる方法です。このREIWA125号に合うのかどうなのか不安ではありますが、いろいろ試してみたいと思います。

虎竹箸置き

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店舗にご来店いただいたお客様から、以前にどこかの職人さんに作ってもらっていて、店舗に一つだけ残っていた箸置きが作れないかというご要望をいただきました。


最近ではインターネットでのお問合せが多くなってきましたが、こうして実際にお客様と顔を見ながら話をしていろんなご要望やご意見を聞けるのは新しい発見やこちらの課題も見え、楽しくもあり、勉強になることも多いものです。


どんなものでも初めて作るときはそうなのですが、簡単そうに見えるこの箸置きも実際に作るとなると、曲げ部分の厚さをどれくらいにすればいいかをいろいろ試行錯誤をします。曲げる部分が厚いとヒゴが折れてたり、小さくまとまりませんし、薄いと小さく曲げれますが、ほどけたり形が決まりません。


曲げる部分の厚さは1.5ミリにしていますが、そのまま曲げると折れるので3枚に剥いで曲げています。シンプルですが厚すぎず薄すぎず、微妙な竹ならではの柔軟性と張りを生かした箸置きです。そして虎竹ならではの自然の模様だからこそ、1個1個違った雰囲気の箸置きに出来上がるのです。

イメージ共有の難しさ

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竹虎の販売している商品の他に、こんな物ができませんか?といろんな形や大きさの竹製品のお問合せをいただきます。それは大変ありがたいことで、竹虎ならできるかもしれないとお客様に思っていただいているからこそ、お問合せをいただけると思っています。


インターネットが普及して、誰でもこんな高知の田舎の竹屋を知っていただける機会も増えたおかげでもありますが、反面近くにあった竹屋さんや職人さんが少なくなり、相談できるところがなくなってしまったこともあるのではないかと寂しい気がします。


日本の竹文化や長く育まれた伝統の技を守り、継承させていく事を使命としている竹虎として、できるだけその期待に応えていきたいと思います。ただ、写真や図面などでは伝わらないイメージや、柔らかさや硬さ、使用状況による使いやすさや耐久性など、細かい部分でのお客様とのイメージのズレがどうしても出てしまいがちです。


また初めて作る商品には試作や試行錯誤もあり、どうしても製作には手間がかかるため割高になり、お値段の部分でもお客様の思いとは離れた物になってしまうことも多いため、製作を簡単に受けることができず、時にはお断りをさせてもらったり、製作できてもどうしても慎重にならざるを得ないのです。


今回は照明に組み込む虎竹の六つ目編みを製作させてもらいました。六角形の形の照明で、六つある20cm四方の枠にこの六つ目編みと和紙をはめ込んだ照明を製作されるようです。


イメージ作りのために残っていた4mm幅のヒゴで編んでみました。お客様のイメージとは少し違うようでしたので、ヒゴ幅を1mm落として3mm幅のヒゴで編みました。ほんの1mmの違いですが、出来上がりイメージは全く違います。


出来ることと出来ないことがありますが、お客様の思いをよく聞き、理解し、お客様と製作側のイメージの溝を少しでも埋めながら、別注商品は作らせていただいているのです。

別注竹輪

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別注の焼板木戸を製作しました。ヒジツボで固定すると風情のある取り付けになるのですが、少し大きめの焼板木戸は重量もあることから、取り付けは丁番金具をお勧めしています。丁番で固定するには固定する柱が角柱でなければ固定しづらいですが、ヒジツボでは重さで釘が抜けてきて、次第に木戸が垂れてくるためです。


もう一方の開け閉めする方には簡易の鍵にもなる取っ手がついているものもありますが、こちらも金具で固定する方がしっかり固定できることから、金具で止められる方が多いようです。


しかし今回のお客様は竹輪での固定を希望されており、また止めるほうの柱が大きいこともあり、別誂えで竹輪を製作しました。直径22cmほどの竹輪ですが5回巻きつけて作るため、製作には余分も入れて4mほどの長さの竹が必要になってきます。


5mmほどの幅のヒゴ1本あればいいのですが、そのヒゴを作るにも1本の竹を割らなければいけません。また竹輪の大きさによってヒゴ幅や厚みを変えなければ綺麗な竹輪にならず、編んでみて綺麗にいかない場合、また幅や厚みを変えて製作します。


また竹輪は竹の張りを利用してがっちりと固定された竹輪になります。薄いヒゴにすれば編みやすく失敗もありませんが、張りの無い柔らかく解けやすい竹輪となります。適度に張りを持たせながら編める幅と厚みがあり、またそれに耐えうる材料の竹の選別も必要です。


このように竹輪一つとっても別注の商品は作ってみないとわからないことが多く、そこには自然素材を使って手作りで作るがゆえの難しさがあります。たった1本のヒゴから作る竹輪一つですが、製作には1本の竹を必要とし、そこには職人の経験と技術が詰まっているのです。

虎竹花籠作り体験

虎竹花籠作り体験


最近の中学校の修学旅行は以前の観光地を巡る旅行というよりも、体験型の修学旅行を取り入れているところが多いようです。虎竹の里のある高知県須崎市では、観光協会が中心となり、須崎での自然・文化・人々との交流を楽しむ体験型旅行を提案し、県外の中学校の修学旅行生を受け入れて、いろいろな体験をしてもらっています。


カツオの藁焼きたたき作り体験やドラゴンカヌー体験、り体験などのほかに、ここ須崎市安和にしかない日本唯一の虎斑竹での花籠作り体験もそのプログラムに入っています。


たくさんある体験の中から希望をだしてくれた中学生に、ここにしかない竹での花籠作りという経験と、最初は作れそうにないと感じる花籠を実際に自分で作ってもらい、修学旅行の記念として持って帰ってもらうという体験プログラムです。


時間をきっちり決められている修学旅行の日程の中で、花籠作り体験に充てられる時間は2時間ほどです。2時間という短い時間の中で12~15人ほどの生徒全員に花籠を完成させてもらうというのは、結構難しいことで、いつもギリギリまでかかってしまいます。


生徒さんの中でも、器用で理解の早い生徒さんもいれば、不器用でなかなか編み方を理解できない生徒さんもいます。そういう場合はどうしても遅い生徒さんに合わさなければいけないために、そういう生徒さんが多い時には、どうしてもマンツーマンで教えたりするために時間がかかってしまうのです。


でもそこは同じ学校の同級生ということもあり、分かった人が分かっていない人に教え、協力しながら楽しく作ってもらうようにしています。


簡単でもっと早くできる籠もありますし、そちらのほうが教えるのも楽なのですが、簡単にできる籠を作るよりも、できそうにないと思うような籠を苦労して作って完成させてもらうほうが、喜びも大きいし、意味のあることだと思っています。


今回の花籠作り体験は若い職人にメインで教えてもらう予定です。生徒さんに教えながらも、こちらもたくさん教えられることがあるだろうと、楽しみにしている花籠作り体験です。

梅雨が明けました

青竹踏み 手入れ


梅雨が明けました。梅雨の時期は、竹を扱う者として、いろんなことに気を使う時期です。一番気をつけていることはカビが生えないように管理することです。竹は自然素材ということもありますが、吸湿性が高いので、ジメジメと湿度の高い時期が続くときには、カビが生えないように梅雨の晴れ間に干したり、箱の中に蒸し込んだりしないように気をつけています。


塗装をかければそういう心配もいらないのですが、そこはやはり竹そのものの素材のよさを直に触れてもらいたいですし、竹が持つ柔らかさや暖かさなどのなんともいえない感触は、塗装をかけてしまうと失われることも多くあるものです。


このずらりと干してある青竹踏みも、プラスチック製もあるようなのですが、実際に踏んでみると足あたりが全く違うとの声をお客様からいただくことも多く、自然素材ならではの優しさや温もりが伝わることの嬉しさを感じています。


普段から竹に囲まれている自分たちの気づかない竹のよさ、魅力をお客様から教えられることは本当に多いです。また逆に、自分たちだからこそ気づいている竹の良さ、魅力をもっともっと伝えていき、竹のある暮らしをご提案できればと思うのです。