丸竹ざる(二重巻き)の修理をさせてもらいました。縁に巻いてある籐は二重巻きにしており、かなり丈夫に作っていますが、長年お使いいただいているうちに、どうしても籐が弱ったり、擦り切れたりして切れてしまいます。
二重巻きにしてあるため、外側の粗く巻いている籐が切れても、内側の密に巻いてある籐は簡単に切れないため、頻繁に苛酷に使われる強度を要求される籠に多用される返し巻き縁という巻き方です。外側の籐が切れた後も、お客様自身で麻ひもで籐を縛って修理しながら使っておられたようです。
内側の籐は隙間が開かないように巻くため、このざるは7回まわって巻きつぶしていました。何回まわるかは縁材の大きさや巻く籐の幅などで変わってきます。初めて作る場合はいろいろと考えながら巻いてみるしかないのですが、そういう意味では巻いてあったように巻く修理はまだ簡単なのかもしれません。
とはいえ最初の1週は、あとの6週まわってくる籐の位置をはかりながら、編んでいる竹ひごの間を縫うように巻き締めなくてはならず、竹ひごのどの位置に通して、どの位置に出すかを考えながらの作業となります。また、7週もするので、籐もどこかで継ぎながら巻きあげていく必要があります。
最近多くなったかごの修理をするたびに、いつもそのかごを手際よく、綺麗に作りあげてくる職人さんたちの熟練の技と大変さを感じずにはいられません。
最近の中学校の修学旅行は以前の観光地を巡る旅行というよりも、体験型の修学旅行を取り入れているところが多いようです。虎竹の里のある高知県須崎市では、観光協会が中心となり、須崎での自然・文化・人々との交流を楽しむ体験型旅行を提案し、県外の中学校の修学旅行生を受け入れて、いろいろな体験をしてもらっています。
カツオの藁焼きたたき作り体験やドラゴンカヌー体験、り体験などのほかに、ここ須崎市安和にしかない日本唯一の虎斑竹での花籠作り体験もそのプログラムに入っています。
たくさんある体験の中から希望をだしてくれた中学生に、ここにしかない竹での花籠作りという経験と、最初は作れそうにないと感じる花籠を実際に自分で作ってもらい、修学旅行の記念として持って帰ってもらうという体験プログラムです。
時間をきっちり決められている修学旅行の日程の中で、花籠作り体験に充てられる時間は2時間ほどです。2時間という短い時間の中で12~15人ほどの生徒全員に花籠を完成させてもらうというのは、結構難しいことで、いつもギリギリまでかかってしまいます。
生徒さんの中でも、器用で理解の早い生徒さんもいれば、不器用でなかなか編み方を理解できない生徒さんもいます。そういう場合はどうしても遅い生徒さんに合わさなければいけないために、そういう生徒さんが多い時には、どうしてもマンツーマンで教えたりするために時間がかかってしまうのです。
でもそこは同じ学校の同級生ということもあり、分かった人が分かっていない人に教え、協力しながら楽しく作ってもらうようにしています。
簡単でもっと早くできる籠もありますし、そちらのほうが教えるのも楽なのですが、簡単にできる籠を作るよりも、できそうにないと思うような籠を苦労して作って完成させてもらうほうが、喜びも大きいし、意味のあることだと思っています。
今回の花籠作り体験は若い職人にメインで教えてもらう予定です。生徒さんに教えながらも、こちらもたくさん教えられることがあるだろうと、楽しみにしている花籠作り体験です。
60cmサイズの竹ざるが出来上がってきました。まだまだ竹が生しく、暖かくなるこれからの季節はカビの心配もあり、出来上がってきた青竹の籠はこうして陽に干してある程度乾燥をさせてから、保管をしています。
竹は吸湿性が高く、どんなに乾燥していても湿度の多い日が続いたり、湿気のあるところに密封しておくと、竹が湿度を吸ってカビが生えることもあります。ですからこのような籠は風通しの良い、できるだけ湿気のないところでの保管をお願いしています。
本当は毎日使っていただくと、カビや稀に出る虫の害も早期発見でき、カビならすぐに拭き取って干してもらったり、虫ならその箇所に熱湯をかけてもらって虫の害を最小限に食い止めることができます。いつも使っていただくことが、その籠を結果的に長く愛用できることに繋がるのではないかと思っています。
この籠は網代編みという編み方で作られています。この編み方はござ編みなどの骨ヒゴに編みつけて行く編み方とは違い、まんべんなく、同じ本数の立てヒゴと横ヒゴで編んでいくので、ヒゴを大変多く使うため、ヒゴ取りや編みに多くの時間を使います。
またヒゴの厚みが厚ければヒゴを詰めて編むことが出来ず、薄ければ編みやすいですが柔らかく弱い籠になるため、ヒゴの厚みの調整をヒゴ取りの段階でしっかりとしておく必要があります。
でもこの籠で一番難しいのは、なんといっても平面に編んだ網代の生地を立体に起こしていく所です。丸く切った網代編みを、その丸より少し小さく作った丸い縁に押し込みながら、立体的に立ち上げていきます。
その時に大事なのはやはりヒゴの厚みです。薄くて柔らかければ張りがなく縁から外れ、厚くて硬すぎると丸い縁に沿って起き上がってくれません。薄すぎず、厚すぎずの絶妙な厚みが、縁をつけながらの起こしやすさに繋がって来ます。
そう言う意味でもやはり竹細工はヒゴ取りが一番大事で、その微妙な調整をしながら作り上げてくる職人さんは本当にすごいなと、入ってくる籠の出来具合を見るたびに、そう思うのです。