竹は丸く、中が空洞になっているため、しゃもじなどの平たい物や、お箸などのある程度厚みあるものを作る場合は大きいもので直径が15cm以上もあり、厚みのある孟宗竹が材料として使われることが多いです。
虎竹はハチクの一種ですので、孟宗竹のように大きくはならず、大きいものでも直径8cmほどの竹です。また竹の身の厚みも他の竹に比べると薄く、大きくて、身の厚みがあり、綺麗な色がついた虎竹は伐り出される虎竹の中でもほんの一部しかありません。
それでも虎竹は日本唯一の竹であり、その自然の美しい模様で作られたお箸などは、竹虎でも人気の商品の一つとなっており、材料となる、大きくて厚みのある竹の確保は、虎竹の入荷最盛期の今が一番大切な時期でもあるのです。
名人作 虎竹耳かきもそんな材料が必要なものの一つです。持ち手の厚さによって持ちやすさは大きく違ってきます。耳を掻くという大変デリケートな道具だけに、持ちやすさにこだわり、出来るだけ厚みのある材料だけを使って製作しています。
今年も少しでも多くのお箸や虎竹耳かきなどを製造できるようにと、一本一本選別された虎竹の中から、またさらに用途に合わせて細かく選別しています。そしてその虎竹を無駄にしないように、大事に製作に取り掛かるのです。
入社3年目と1年目の竹虎の若い職人にも、少しずつ竹を割ったり剥いだりすることを教えていくことになりました。教えると言っても自分もまだまだ未熟で、どれだけ教えられるかわかりませんが、ちゃんと教えられるように、基本にそってもう一度一緒に勉強しようと思っています。
竹を割ったり剥いだりするには、まず刃物の研ぎ方を覚えなくてはなりません。これは刃物を使う仕事の人はまず最初に覚えることだと思います。実際に刃物を使わなくても、機械に刃物がついている道具を使う場合も同じではないでしょうか。
竹を剥ぐ機械もありますが、その機械の刃の位置や角度の調整と共に、その刃の切れ具合とのバランスで綺麗に剥げるかどうかが決まります。その調整などもやはり経験は必要で、自分などはまだまだ正解がわかっていないのが現状です。
基本的に竹を割ったり剥いだりする刃物は、切れすぎると刃が竹に食いこんでしまうために、綺麗に研いでおいてから刃先を少しつぶします。綺麗に研ぐのも難しいですが、その潰し加減も微妙で、使いながら自分のものにしていくようになります。
そしてその刃物を研ぐ前にまずやることが、刃物を研ぐ砥石の面直しです。刃物を砥石で研いでいると砥石の中心が凹んできます。そんな砥石で研いでも刃先を同じ角度で砥石に当てることができなくて綺麗に研げないので、研ぐ前には必ず砥石を平面にすることが何より重要で基本です。
とはいえこの面直しはすごくめんどうであまり好きな作業ではなく、ついつい怠ってしまうことが多いのですが、今回はきっちりと教えていこうと思います。以前は平らな目の細かいコンクリートブロックに砥石をこすりつけて砥石を平らにしていましたが、今は研ぎたい砥石より荒い砥石を使って砥石の面を平らにしています。
面直し砥石という砥石の面を平らにする砥石もあるようなので、この機会にいろいろと試してみようと思っています。いい仕事のできる職人は道具を大事にするとはよく言われることですが、少しの切れ具合の違いで能率が悪かったり、うまくいかないことも多いものです。
自分の刃物を持ち、研ぎ、使ってみながら、いろいろなことを感じ、考えていくことも職人になる第一歩です。また割り剥ぎする竹も一本一本違います。たくさんの竹を割ったり剥いだりする過程で、割りにくかったり剥ぎにくかったりを繰り返しながら、竹という素材を少しずつ知っていけると思います。
この砥石の面直しを第一歩として、自分も含めて、みんなで一緒に成長していかねばと思うのです。