以前に竹灯篭用に大きな竹が欲しいとの問い合わせがありました。直径が10cm以上の竹というと日本で最大の竹の孟宗竹くらいしかなく、孟宗竹をお勧めしていましたが、まだ伐採の時期ではなく、お客様に待っていただいていました。
竹を切る時期は竹の種類によって違いますが、秋から冬にかけての時期が伐採時期とされています。その時期は竹が水分をあまり持ってなく、変色や虫が入りにくいと言われています。伐採の時期に入り、孟宗竹を伐採し、入荷してきた竹からお客様の希望に近い物を選別し、油抜きをしました。
このお客様が作る竹灯篭は1本の竹に足をつけて立て、竹に大小の穴をいくつも開けて、中から照明を照らして模様を見せるというような竹灯篭のようでした。
直径10cm以上、長さは1m、厚み1cm以下で両端に節の来ない竹で、できるだけ節が少なく、キズなどのない綺麗な竹というご希望でしたが、たった1本の竹の、それもこんな細かい希望のある注文を受けてもらえるのだろうか?というのが最初のお問い合せでした。
考えてみれば、中国産の黒竹や白竹などはホームセンターなどでたまに見かけたりもしますが、都会に住んでいる人が孟宗竹をどこで買ったらいいのかさえわからないと思います。そんな中、竹虎を見つけていただき、お問い合せをいただけたということは大変ありがたいことです。
日本唯一の虎斑竹はもちろんここにしかありませんが、日本全国どこにでもあると思い込んでいる孟宗竹も、実際に買うとなるとなかなか買う場所がないというのが現状のようです。そんな竹をお客様のご希望に添って、できるだけご用意させていただくことも、竹虎の使命のように思うのです。
昨年の2月にストックホルム国際見本市にドイツ人、ステファン・ディーツさんがデザインをした竹家具を出品しました。ジャパンクリエイティブさんの紹介で、2度もこの虎竹の里に足を運ばれて、竹でできることと、できないことを説明しながら、試行錯誤しながらステファンさんの想いを形にしたことでした。
孟宗竹の青竹で作り、足は組み立て式にしました。組み立てと言っても竹を削り、本体に巻きつけるだけの簡単な仕組みなのですが、足が開かないようにロープで繋ぎ、そのロープをステファンさんならではの方法で締め上げる方法が独特で、それをその場で思いつき、自分でやってみせてくれたことが印象深く残っています。
そのステファンさんの依頼で、再度竹の家具を作ることになりました。青竹で作ることによって、竹本来の汚れや変色、またカビや虫害など、課題はたくさんありますが、今回も青竹で作ってほしいとの要望でした。
今回もジャパンクリエイティブの事務局の方がわざわざ虎竹の里に来てくださって、いろいろと打ちあわせをしたのですが、虎竹の里に初めて来られた方がいて、竹林に案内しました。その前に竹虎工場を案内したのですが、工場内の油抜きをした虎竹を見られた時よりも、竹林の虎竹の美しさにすごく感動されていました。
ステファンさんもこの竹林を見て感動し、そのままの竹の美しさや空気感を出したかったからこそ、課題がたくさんあっても、そのままの青竹にこだわったんだと思うよという話を聞いて、あーなるほどと腑に落ちたところがありました。
油抜きし、製竹した虎竹を虎竹と呼び、それを当たり前のように製品として出荷していますが、普段見慣れた竹林の美しさや、空気感をもっと出せないか?そんなことを考えた竹家具作りとなりました。