「前におたくで買った縁台やけど、ガタガタするので直してくれませんか?」とお客様がお見えになりました。しっかりと作ってある縁台ですが、割れが出てきたり、長い間使っているうちに、多少はガタガタしだす場合もあるのです。
お見えになったのは年配の女性ですが、自分で車に乗って、縁台を後ろの席に積んで持ってきてくれました。後ろに乗せてあるからと、ドアを開けて降ろそうとしてびっくりしました。その縁台は縁の竹を図面角竹で作ってある、20年以上前の縁台だったからです。
図面角竹とは土から出てきた筍に四角の板枠をして、成長するたびに枠をずらし、倒れないように隣の竹から縄を張って支えながら育てることによって、板枠の中で竹を四角にします。その竹の表面に薬液の泥を塗布して、斑紋のような模様の竹を人工的に作ったものです。20年以上前はその図面角竹を使って縁台を作っていた時期もあったようですが、その後は虎斑竹に変更し、今に至っています。
その年数もさることながら驚いたのは、この縁台の綺麗さです。そんなずっと前の縁台にもかかわらず、足の竹こそ割れがきているものの、他のところは割れもなく、目立った退色などもなく、そのままの形と色をしています。ただ脚がグラグラしだしたという程度です。
玄関に座布団を乗せて置いてあるとのことでしたが、大切に扱っていただけたからこそ、こんなに長い間使っていただけています。こんなに大事に使ってもらえてることに感謝するとともに、この20年選手の縁台を見せてもらえたことが大変嬉しい修理となりました。
どんなものでもそうだと思いますが、物を作るにはある程度の図面や計算やバランス感は必要です。もちろん、編んでみないとわからないことも多く、やってみながら決めることもよくあることですが、籠の大きさや手の長さ、編みヒゴの幅や厚さなど、最初から想定しておくことはいろいろあります。
その中でも網代の籠を決められた大きさに編むのには、このような図面を書いています。内側の長方形は籠の底部分になり、外側の長方形が高さの部分になります。そして長方形に斜めに入っているラインがヒゴの入る方向となります。
底の部分から編み始めるのですが、真ん中の正方形を345mm角に編んでおいて、そっから編み替えて内側の長方形の4つの角に向かって4方向に245mm編み進めたところが、籠の底の部分の角になります。その部分を線で結んでいくと、内側の長方形になります。
その結んだ線に沿って焼きゴテで熱を入れ、平面の網代編みを立体的に起こしていくのです。そして起こした部分の隣り合わせのヒゴを編んでくっつけていきながら、上に編んでいくのです。
この図面の便利なところはこの籠を編むためのヒゴの長さや本数がすぐわかることです。1/5の縮尺で書いていますので、この図面の5倍が実際の大きさになります。真ん中部分は長いヒゴが要りますが角に近い部分はそんなに長くは要りません。
また熱を入れて立ち上げる部分に節が来ないように考えたりもしやすいですし、この図面を見るだけで平面の網代編みを立体的に考えることができるのです。久しぶりに書いてみて、この図面の便利さを改めて実感したのです。