毎年恒例となっている大学生や専門学校生を迎えてのインターンシップが始まりました。今年は8人の学生さんが竹虎にやってきてくれました。2週間のうち、1週間は本社工場や店舗での実習、後の1週間はその実際に竹を扱ったりした体験をもとに、このインターンシップのHPを学生さんに作ってもらうといったプログラムです。
まず最初に驚かれるのが朝礼です。朝礼は単なる報告、連絡をする場ではなく、社員のベクトルを合わせ、仕事への意欲を高め、今日一日頑張ろうとスイッチを入れる場でもあると考えているので、元気な挨拶実習や意見を言い合うことを大事にしています。普段通りの朝礼ですが、学生さん達には非常に元気だと感じてもらえているようです。
必ずやってもらっているのが、虎斑竹をバーナーを使って油抜きをすることです。山から伐り出されたままの竹が釜であぶられ、油がにじんできたところを表面の汚れと一緒にウエスで拭き取ります。真夏の工場内での火を使った作業はとにかく暑く、学生達は苦戦しながらも、本当にまじめに取り組んでくれています。
教えないというのが自分の中での基本姿勢としてあります。当然仕事内容や意味は教えないといけないのですが、そこから先はこの作業を通じて学生さんに気づいてもらうようなインターンシップになればいいなと思うからです。
毎日少しずつ、学生さんと話をしたり、感想を聞いたりしながら、いろんなことを提案したり、目標を作ったりしていくなかで、気づかなかったことや、見えなかったものが見えて来ているようです。学生さんたちの成長が見えてくる毎日の感想文を読むのが楽しみなインターンシップ週間なのです。
先日、トヨタ自動車(株)の社内団体であるEX会という団体にお招きを頂き、ものつくりについての講演と花かご作り体験、竹を割ったり剥いだりの体験をしてもらう研修会に参加させていただきました。
竹細工は場合によっては竹を切るところから始まり、油抜きをし、竹を割り、剥ぎ、それで籠を編み、物によっては塗装もすべて自分でやって、一つのものを一人で完結させることが多い仕事です。
しかし、自動車を作るという現場では、組み立てや板金や塗装など、各パーツでの仕事しかなく、ものを作っている感覚や喜びが薄れがちで、またお客様の顔も見えないために、気づけないことや、忘れがちなこともあるようで、それをもう一度再確認するための勉強会のようでした。
各製造部署のチームリーダー的な人たちが集まり、中には世界技能オリンピックの金メダリストになった人もいるような、その道のエキスパートの方々を前に何を話してよいかわかりませんでしたが、竹細工の現状や技術的なこと、自分なりのものつくりの考え方や、課題などを話させていただきました。
一番驚かれていたのは、竹細工で使う刃物が切れたらいけないということでした。ほとんどの刃物は一旦綺麗に研いでおいてから、刃先を潰すのですが、そんな竹細工では当たり前のことが大変珍しかったようです。
しかし、自分の使う道具を自分の使いやすいように自分なりに工夫、加工しながら使うのはどこのものつくりの現場でも同じようです。機械がやってくれていることの多いようなイメージの自動車を作る現場でも、その道のプロがいて、技術者の技能やほんのちょっとしたことで、自分たちにはわからない差ができ、またそれをなくし、もっと上を目指す職人さんがたくさんいることがわかりました。
オートメーション化され、流れ作業の中で組み立てられているかのような自動車の製造も、人によって作られ、たくさんの技術者の技術が結集して作り上げられていることを、今回の研修会に参加して気づくことができました。
またその技術の向上や若い人への継承、人に教えることや伝えることの難しさはどこでも同じだと実感しました。ものを作るということの本当の難しさはやってみないとわかりません。私とはレベルが違いすぎる人たちですが、ものつくりの難しさや矛盾や葛藤など、共感し合えることが多く、そんなレベルでの話ができる仲間のいることを大変うらやましく思いました。
職種は全く違いますが、世界最高峰レベルでのものつくりを実際されている方々との時間は大変貴重な、また心地の良い時間となりました。