虎竹短冊入れ

虎竹短冊入れ


短冊とは現在では七夕の行事の一環として、願い事を書く折り紙を細長く切ったものが一般的ですが、これは短歌や俳句を詠む際に使われる分厚く装飾が施された色紙のような短冊を入れる用に作ったものです。


波網代というのは網代を編むヒゴの幅を少しずつ変えることによって編み模様が波のように見える編み方です。炭化竹で編んだ波網代の細いヒゴの部分を虎竹で編んで、鶴が飛んでいるかのように見せようとしたのですが、色のコントラストがはっきりせずにぼやけた感じになってしまいました。


この籠は竹細工を初めて2年目に作った籠で、もう23年も前のことです。中蓋もついていて蓋も含めて3つの籠を編んでいますが、すべて表側の籠に内側向けた籠を重ねて2重にしてあるために、6つの籠を作ったことになります。


竹細工や竹に対する思いや考え方は人それぞれだと思いますし、こういった籠を作っていた時の自分の気持ちや考え方と今の気持ちはまた明確に違います。それが23年間の時間の流れや経験、自分の竹に対する向き合い方や気持ちの変化だと思います。この籠を見るとその頃の気持ちを思い出して、とても懐かしい気持ちになるのです。

下駄の前金

下駄の前金


前金とは下駄の鼻緒をすげた時に、前ツボの部分を隠すための金具のことです。昔は土の道だったために、裏側の前ツボ部分が汚れないようにとか、鼻緒部分が擦り切れないように保護をする金具です。


店によってその金具が違っており、その金具でどこで買ったのか分かるということもあったようですし、地方によって前ツボのすげ方が違っていたり、上手下手があったりで、それを隠す意味合いもあったようです。


昔の江戸っ子は金具で保護をして長持ちさせるのがケチくさいと捉えていて、前金をつけないのが粋だと思っていたようで、金具をつけずに履いていた人も多かったようです。


竹虎では虎竹男下駄や竹皮男下駄、竹皮女下駄などにこの前金を打ちつけています。やはり前ツボの部分は隠しておいた方がすっきりしますし、豪華にも見えるのではないでしょうか。しかし桐材は非常に柔らかくて、釘が抜けやすくなるので、少し斜めに打つようにしています。


おしゃれは足元からとよく言われていますが、下駄の裏側のこんな小さな金具一つとってもいろんな考え方や、伝統や風習があって、本当に面白いなと思います。そんなことを知っていると、下駄にも興味が湧き、鼻緒をすげるのも楽しくなってくるのです。