背負いかごの背負いヒモを通すループが切れてしまったとお客様から修理の依頼がありました。このループは籐で出来ているため、長年の使用による擦れなどで、どうしても切れてしまうことがあります。
この籐の巻き方は虫止め、虫かがりと呼ばれる籐巻きの技法の変形ではないでしょうか。何回か素巻きをしておいて、その素巻きの上にくるくる籐を巻きつけるという簡単な技法ではありますが、なかなか決まった巻き方ができるために、籠の手の取り付けや、脚の取りつけの際によく使われています。
強度だけを考えれば化学繊維でできたヒモで作ればいいのですが、やはり竹の籠にはこうした自然素材のものが似合うのです。
外壁や庭などに使われる杉や桧などの木材を長持ちさせる方法には塗装をかけたり、薬剤を注入したりと、いろいろな方法がありますが、昔から一般的に行われてきた方法に焼きを入れるという方法があります。
通常、木材は塗装しなければ劣化が早くなり、色も変わりやすくなります。その木材の表面を高温で焼き、炭化させることによって表面が保護され、塗装しなくても腐りにくく、虫害の被害を防いだり、色の変化を抑えたりする効果があります。
竹虎では各種袖垣の柱に使う桧や屋根材や焼板木戸などに使われる杉板などには塗装ではなく、焼きを入れて自然の風合いを生かしながら木材を保護し、それを使った物作りを心掛けています。
以前は杉板などの大量に使用していたため、まとめてバーナーで焼きを入れたあと、竹虎工場横に流れている川に杉板を浮かべながら表面の余分な炭を水で洗い流す作業をしていました。
しかし最近では作業性の向上のために工業用の回転ブラシを使っています。機械はほとんど手作りですが、モーターをつけてブラシが回転するように作ってあります。ブラシの毛の部分は工業用ブラシを製造しているメーカーさんに何個かサンプルを作ってもらって、固さやコシ、板に傷がつかないかなどを判断しての別注品です。
平面の板ばかりを擦っていれば、そうでもないのですが、桧の丸い柱なども同じように焼き入れしたあと、このブラシで表面の炭を擦って落としていくので、長い間使っていく間にブラシの毛の真ん中部分が削れて、ギザギザになってしまいます。
この回転ブラシもそろそろ替え時です。新しいブラシが届いたので丸い輪に付いた12枚のブラシを交換しました。新しいブラシをつけただけで、なんとなく次回の焼板製造が待ち遠しくなってきました。