竹は真っ直ぐというイメージがあるようですが、実は結構曲がっているものです。竹はタケノコで生えてきて約3ヵ月で親竹と同じ大きさに成長すると言われています。しかし大きく成長しても竹自体の中はまだ成長しきれておらず、少しずつ身が入って、固くなっていきます。
大きくなってすぐの竹をさわると、竹本来の固い物ではなく、柔らかく、ぶよぶよした感じさえあるほどです。そんな竹が数メートルから10数メートルの高さまで成長して山に立っている状態ですので、風の影響で曲がったり隣に立つ竹や木に邪魔をされながら曲がったりと、いろんな原因で曲がってしまうものなのです。
そんな曲がっている竹も用途によっては真っ直ぐにしないと使えないことも多くあります。建材用や庭垣用、虎竹縁台などの並べて使う用途のものはまっすぐでないと綺麗に並べられません。箒の柄なども曲がっていると使いづらいものです。
その曲がった竹をまっすぐに矯正することを竹虎では矯めると呼んでいます。この大きな木材に竹の大きさに合わせていろんな大きさの穴を開けているのですが、これは矯め木と呼ばれるものです。これも当然職人の手作りです。
先月、矯め職人として長年勤めてきた職人さんが退職されました。これからは自分がこの矯め木の前に立って、前のガスバーナーで熱を加えられ、柔らかくなった竹を1本1本真っ直ぐに直していくことになります。
竹虎に入ってくる竹はすべて1本1本見ています。しばらくやっていませんでしたが、ここでもまた1本1本見ていきながら、真っ直ぐにしていきながら竹に向き合う機会ができました。虎竹のそれぞれの特性や曲がりを見ながら、虎竹に向き合っていこうと思います。
先日、日本唯一虎竹の里に突然の寒波がやってきて、山にうっすらと雪が積もっていました。もう12月ですし、南国高知といえども寒波が来て雪が降ることなど年に数回あって、そんなに珍しいことでもないのですが、こうして寒くなることは、ある意味自分の中では嬉しいことでもあるのです。
虎竹の山は、そこに生えている竹すべてに色がついているわけではなく、色のつく竹とつかない竹とがあります。どうして表面に虎皮状の模様が入るのかは幹に付着した寄生菌の作用との説もありますが、はっきりとしていません。どうして色のつく竹とつかない竹ができるのかも、はっきりとしていないのが現状です。
ただ、色のつく竹はその周辺の色のつく竹と地中の根で繋がっているようなので、色のつく竹は色のつく根から生えるようなのです。ですから、虎竹を伐採する際には色のある虎竹を全部伐採するのではなく、その根や繋がっている竹を弱らせないように、親竹を少しづつ残しながら伐採をすることが大事なことなのです。
そんな虎竹の色つきに大きな影響があるとされているのが、気温です。これも確証があるわけではないのですが、山の切り子さんたちの間では昔から気温が下がると虎竹の色がつき始めると言われています。
実際初霜が降りた後に山に行くと、確かに降りる前より色がぐっと色がついてきたと感じることが何度もあり、自分でもそう実感しています。伐採シーズンになってもまだ寒さが来ないので山に入らないという声もよく聞かれることで、寒さが来て色がつくのを待っている切り子さんもおられます。
寒いのは苦手ですし、四国の高速道路は雪ですぐ止まります。あまり冷え込むのも困りものですが、この寒さで虎竹の色がついてくれると思えば、それはそれで嬉しい寒さになるのです。