竹用キリ

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を割ったり、剥いだりする機械は、竹専用に特別に作られた機械があります。竹を割る機械は菊割りという丸い輪の中に数枚の刃の付いた金具を取り付けた装置で、竹をその刃の枚数で割っていく機械です。竹を剥ぐ機械は横に取り付けた刃を上下に調整しながら、竹を剥いでいく機械です。これには同時に幅を取ったり、面を取ったりできる機械もあります。


しかし、竹を切るノコギリの機械や竹に穴を開けるドリルの機械などは、一般の木工用に使われるノコギリやドリルを使用しています。丸ノコギリの刃は竹を切るために、あまり毛羽立たないように、刃の細いチップソーなどを使うことが多いです。


5mmや3mmの小さな穴を開ける場合は一般に売られているキリ先をドリルに取り付けて使用していますが、9mm以上の穴を開ける場合にはショートビットという中心の先に小さなキリがついている大きめのキリを使用します。


木材用にはこの中心の先がドリルのようになっていて、木材にもみこみながら、周りの大きな刃で穴を開けていきますが、それでは竹が割れてしまいます。そのため竹用には、このように先が刃になっていて、切りながらもみこんでいくショートビットが必要になってくるのです。


竹は木材に比べて固く、粘りがあり、割れやすく、中が空洞になっています。それがゆえに、割りはぎしやすく、いろんな編組物に使うことができ、切るだけで器になったりします。


よく木材と比較されるのですが、その特性は大きく違っています。竹は竹用の、竹の特性にあった道具を上手に使っていくことも、とても大事なことなのです。

虎竹の里の結界

虎竹の里の結界


結界と言えば仏教や神道などにおいては、いろいろなものの境界として考えられて、段差やしめ縄などでその区域を表したり、またその境界を表す物をそう呼ぶこともあるようです。また茶道においてはお客さんと、もてなす側の境界を結界と呼ばれる物で仕切るのですが、これには竹を使った物が多く、竹材業の人間としては結界と言えばお茶の席で使う竹の間仕切りとしてなじみのある物でした。


この虎竹の里にも結界というものが張られています。これは春祭りの際に安和天満宮から出されるお札を、毎年地区の総代が竹の先にそのお札をつけて、東西南北の四方に立てています。それと併せて、あまり知られていないようですが、虎竹の里の中心とされる燈明台と呼ばれる石灯籠にも、このお札を立てて、この里を禍や魔物から守ろうとしています。


東は須崎寄りの領久のてっぺん、角谷との境。西は焼坂峠頂上。南は大神の尾根。北は本谷林道の突き当りの尾根。以前はこの四か所に立てられていましたが、今はそこまで行くのも大変ということで、それぞれの麓付近や車で行ける、できるだけ近いところに立てて、結界としているようです。


虎竹の山に向かう時に頻繁に行き来する焼坂峠の上がり口にも、このように地区総代によって、お札が立てられています。麓に立てられた分、目にすることが多くなりましたが、その反面、このお札の意味さえ知らない人も多くいるようで、残念でなりません。


このように目に見えるもの、目に見えない多くの物に虎竹の里をはじめ、竹虎も守られてきました。これを見るたびに、こういうことをずっと伝えてきた先人に対する尊敬の念と感謝の気持ちと共に、伝えることや守ることの大切さをひしひしと感じ、この気持ちをずっと大事にしていきたいと思うのです。

竹皮スリッパの季節になりました。

竹皮スリッパ


竹皮健康草履は自然素材の筍の皮を使用して編んでいるので、寒い冬に履いてもあたたかく履いていただけますが、やっぱり履いていて足がさらっとするこれからの季節が本領発揮の季節だと思います。それともう一つ、竹皮健康草履の裏にEVAスポンジを貼り付ける竹皮スリッパの製造現場にとっても、竹皮スリッパの季節になりました。


それは春先から夏にかけての時期が、たくさんの方に履いていただけている時期でもあるのですが、工場内の気温が竹皮草履とEVAスポンジを貼りあわせる作業に大きな影響があるからです。


竹皮ぞうりとEVAスポンジを貼りあわせるのには専用の接着剤を使用しているのですが、この接着剤は塗ってから2時間ほど乾かしてから接着する接着剤です。これが気温が低いと表面だけ早く乾いて固くなり、大変貼りあわせしづらくなるのです。


気温が低い時には2~3度の気温の差で大きく違うために、冬場は天気や気温を見ながら、貼りあわせをする日を調整しています。また接着剤を塗った部分に風があたると、表面だけが乾いて中が乾かないので、風が当たるのもよくないために、夏場の暑い時でもほとんど窓を開けずに作業をしています。


寒ければ接着剤がうまく乾かず、夏場は非常に暑い中での作業になります。しかしこの季節は、気温も適度に上がり、接着剤がいい感じで乾いてくれますし、工場内も快適な作業環境となって、スリッパを貼る作業には一番いい時期です。そういう意味でも、竹虎工場内ではこの季節は竹皮スリッパの季節なのです。

くさび

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虎竹縁台は虎竹で枠を作り、その枠の座面に黒竹を並べ、四万十カズラで編んでいます。その編む段階で必要なのが、このくさびです。くさびと言っても、木片の先を少し削っただけの物ですが、これがあるとないとでは、編みやすさが全く違います。


くさびとは、堅い木材や金属で作られたV字形、または三角形の道具として知られています。柄鎌などの割と大きな刃物に柄をつける時や、柄が抜けた場合に、柄の木材の先にくさびを打ち込んで抜けにくくするのは、刃物を扱う者としては日常的に行うことです。これはくさびを打ち込むことによって、刃物の穴に差し込んだ部分の木材を大きく張らせて、刃物が抜けないようにするものです。


くさびにはこのように物と物とが離れないように圧迫するという役割がある一方、物と物を割り広げるという役割もあります。黒竹と黒竹の間に差し込んで間隔を広げて、編みに使っている四万十カズラを通しやすくしているのです。


何かに詰める形で物が抜けないようにしたり、固定したりするくさびも、割り広げるくさびも、昔からのほんのちょっとした知恵です。いろんな形はありますが、手作りの職人の現場には、こうしたちょっとした工夫や知恵があちこちで見られるものなのです。

虎竹縁台の荷札

虎竹縁台の荷札


虎竹縁台は日本唯一の虎斑竹で枠を作り、腰掛ける部分に黒竹を並べて作った縁台です。虎竹を使っているというのが大きな特長ですが、もう一つ大きな特長として脚を折りたためるということがあります。以前は脚の部分も竹を使っていましたが、今では耐久性や強度を考慮して、四万十ひのきを使った脚をつけています。


脚部分と土台部分を繋ぐのは、折りたためるように蝶番を使用しています。そしてその脚を起こした時に、脚部分を動かないようにするのが、つっぱりと呼ばれる細い竹です。その竹は脚部分から縁台の裏の中心部分に伸びて、中心部分に取りつけているビスに差し込めるように火で炙って少し曲げています。


つっぱりというだけに、これで脚部分を突っ張って固定するのですが、ただ差し込んだだけではどうしても緩みができてガタガタしてしまいます。このつっぱりを少しだけ張って取り付けて、緩みのない、動かない脚に仕上げていきます。


脚部分は2つあるので、つっぱりも2つで、差し込むビスも2つあります。どちらに差し込んでもいいようにある程度は作っているのですが、やはりこれは自然素材で作った手作り商品です。工業製品のように全く同じものはなく、脚でもつっぱりでも一つひとつ違うのです。ですからこちら側の脚はこちらのビスに差し込むというしるしのために、この荷札をつけています。


同じように作って、同じように差し込むように作っても、なにか違ったり、ほんの少しねじれてみたりします。それを修正し、微調整するのが職人の仕事です。竹を切ったり、組むのは誰にでもできますが、自然素材が故の小さなズレやゆがみを調整出来て初めて、その製品を作れる職人となれるのです。