結束用の道具

竹結束用の道具


職人の仕事は、実際にやってみないと大変さが本当にわからないことが多いのですが、自分で山に入ってみて、山の仕事で一番そう感じたことがを束ねることの難しさです。それまでは竹の広がった土場の竹を束にしたり、工場内で竹を束にすることしかしていませんでしたが、10数年前に山に入って伐採をして初めて分かったことでした。


切る時期の竹を選別したり、枝打ちしたり、急な坂の山道をスリップしながらも運搬機を上げていくなど、大変なことは山ほどありますが、ある程度想像できる大変なことでした。しかし竹の立ち並ぶ山の斜面の中で、数本の竹を揃えて束することが、これほど難しいことだとは思いもよりませんでした。


虎竹の山は斜面の場所が多く、山の斜面で切った虎竹をある程度の大きさに結束してから、運搬機に乗せて下してきます。伐採し、斜面に倒してある虎竹をある程度の本数で束ねようとすると竹が竹の上に乗る形となって、竹の上で滑って、斜面に沿って滑り落ちていってしまい、束にしようとしても竹が滑って元が揃えられないのです。


そういう時に活躍してくれるのが、この結束用の道具なのです。切り子と呼ばれる、山で虎竹を伐採してくれている職人さんの手作りですので、名前などありません。しかし昔からそれぞれの切り子さんが木製であったり、四角であったりと、形は違いますが、この斜面で竹を結束する道具を手作りし、山で虎竹を束にしてきたのです。


この道具に竹を入れて元を揃えて滑らなくしておいてから竹を束にしていきます。ただそれだけのことなのですが、斜面の山ではこれが無くては竹をヒモで縛って束にすることさえも一苦労となるのです。虎竹を伐採している山に行くと、無造作に、当たり前のように置いてあるこの道具ですが、斜面で竹を結束するのに無くてはならない道具なのです。