須崎市の移住定住促進をしている暮らすさきさんのイベントで、日本唯一の虎竹水鉄砲作りの体験をしてもらいました。竹の水鉄砲と言っても、大きさの違ういろいろな竹の筒の中を少しでも真空に近づけるのは、結構難しかったりするのです。今回は特に小学校の低学年の子供たちとお母さんが多くて、少し心配をしていました。
ちょうど須崎市の教職員の職場体験で小学校の先生方が暮らすさきさんに職場体験に来ていたので、その多くの先生方のフォローもあって、思いのほかスムーズに出来たのはありがたかったです。正直、水鉄砲の完成度はそんなに期待していなかったのですが、子供たちの作った水鉄砲はどれも素晴らしく、ちゃんと水が飛んでいたのにはびっくりしました。
その後、近くの新庄川で虎竹水鉄砲を使ってゲームをしたのですが、多少の差はあれ、立派に水鉄砲の役目を果たして、ゲームを楽しいんでもらえました。地元にある日本唯一虎斑竹を知って貰えるいい機会ですし、竹に親しんでもらえるといいなと思って参加させていただいたイベントでしたが、やりようによっては子どもたちも竹という素材に興味を持ってくれるんじゃないかなあ~と感じたイベントでした。
魚と山の空間生態研究所の山下さんのお話や、川でのエビや魚などを取る体験なども非常に興味深く、子どもたちもすごく楽しそうで、川の生物に興味を持った子どももいるんじゃないかなと思ったことでした。簡単なような水鉄砲作りでしたが、いろんな難しさにも気づかされ、人にも助けられ、本当いろんなことを感じさせられた一日となりました。
竹の籠を編んだりする台の縁にこんなキズが付いていますが、何だかお分かりになるでしょうか?これは幅取りナイフと言う左右対称の刃物をここに立てて、少しだけ幅広に取ったヒゴをその間に通してヒゴの幅を揃えるものです。
ほんの少しずつ幅が違っていて、自分の取りたい幅のところに刃物を差し込んで、打ちこんだり、少しだけ斜めにしたりして、ヒゴの幅が希望の幅になるように調整します。そうしておいて上から竹で押えながら、ヒゴの幅を揃えていくのです。
2ミリや3ミリなどの良く使う幅の穴から、少し広い幅までいろいろとあり、一度しか使っていないところもあります。毎日毎日たくさんのヒゴを取って籠を編んでいる職人さんに比べ、たまにしかこの編み台に向かわない自分にとってこのキズは、その時に作った籠やヒゴの思い出も詰まったキズでもあるのです。
一般的に竹は縦に一直線に綺麗に割れると思われているために、さっぱりした、真っすぐな性格の人の事を竹を割ったような性格と例えていうことがあります。確かに竹は縦に真っ直ぐに割れやすい性質を持っていますが、縦の繊維に沿って割れていくために、多少は曲がって割れていくものなのです。
真っ直ぐなヒゴを取るためには、幅広く割っておいて、希望の幅に両縁を削って揃えていくか、切り割っていくしかないので、なかなか真っ直ぐなヒゴを取るということは難しいことでもあります。
このシーズンになると、流しそうめん用の竹をどうやって割ったらいいですか?と聞かれることがたまにありますが、大きくて厚みのある孟宗竹は割ることさえも大変ですので、切り割ってくださいと答えています。真っ直ぐに切り割っていくために、目印の墨をつけて、ノコギリで切って割っていくのです。
こうしていくと綺麗に真っすぐに割ることができるのです。簡単そうですが、竹は杉やヒノキなどの木材よりも固い性質なので、真っ直ぐにひき割っていかないと、竹にノコギリが引っかかってノコギリが跳ね上がってくることもあります。そうなると大変危険なので、この作業をする時は特に慎重に、気をつけてやる必要があるのです。
「これはお米ですか?」と、来社された方に聞かれます。お米の袋が工場内のパレットに山積みされて置かれていれば、不思議に思う方も多いことだと思います。これは炭焼き職人さんのところから取ってきた竹炭です。お米の袋は丈夫でたくさん入ることから、炭をたくさん入れてくるのにはぴったりの袋なのです。
高知県は梅雨明けをしましたが、まだまだ雨の多いところは多く、部屋の湿気取りや消臭用にこの竹炭はぴったりで、たくさんの方にご愛顧をいただいています。またそれと同時に自分の焼いた竹炭が多くの人に喜んでもらえていると、竹炭職人さんたちも喜んでいます。
高齢の炭焼き職人さんたちばかりですが、まだまだ元気な人ばかりで、竹の切り出しや竹炭の窯出しなどの重労働をバリバリこなしています。竹炭が入荷して、炭焼き職人さんに会うたびに、いつも頭の下がる思いでいっぱいになるのです。
朝、家を出た時の潮のにおいで波が荒れているのが分かる日があります。先日の台風が沖を通った朝も、潮のにおいとなんともいえない空気のべとべと感が漂っていました。
竹虎の裏にはすぐ堤防があって、その向こうはもう海です。波が荒い時には潮が舞い上がり、このように山が白く見えるほどになることもよくあることなのです。外にいると潮でなんだか体がべとつく感じがあり、湿度も増えるために、大変過ごしにくい一日となります。
雨が降ってくれれば、その雨で潮も流されるのですが、晴れた日には車のフロントガラスには潮がべったりとついて、ワイパーを頻繁に使わないと前が見づらくなるほど潮が飛んで来ています。農作物への影響も多少あるのではないかと心配になることもあるほどです。
しかし、この日本唯一虎斑竹に綺麗な模様が出るのには、地中の菌とも言われていますが、この潮風もなんらかの影響があるのではないかと言われる方もいます。そう考えると、この嫌な潮風も悪くはないかなと思ってしまいます。
日本唯一の虎竹の里に焼坂という山があります。その山はこの里の山の中心ともいえるような位置にあります。海岸線に道路が出来た昭和初期までは、隣町の中土佐町へ通じる道が通っており、中村方面と高知方面を行き来するのにはこの山を越えて行っていたようです。
今では、中土佐町側は車では通行できませんが、四国88か所のお遍路さんの通り道として、立派にその役目を果たしています。虎竹の里側は虎竹を出すために山主さんたちと一緒に整備をしているおかげで、2トントラックが通行できるくらいの道が残っています。
とはいえ、舗装もされていない道は雨が降るたびに、雨水が道を流れて、道を削っていってしまうので、梅雨時や台風シーズンなどには、山に行き、その水の流れを切る作業を年に数回はしています。
その焼坂に最近、砂防ダムが出来きました。工事をするにあたって工事関係の車や大きなトラックが通るために道を整備してくれました。土を入れ、きれいにならされた道は見違えるほどに綺麗になっています。ただの荒れた山道に見えるかもしれませんが、私にとっては今のこの道はパンクの心配もいらず、路面の凹凸を気にすることもない、快適な山道になっています。
仕事に出る時にどうしても欠かせないものがメジャーです。以前は施工見積りや施工時などの必要な時にだけ持っていっていましたが、今ではどうしても無いといけない物として、腰のベルトに吊っています。枝折戸や袖垣などの製品の幅を測るのはもちろんのこと、ざるの直径や高さ、ヒゴの幅や厚さ、竹皮草履の幅や長さなど、ありとあらゆるもののサイズを確認したり、測ったりすることが一日の中で何度もあるからです。
例えば丸ざるでは(大)30cm、(中)27cm、(小)24cmと同じ商品ですが、サイズが少しずつ違っています。竹皮草履では女性用、男性用、特大とあり、子ども用は2cm刻みでの商品構成があります。それらのサイズを間違いの無いように確認するために頻繁にメジャーを使用しています。
また一番の理由は、私たち竹虎の扱っている商品が自然素材を使った手作りの商品だからです。特に竹皮草履などは多くの職人さんに作ってもらっているので、人によって大きさに多少の違いがあったり、編みの最後に引っ張って長さを調整するので微妙に長さが違ってくる場合があるのです。
お客様によっても足の大きめの方や小さめの方がいらっしゃるので、そんなお声をいただければ、多少大きめや小さめに出来上がった竹皮草履ををお選びして、お送りするということもあります。
もちろん商品には、その規格があり、できるだけその規格通りに作らなければいけません。しかし型にはめて作る場合は大きさも揃って作れるのですが、型のないかごなどは、同じものを同じ職人が作っても、どうしても多少の違いが出来てしまうものなのです。
物作りの最中に大きさや長さを確認するために使ったり、出来上がった商品のサイズを確認したりと、このメジャーは私の道具の中では一番活躍してくれる道具となっています。
虎竹の里の山といえば、日本唯一の虎竹が自生している焼坂山ですが、竹虎本社工場のすぐ隣にあるこの荒神山(こうじんやま)も、私にとっては非常に身近に感じている山です。竹虎本社工場から海を望むと右側に位置し、またその山に沿って本社の竹置き場や倉庫があります。この荒神山をいつも眺め、またこの山の近くで仕事をすることが多く、竹虎にいる自分の中にはこの山はいつも近くにあり、竹虎の景色の一部となっているからです。
「こうじんやま」を荒神山と書くことを知ったのは大人になってからではありますが、子どものころには友だちとの遊び場の一つとして、かくれんぼをしたり、ソリの一種のキンマで山道をすべったりと、たくさんの思い出のある山でもあります。ここ虎竹の里の人たちにとってもこの荒神山は桜の花見をしたり、また火事などの災害時や時報として鳴るサイレンのある山でもあり、身近に感じている方も多いのではないでしょうか。
今は消防署から電波を飛ばして鳴らしているために、サイレンの鳴る時間がズレることはほとんどありませんが、以前はよくズレて鳴ることがありました。山頂のサイレン塔の下に秒針のない針の時計があり、その時計で時報のサイレンを鳴らしていたのですが、その時計がよく遅れるのです。
その当時、地元消防団には「サイレン当番」というものがあり、当番の者はサイレンが20秒以上ズレたら、山に上がって時計の針を修正するという役がありました。消防団員である自分もその当番をやっていましたが、少しズレると先輩から「サイレンがズレちゅうぞ」と連絡があり、時計の針を直しに山に上がって行ったことが、今となっては大変懐かしい思い出として残っています。
かっての往還であった焼坂山の峠に虎竹の里を見下ろすように鎮座していたお地蔵さんも、今はこの荒神山の中腹に移され、安和の人々を見守ってくれています。私にとっても、この虎竹の里の人々にとっても、いろんな意味で近い、親しみのある山としてこの荒神山はあるのです。
この時期、竹虎工場内で毎週のように必ずやっている作業がこの竹皮スリッパ貼りです。竹皮スリッパ(下駄鼻緒)や竹皮健康スリッパ(鼻緒)など、草履職人さんに編んでもらった草履をEVAスポンジや桐下駄の台に貼り付ける作業です。裏がデコボコしている竹皮草履を軽くプレスして、裏を整えてからの作業となります。
竹皮スリッパ貼りに使う専用ボンドは凝固剤を入れて草履とスポンジに塗り、約2時間ほど置いた後に貼り付けるボンドです。またこのボンドは気温によって乾き方が全然違い、気温が低いとすぐ固くなってすごく貼りづらいので、できるだけ冬の間はやらないようにしています。場合によってはドライヤーで温めながら貼ることもあるくらいです。
この季節は気温が高いので少々時間を置いてもしっかり貼れるのでいいのですが、風が当たると表面だけが乾いてしまうために、あまり窓も開けられない状態なので、暑さと戦いながらの作業となります。
刷毛で塗って並べておいたものを乾いた順番に一つ一つ貼っていくのですが、手作りの草履なので左右の大きさが多少違っていたり、微妙に形が違っていたりするので修正しながら貼っていきます。
竹皮は、裏のデコボコした形状もそうですが、決して接着しやすい素材ではありません。なので後で浮いてきたり、剥げたりする事のないように職人は一つ一つ体重をかけてしっかり貼っていくのです。
こうして丁寧に貼り付けた後にEVAスポンジを鋸で粗切りし、それから熟練職人によりベルトサンダ―で一つ一つ形に沿って削っていきます。高速回転するベルトに竹皮が触れたり、スポンジ部分が余計に削れたりすると折角今まで製造してきた苦労が台無しなので非常に神経を使う作業です。こんな工程を経てやっと皆様にお届けできる商品として完成するのです。