「おとし」とは花かごなどの中に入れて花を挿し、水を入れる筒のことです。今ではプラスチックの物も多く出回るようになっていますが、やはり自然素材の花かごには竹のおとしが一番合っているように思うのです。そのままの丸竹を入れることもありますが、一般的には表面の皮部分を削って、染色、塗装している物が多いと思います。
丸竹の欠点は割れることがあるということです。せっかくの花を挿した花かごも、おとしが割れて水が漏れるようでは台無しです。割れる原因の大きな理由は乾燥です。竹の断面を見て頂くと表皮に近い部分には水の通る維管束がたくさん集まり、中に行くにしたがってその数は少なくなります。その維管束部分が乾燥によって外側と内側で異なった収縮をして割れに繋がっていくのです。
したがって丸竹製品では維管束の多く集まる表皮側を削り取って肉厚を薄くして縮みの差を少なくすることにより、割れにくくしているのです。竹ワインクーラーや竹のビアグラス、そばちょこなどは、その技法の代表的なものと言えるのではないでしょうか。
花かごに入れるおとしとして考えると、その入れる花かごによっては薄くすること以外に、綺麗に磨くということも必要になってくる場合も出てきます。おとしも花かごの一部です。作品として作った花かごのおとしは、その花かごに見合ったおとしでなくてはならないからです。作品作りの最後の仕上げとして、このおとし作りを疎かにしてはいけないと、竹籠作りの先生に教えてもらったのを思い出します。