続・これは修理できるのか?壊れた古い竹魚籠

手直し魚籠


一体どうなってしまうのか?本当に手直しできるのか?と本気で心配していた竹魚籠修理が完了した。あの壊れてしまっていた本体編みや、底編みが、本当に信じられないくらい綺麗に編み込まれて修理されている。完全に死んでいた竹に、新たな生命が宿ったと言っても全然大袈裟ではない。本当に生まれ変わったような出来栄えに大満足している、やはり熟練の竹職人は素晴らしい。


修理魚籠


特に今回良かったのは、古くなり渋く経年変色している竹ヒゴに、虎竹模様が上手くマッチしている事だ。竹ヒゴを継いで編み足しているのが、実に自然な感じに仕上がっている。よくよく注意して見たら、虎竹特有の色合いが見て取れて格好がいい。


完成竹魚籠


口巻も新しい竹で巻き上げている。白い竹肌が、これから年月を重ねていく中で深い色目に変わっていくの楽しんでいただきたい。


竹魚籠


実は、この魚籠は早速お客様のお手元に届けさせて頂いている。美しい出来あがりを、少しでも早くご覧頂きたかったのだが、受け取ったお客様からこんなご感想をいただいた。


竹虎四代目(山岸義浩)、古い魚籠


箱を開けて驚きました。とても丁寧に心を込めて修理をしていただき、感激しております。本当にありがとうございました。私は、若い頃から西洋のフライフィッシングをやっているのですが、愛用している竿は数十年前にアメリカの竿師がトンキン竹で制作した素晴らしいロッドたちです。そのような訳で、私も竹の魅力に惚れ、その恩恵にあずかる1人でして、このたびのご縁をとても嬉しく思っております。春になったら、また魚籠を腰に提げ、竹竿を手に渓流釣りを楽しみたいと思います。
(お客様からのご感想)


手直しした魚籠が活躍する季節、春を待つ楽しみが又ひとつ増えました(笑)。





これは修理できるのか?壊れた古い竹魚籠

古い魚籠


加工性の高い竹は、手直ししながら長くご愛用いただけるのが、最高に素晴らしい点のひとつだ。いくら丈夫で堅牢な竹細工であっても、好きな籠ほど毎日使うので、十年、二十年と手元に置いているうちに、どうしても傷んでしまうことがある。そこで修理が必要となるのだが、昔と違って竹職人も少なくなり、壊れた籠の修理にはお困りの方も多いようだ。そこで、竹虎が一肌脱ごうと立ち上がり、全国各地の竹籠修理に取り組んでいる。


竹魚籠


籠を作った本人がいれば、簡単に直してもらうこともできるかもしれない。ところが、古い竹製品は誰がどこで編んだものなのか分からないものがほとんどだ。現役の職人さんたちは、他の竹人が作ったものは、手間ばかりかかってしまう割に実入りも少ないので、案外触りたがらない。


壊れた魚籠


いやいや、しかし、この竹魚籠は、普通の竹細工師のみならず、自分たちでも手に取るのを躊躇してしまいそうな壊れようだ。本体編みの大きな穴もそうだが、特に底編みはすっかり抜け落ちた形になって、向こうが見えてしまっているのだ。


魚籠


口巻だってひどい状態だ。元々は若くて柔らかな竹を選び、表皮を薄く剥いだ竹ヒゴで、きつく巻かれていたはずなのだが、見る影がない。これは巻き直ししかないだろう。こんな感じで、ちょっと見には絶望的にも思える魚籠が、どのように修理されるのか?明日の30年ブログ「竹虎四代目がゆく!」をお楽しみに(笑)。



お一人様にオススメしたいスズ竹丸籠で癒しの暮らし

スズ竹丸籠


忙しい毎日に、ちょっとした癒しと上質さをプラスされないだろうか?今ではレアな素材となったスズ竹で丁寧に編まれた六ツ目丸籠は、お一人様に特におすすめのアイテムだ。その魅力を、ぜひご紹介してみたい。この丸籠は、小振りなサイズ感が特長だ。お一人分の食器を洗うにしても、果物や野菜の水切りに使ったりしても、ちょっとした小物入れとしても便利。キッチンやリビングの隅に置くだけで、自然素材ならではの温かみが感じられて嬉しくなる。


スズ竹丸籠


軽量で持ち運びも簡単というものイイ。スズ竹は、東北地方などの寒冷地で育つ、細いけれど粘りとしなりのある竹で、手に取るとその滑らかな手触りに驚くことだと思う。細やかで美しい伝統的な六ツ目編みは、職人の技術の結晶。その自然な風合いが、使うたびに心を癒してくれそう。


スズ竹丸籠


日々の暮らしを大切にされたい、そんな方ににも、このスズ竹丸籠をお使いいただきたい。お気に入りの果物を盛るだけでも、テーブルが華やかに。日常の中で「ちょっといいもの」を取り入れることで、暮らしの質がぐっと上がるのだ。


スズ竹丸籠


スズ竹丸籠は、持続可能な天然素材で作られたエコ素材だ。日本で昔から愛用されてきた安全な素材は、環境にも優しい。伝統技術を守るという意味でも、この籠をお使いされる事には意味がある。


スズ竹丸籠


自然素材の温もりと、落ち着いた定番のデザインは、現代の暮らしのに融合して誰かのライフスタイルを上質にするに違いないと思って笑みがこぼれてます(笑)。



生野祥雲斎展が生誕120年・没後50年で大分県立美術館(OPAM)で開催中

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現在、大分県立美術館(OPAM)で生誕120年・没後50年企画として開催されている、生野祥雲斎展で思い出した竹花籠がある。父の知り合いだった竹工芸士の方が大切に持たれていたもので、そう言えば確か生野祥雲斎の作だと聞いた事があった。


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お借りして写真を撮らせていただいた時に確認してみると銘も入っていなかったが、若かりし頃の作品だという事だった。


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はじめて竹の世界で人間国宝となった生野祥雲斎さんは、どれだけ日本の竹職人に勇気を与えてくれただろう。それだけでも功績は大きいと思う。


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「竹は竹林にある時が一番美しい」そんな竹への想いがあった同氏の籠だからだろうか、全体から醸し出される雰囲気や、竹のあしらいは目を見張るものがある。


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こんな籠にしてもらえたのだ、竹の方も喜んでいる。



山芋籠が復活しました

山芋籠


低山ハイキングと言うのだろうか?比較的簡単に登ることのできる山登りが人気のようだ。先日、まさにそんなお客様が来店もされていたが、中高年になっても日帰りで楽しめるからと魅力をお話しされていた。もちろん、山歩きも面白さがあるに違いないけれど、自分のように小さい頃から竹林で遊ぶ山育ちだと歩くだけではどうもモノ足りない(笑)。


前にも確かお話しした事があるように、秋の山々には格別な楽しみがあって、そのひとつが山芋だ。もう何年も掘った事もないが、今でも山道を通るたびに色づいた山芋の葉には目がとまる。地中深く細長く育つ山芋を、折らないように堀っていく妙味、掘り出した山芋の美味しさといったらたまらない。


背負い籠


自分で食するのならともかく、売ろうと思えば山芋は折れてしまうと値打ちが下がってしまうから、山から持ち帰るための山芋籠という長方形の籠がある。今回、復活したのは背負いタイプの山芋かご、普通の背負い籠では直径が大きすぎて、せっかく掘り出した山芋が安定しないから直径は約24センチと細身だ。




ところで、動画の中では籠の縁巻などを籐にしたと話しているのだが、籐は江戸時代から日本で使われて来た自然素材であるものの、国内には成育していないので全て海外産だ。それが、近年輸入されづらくなっていて不足しがちで竹籠や竹ざるでも少し困っている。そこで、現在制作の山芋籠の縁巻にはハリガネを使用している。何卒よろしくお願いいたします。



柳行李を衣装籠に

柳行李


ずっと衣装籠として使われていた美しい柳細工が出て来た。柳細工とは、一見草にも見えるようなコリヤナギという高さが1~3メートル程度の植物で、強さと粘り、柔らかさを兼ね備えていて昔から籠編み素材として使われきた。特に柳行李は、丈夫でしなり、通気性に優れた衣装ケースとして、その昔はどこのご家庭にも数個はあったように思う。


柳衣装籠


今回の柳衣装籠も、元々は本体と蓋がセットとなった行李ではなかっただろうか。どうも、この柳細工は行李の蓋部分のようである。


柳行李


縁には竹が使われ、籐でしっかりと留められていた。


柳細工


柳行李、白竹衣装籠


本来は衣装籠ではないにせよ、こちらも逸品である古い白竹の麻の葉脱衣籠と並べてみても全く見劣りしない風格だ。


柳弁当箱


ずっと前に岐阜で最後の柳行李職人さんにお会いしたことがある。同じ柳細工でも、素材によって編み込みの細かさが異なっていたのだが、より緻密に編み込まれた弁当箱などは声を失うような丹精さを感じる。





山や畑や海で鍛えられた腰籠と、YouTube動画特別販売

新しい腰籠


腰籠は便利なので愛用者は案外多く、お陰様で結構お問い合わせをいただいている。そこで、新しく腰籠を用意する事にして先日ウェブサイトにも掲載した。手頃な使いやすそうなサイズ感にしたが、実はこの籠の良さは手に取った瞬間でないと分からない。とにかく堅牢なのだ、力自慢とお父さんが両手で押してみてもビクともしない(笑)。


腰籠


時期の良い竹材を使い、厚みのある丈夫な竹ヒゴで編み上げるからこそ強く、耐久性の高い竹籠になる。これらの竹細工は、実際の山や畑や海の現場で、使い手によって鍛え上げられた本物の籠なのだ。


腰籠、竹虎四代目(山岸義浩)YOSHIHIRO YAMAGISHI


しかし、簡単に新しい籠と言っても実は細かい作りやサイズなど、ひとつの籠が完成するまでには数個のサンプルが出来たりするものだ。そんな事が重なって、数十個ものハンパとなって店頭の片隅や倉庫に眠っている、せっかくの一級品なのでもったいなさずきると最近特に思うようになった。そこで、年内にはYouTube動画で特別販売してみたい、ブログをご購読いただいている皆様は是非ご期待ください。



果たして修理できるのか!?大きな穴が開いて壊れてしまった古いスズ竹腰籠

修理のスズ竹腰籠


竹籠は底部分の四隅、つまり角部分が一番傷みやすいのだが、さすがにここまで大きな穴が開いてしまった籠は珍しい(笑)。スズ竹で編まれたもので、竹ヒゴの変色の状態から随分と古く、壊れてから長い間放置されていたのが分かる。


修理のスズ竹腰籠


形やサイズ感から腰籠として使われていたようだけれど、ここまで壊れてしまっているのに、今まで破棄されていないのは、貴重な籠だから捨てられなかったのか?倉庫に忘れられていたのか?とにかく本当に良かったと思う。


修理のスズ竹腰籠


形がユニークなのが面白い。普通は丸型が一般的だけれど、そうではなく身体に添うようにカマボコ型に編まれた所をみると、恐らく別誂えではないかと思う。腰に下げる両サイドには針金が取り付けられていて、紐を通して腰に固定できるようになっている。




スズ竹は数年前の開花からまだ竹林の十分に復活していないので材料集めに苦労されているようだ。


修理のスズ竹腰籠


口巻きの籐もボロボロだから、ここも巻き直しになるかと思う。スズ竹の竹材自体は高知では手に入りにくいので晒した真竹で対応する予定になっている。この竹籠がどんな風に生まれ変わるのか、是非お楽しみにしていただきたい。





懐かしのプラスチックみかん籠

プラスチック製みかん籠


ある一定の年齢より上の方なら、この緑色のプラスチック製手提げ籠をご覧になられて、懐かしいと感じられるのではないだろうか?当時は、この籠にミカンを入れて売られていて、そのまま持ち帰りにしたり、ちょっとした手土産代わりにしたものである。緑色に黄色いミカンが映えて美味しそうだった事を覚えている。


しかし、どうしてプラスチック製の籠なのに、まるで竹の手提げ籠のようなデザインなのか、ちょっと不思議に思ったりしないだろうか?機能的に作れば、自然とこのような形になったのかと言えば、実はそうではない。プラスチックのこの籠には、見本になった立派な竹籠があったのだ。


コンテナ籠


そもそも、現在使用されているプラスチックコンテナや、段ボールなど便利な製品が出来る前は、物を運ぶための容器は竹で編まれる事が多かった。


御用籠


御用籠などのように、丈夫に作られて長期間使われるものもあれば、耐久性の高い竹表皮だけでなく、内側の身部分の竹ヒゴを使って簡易に製作された籠もあった。野菜や果物を運ぶために、使い捨てのような六ツ目編みの竹籠が大量に製造されていたのだ。


角籠バッグ


御用籠は、「御用」がなくなり、製造数が極端に少なくなっているが、持ち手を付けたコンテナ手提げ籠としても復刻しているので、これから少しづつ見直されていくと良いと思っている。





日本一幸せな根曲竹背負い籠

根曲竹背負い籠


竹虎は、お陰様で全国の沢山のお客様から心温まるメールやお葉書をいただく機会が多い。そして、さらに近年は画像を頂戴するようになったが、その中でもとびきり気に入って毎日ように眺めている一枚がこちらだ。ご愛用のお客様は、この根曲竹背負い籠で登山される方々のために荷物を運ばれているとの事だった。


根曲竹背負い籠


それにしても、何と美しい景色の中で働く竹籠だろう。根曲竹は千島笹とかネマガリササという別名でも分かるように、笹の仲間だ。しかし、背丈も低く、細い代わりに非常に堅牢で粘りもあり、真竹や淡竹などより強い。昔は杖にも使われていたほどで、竹根の杖と比べると細身で頼りなくも見えるのだが、とてもとても。これぼとしなりがあり、耐久性のある竹材は他にない。


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「真竹より篠竹、篠竹よりスズ竹、スズ竹より根曲竹」なんていう言葉もあるけれど、最高の素材が籠になって、最高の場所で活躍している。