低山ハイキングと言うのだろうか?比較的簡単に登ることのできる山登りが人気のようだ。先日、まさにそんなお客様が来店もされていたが、中高年になっても日帰りで楽しめるからと魅力をお話しされていた。もちろん、山歩きも面白さがあるに違いないけれど、自分のように小さい頃から竹林で遊ぶ山育ちだと歩くだけではどうもモノ足りない(笑)。
前にも確かお話しした事があるように、秋の山々には格別な楽しみがあって、そのひとつが山芋だ。もう何年も掘った事もないが、今でも山道を通るたびに色づいた山芋の葉には目がとまる。地中深く細長く育つ山芋を、折らないように堀っていく妙味、掘り出した山芋の美味しさといったらたまらない。
自分で食するのならともかく、売ろうと思えば山芋は折れてしまうと値打ちが下がってしまうから、山から持ち帰るための山芋籠という長方形の籠がある。今回、復活したのは背負いタイプの山芋かご、普通の背負い籠では直径が大きすぎて、せっかく掘り出した山芋が安定しないから直径は約24センチと細身だ。
ところで、動画の中では籠の縁巻などを籐にしたと話しているのだが、籐は江戸時代から日本で使われて来た自然素材であるものの、国内には成育していないので全て海外産だ。それが、近年輸入されづらくなっていて不足しがちで竹籠や竹ざるでも少し困っている。そこで、現在制作の山芋籠の縁巻にはハリガネを使用している。何卒よろしくお願いいたします。
ずっと衣装籠として使われていた美しい柳細工が出て来た。柳細工とは、一見草にも見えるようなコリヤナギという高さが1~3メートル程度の植物で、強さと粘り、柔らかさを兼ね備えていて昔から籠編み素材として使われきた。特に柳行李は、丈夫でしなり、通気性に優れた衣装ケースとして、その昔はどこのご家庭にも数個はあったように思う。
今回の柳衣装籠も、元々は本体と蓋がセットとなった行李ではなかっただろうか。どうも、この柳細工は行李の蓋部分のようである。
縁には竹が使われ、籐でしっかりと留められていた。
本来は衣装籠ではないにせよ、こちらも逸品である古い白竹の麻の葉脱衣籠と並べてみても全く見劣りしない風格だ。
ずっと前に岐阜で最後の柳行李職人さんにお会いしたことがある。同じ柳細工でも、素材によって編み込みの細かさが異なっていたのだが、より緻密に編み込まれた弁当箱などは声を失うような丹精さを感じる。
腰籠は便利なので愛用者は案外多く、お陰様で結構お問い合わせをいただいている。そこで、新しく腰籠を用意する事にして先日ウェブサイトにも掲載した。手頃な使いやすそうなサイズ感にしたが、実はこの籠の良さは手に取った瞬間でないと分からない。とにかく堅牢なのだ、力自慢とお父さんが両手で押してみてもビクともしない(笑)。
時期の良い竹材を使い、厚みのある丈夫な竹ヒゴで編み上げるからこそ強く、耐久性の高い竹籠になる。これらの竹細工は、実際の山や畑や海の現場で、使い手によって鍛え上げられた本物の籠なのだ。
しかし、簡単に新しい籠と言っても実は細かい作りやサイズなど、ひとつの籠が完成するまでには数個のサンプルが出来たりするものだ。そんな事が重なって、数十個ものハンパとなって店頭の片隅や倉庫に眠っている、せっかくの一級品なのでもったいなさずきると最近特に思うようになった。そこで、年内にはYouTube動画で特別販売してみたい、ブログをご購読いただいている皆様は是非ご期待ください。
竹籠は底部分の四隅、つまり角部分が一番傷みやすいのだが、さすがにここまで大きな穴が開いてしまった籠は珍しい(笑)。スズ竹で編まれたもので、竹ヒゴの変色の状態から随分と古く、壊れてから長い間放置されていたのが分かる。
形やサイズ感から腰籠として使われていたようだけれど、ここまで壊れてしまっているのに、今まで破棄されていないのは、貴重な籠だから捨てられなかったのか?倉庫に忘れられていたのか?とにかく本当に良かったと思う。
形がユニークなのが面白い。普通は丸型が一般的だけれど、そうではなく身体に添うようにカマボコ型に編まれた所をみると、恐らく別誂えではないかと思う。腰に下げる両サイドには針金が取り付けられていて、紐を通して腰に固定できるようになっている。
スズ竹は数年前の開花からまだ竹林の十分に復活していないので材料集めに苦労されているようだ。
口巻きの籐もボロボロだから、ここも巻き直しになるかと思う。スズ竹の竹材自体は高知では手に入りにくいので晒した真竹で対応する予定になっている。この竹籠がどんな風に生まれ変わるのか、是非お楽しみにしていただきたい。
ある一定の年齢より上の方なら、この緑色のプラスチック製手提げ籠をご覧になられて、懐かしいと感じられるのではないだろうか?当時は、この籠にミカンを入れて売られていて、そのまま持ち帰りにしたり、ちょっとした手土産代わりにしたものである。緑色に黄色いミカンが映えて美味しそうだった事を覚えている。
しかし、どうしてプラスチック製の籠なのに、まるで竹の手提げ籠のようなデザインなのか、ちょっと不思議に思ったりしないだろうか?機能的に作れば、自然とこのような形になったのかと言えば、実はそうではない。プラスチックのこの籠には、見本になった立派な竹籠があったのだ。
そもそも、現在使用されているプラスチックコンテナや、段ボールなど便利な製品が出来る前は、物を運ぶための容器は竹で編まれる事が多かった。
御用籠などのように、丈夫に作られて長期間使われるものもあれば、耐久性の高い竹表皮だけでなく、内側の身部分の竹ヒゴを使って簡易に製作された籠もあった。野菜や果物を運ぶために、使い捨てのような六ツ目編みの竹籠が大量に製造されていたのだ。
御用籠は、「御用」がなくなり、製造数が極端に少なくなっているが、持ち手を付けたコンテナ手提げ籠としても復刻しているので、これから少しづつ見直されていくと良いと思っている。
竹虎は、お陰様で全国の沢山のお客様から心温まるメールやお葉書をいただく機会が多い。そして、さらに近年は画像を頂戴するようになったが、その中でもとびきり気に入って毎日ように眺めている一枚がこちらだ。ご愛用のお客様は、この根曲竹背負い籠で登山される方々のために荷物を運ばれているとの事だった。
それにしても、何と美しい景色の中で働く竹籠だろう。根曲竹は千島笹とかネマガリササという別名でも分かるように、笹の仲間だ。しかし、背丈も低く、細い代わりに非常に堅牢で粘りもあり、真竹や淡竹などより強い。昔は杖にも使われていたほどで、竹根の杖と比べると細身で頼りなくも見えるのだが、とてもとても。これぼとしなりがあり、耐久性のある竹材は他にない。
「真竹より篠竹、篠竹よりスズ竹、スズ竹より根曲竹」なんていう言葉もあるけれど、最高の素材が籠になって、最高の場所で活躍している。
サクランボの収穫を手伝わさせてもらった。片手で小枝をもって茎をつまんで上に動かすとポロリと収穫できる。しかし、小粒だから、あの枝、この枝と収穫は本当に重労働だと思う。山形では「はけご」と呼ばれる腰籠も、大きくてもダメだ、これくらいのサイズで少しづつ運ばないとサクランボはデリケートなのだ。
収穫される度に運ばれて来るサクランボは色別、サイズ別に選り分けられる。ご家族三世代の皆様が力を合わせられているのが素晴らしい。まさに、家族の絆で作られている果物だと思った。
実は収穫籠は竹製のものだけではなく、荷造り用のPPバンドで作られたものなどもあるようだ。素材や大きさの違いは、他に栽培されているラ・フランスやブドウ、リンゴなどの果物用なのかも知れない。
畑で収穫作業をされていた方々も戻られて休憩タイム。缶コーヒーと地元のお菓子での楽しいひと時は竹虎の現場や内職さんでもあるから全国共通だ(笑)。
選別場でブラスチックコンテナの上で休む腰籠は、やりは存在感が圧倒的に見えて仕方ない。
仕事が再開されて、次々とサクランボの宝石箱が出来あがる。
思えば、この可憐な果物の収穫に役立っているのだ。凄い事だと思っている。
修理させてもらった腰籠が農家の方々の大切なパートナーとして活躍している姿を拝見した。竹籠が畑でどれだけ重要な役割を果たしているのかを改めて感じさせてもらった。天童市の美しい果樹園の景色とともに、サクランボの収穫作業は貴重な体験となった。
この美味しそうなサクランボはどうだろうか!?
来年もその次も、その次の年も長く長くお使いいただきたい、虎竹で修理させていただいた腰籠。そして、また何か不具合があって手直しの連絡をしてくださるのは、もしかしたら次世代を担う方々からかも知れない。
昨年、サクランボ農家のお客様から収穫用の腰籠三個の修理を依頼され、その修理が完了したことをこの30年ブログ「竹虎四代目がゆく!」続・使い込まれたサクランボ籠の修理で皆様にお知らせさせて頂いた。
山形のサクランボといえば、佐藤錦などが有名で高級フルーツだ。まるで宝石のように輝やいており、普段は食する機会などはあまりない。一体どのような場所で栽培されているのだろうか?
最初は一個だけの修理依頼だった籠が、職人の手によって蘇った出来栄えに、農家の方が思わず全ての腰籠の修理依頼をされてきたのだ。あれから10カ月が経ち、その腰籠がどのように農園でお使いいただけているのだろうか?どうしても拝見したくて、山形県天童市の農家さんを訪問させてもらった。
天童市は美しい自然に囲まれた町で、訪れた日は晴天に恵まれ本当に気持ちのよい日だった。農家さんの畑に到着するやいなや、修理させてもらった腰籠が目に飛び込んでくる。
すっかり農家さんに溶け込んだ格好、皆さん暑い暑いと言われていたが、風は涼しくとても過ごしやすいのは、さすが東北だと感じた。
畑に入れて頂くと、早速サクランボの収穫作業を行う姿が目に飛び込んでくる。今日は朝の5時から収穫作業が始まっているそうだ。それにしてもサクランボの果樹園自体が初めてだからキョロキョロ、ここでは佐藤錦の他に数種類のサクランボが栽培されているとの事で、なるほど実の色合いが異なっていたりする。
おおっ!昨年に修理させてもらった腰籠がしっかりと腰に巻かれている。脚立の上で大変な作業をされながら、輝くような真っ赤なサクランボが次々に収穫されて腰籠に入れられる光景に感動した。
サクランボは傷みやすい果物だそうだ。手早く収穫して、集められたサクランボはすぐに集荷選別場に運ばれている。「この籠、本当に丈夫で使いやすいです。収穫がとてもスムーズになりました」と笑顔で話していただき嬉しくなる。こうして、あの壊れた腰籠が現場で活躍している姿を見て、竹虎としての誇りを強く感じました。
それにしても、収穫されたばかりのサクランボは何とジューシーで、爽やかな甘さ、これが本物かと驚いてしまう。口いっぱいに広がる美味しさに思わず声を上げてしまった。ツヤツヤと美しいサクランボを前に、農家さんの日々の努力と情熱に心から敬意を抱くのだ。
こんな大きな御用籠を見たのは久しぶりだ。近頃ではすっかり見かけなくなってしまっていたから、現役で活躍している籠と、しかもこれほど沢山の御用籠に出会えるとは思ってもみなかった。
修理のために職人の工房に運ばれてきた籠たち、所々青く見えているのが今回やり直した竹ヒゴだ。こうして手直しすれば、また長く仕事ができる籠に蘇る。自然素材の籠の素晴らしい点のひとつだ。
このような大きな御用籠には荷物を入れると結構な重量となる。そこで、一人で籠を移動させようとする場合、片方の持ち手部分を持って引きずる事も多い。籠の底に幅広の力竹が四本も入っているの、そのためで、強さと滑りの良さとを併せ持つ竹の特徴を活かした構造と使い方なのだ。
プラスチックコンテナが、いくらでも手に入る時代にこうして竹籠が愛され続けるのは何故だろうか?色々な理由が挙げられるけれど、一番は使いやすさだ。硬質なだけのプラスチックは、コンクリートなどに当たった衝撃で破損してしまう事もあるが、竹は堅牢でありながら編み込みが衝撃を吸収するから物流の仕事では頼もしい存在なのだ。
それでいて、酷使して傷んだ場合には、今回のように修理して元通りの形になってしまうからプロの現場では今でもバリバリ現役、知っている職人は手放さない。
さて、今朝のニュースでは山形県のサクランボ収穫の話題が流れていた。前にギフトで頂いた山形のサクランボは色艶、形が綺麗に整い、箱詰された姿が美しくて、まるでアート作品のようで食べられなかった覚えがある。そんなサクランボの収穫が今年も始まるという事なのだが、実は昨年、収穫に使う竹籠の修理をさせて頂いた話題を、皆様は覚えておられるでしょうか?忘れられている方や、初めての方は是非このYouTube動画をご覧いただきたいと思っています。
竹細工は手直ししながら長く使って頂きたいので、竹籠や竹ざる、買い物籠などの修理は積極的にお受けさせてもらっている。そんな中、こちらのサクランボ収穫籠は、国産ではないものの農家の方が大事に愛用されてきたのが伝わってくる、本当に素晴らしい籠だったので修理させてもらったのだ。
送られてきた籠は3個ともボロボロの状態で、最初は1個だけ修理して後の2個は破棄して欲しいとの事だった。ところが、手直しさせてもらった籠が、これから何年も使えるような綺麗な状態になるので、後の籠も全部修理させていただく事になり自分達も嬉しかった記憶がある。
そして、その時に農家の方に、「来年は機会があれば、修理した竹籠を使うサクランボ収穫を拝見したい」とお伝えしていた。そしたら、何と農家の方はしっかり覚えて下さっていて、来週は山形は天童市まで訪問させてもらう予定だ。サクランボの収穫など初めてだが、職人の手によって見事に復活した竹籠が、再びサクランボ畑で使われるなんて考えたらワクワクする。
1個修理した後の残された2個のサクランボ籠の動画もあります。