古い白竹麻の葉脱衣かご

白竹麻の葉脱衣かご


納屋から随分と古い時代の白竹麻の葉脱衣籠が出て来た。実は、この脱衣籠は編んでいた職人さんが仕事を退かれて、現在では廃版となってしまっているものだが、ロングセラーだったから、つい数年前まで店頭にあった籠と何ら変わらない形だ。


白竹麻の葉脱衣かご


ただ、初めての方なら驚くほど色合いが違っている。真竹を晒した白竹を使っているので、元々はこのように真っ白い竹材だったのだ。


白竹麻の葉脱衣かご


青々とした竹が熱湯で油抜きされ、天日干しして生まれる白い竹肌は魅力的だ。多くの方に馴染のある色目なので、竹と聞けば、このような風合いを思い出される方もいるかも知れない。


白竹麻の葉脱衣かご


この脱衣籠は、少し時代が新しいモノと編み上がったばかりのモノを比べている所だ。時間の経過によって深まる色づきは、季節の紅葉のように移ろいでいく。竹の楽しみのひとつだから、多少高価だと感じられても良い物を手にしてもらいたい。





素晴らしき江戸和竿

江戸和竿、竿好


竹を使う職人仕事でも、江戸和竿などは組合があるくらい職人がいて、活発に活動されているから素晴らしい。そもそも、この江戸和竿には200年の歴史があり、竿師たちが切磋琢磨して繋いできた技が、東京都の「伝統工芸品」に指定され、通産省からは国の「伝統的工芸品」に認定されている。


江戸和竿


同じ東京の竹細工でも、江戸川沿いの篠竹を使った篠崎ざるなどは、200軒もあった竹籠屋が今では全く残っていないから、モノ作りには作り手だけでなく使い手が必要だと分かる。和竿には竹特有の使い心地を知ってしまったコアなファンがいて、その伝統を支えているのだ。


竹虎四代目(山岸義浩)


つい先日、たまたま地元須崎市を盛り上げるためのポスター撮影があって、グラスファイバーの釣り竿を数十年ぶりに手にしたばかりだ。けれど、竹竿はその軽さ、手触り、しなり、質感、光沢、すべてが違う。もし、一度でも魚を釣り上げてみよう物なら完全に魅了されてしまうに違いない。


図面竹の竿入れ


そんな太公望達は、竿はもちろん竿入れにもこだわりぬく。これは、筍が伸びる時に木枠をはめて四角い竹に育て、独特の方法で模様を付ける京都の図面竹だ。この中に、職人の技のつまった繊細かつ実用的な釣り竿が収納されているから凄い。


江戸和竿


使われている竹は五三竹(布袋竹)、矢竹や真竹だが、それぞれの竹の特徴を活かして、釣る魚種、場所によって異なる竹竿が作られてる。川釣りのイメージばかりの和竿だけれど、海釣り用もあり豪快さも味わえるとあって更に面白い。


和竿矯め木


極細の竹を扱うため、矯め木もミニサイズだ。まだまだ小さいものがあるそうだから一度拝見に行ってみたい。


江戸和竿


竹竿の良さを体感すると、他の道具も本物志向にならざるをえない気がする。そうそう、日除けに使う笠なども安価なものではなく、先に復刻したばかりの本物の日本製竹笠にも手が伸びるのではないだろうかと思って期待している(笑)。





小菅小竹堂作「鯉口」

 
小菅小竹堂作、鯉口


先日、小菅小竹堂さんの作品の数々を拝見する機会があった。この竹作家の方がユニークな点は、日本最高峰の技術を持たれていながら産業工芸デザイナーであり、戦後は新潟県竹工芸指導所技師として竹の普及に尽力されていた点だ。普段は竹工芸作家とはあまり縁のない一般的な竹細工にも小竹堂さんの創作された品が多々あったのである。


竹編みネックレス


自分たちも幼い頃から知らず知らずの間に小竹堂さんのデザインに慣れ親しんでいた事になり、後から知って物凄く親近感を感じてきた。だから、作品展が開催されると聞くたびに、どうしても足が向いてしまう。今回は自分の持っている竹編みネックレスを持参した、創作された元々の作品と見比べてみるためである。既に数十年前に廃盤となっているため、最後に残された中から最高に出来栄えの良いものを置いてあるのだが、やはり本元と比べると見劣りする。


小菅小竹堂作、鯉口


素晴らしい作品の中に面白い籠を見つけた、美しい鳳尾竹で編まれた籠だ。鳳尾竹とは元々は根曲竹で、柔らかく、それでいて堅牢な竹質は買い物籠や脱衣籠などで皆様の目に触れる事が多いが、このような繊細な表現もできるから、つくづく竹は面白い。


小菅小竹堂作、鯉口、鳳尾竹


小菅小竹堂作、鯉口


銘を「鯉口」と言う。フッと笑みがこぼれるのも確かな技があってこそ、また小竹堂さんを身近に感じて好きになった。


自然のデザインで飾られた竹香合

 
竹香合


まるで薄型のファンデーションケースのようですが違います。洗練されたデザインは香合(こうごう)、お茶道具の一つで香を入れる蓋付きの容器です。そして素材は竹、点々とついた模様が特徴です。


竹香合


長い竹の稈には水や養分を運ぶ維管束とよばれる管が通っています。その細い管がこのような斑点となって表れているのです、平らな部分は線状に縁に行くに従い矢印のようになって最後は丸い点となります。


竹香合


竹は日本だけでも実に600種もあると言われていて、小さな笹類のような竹から大きな竹まで様々です。おのずと竹から生み出される製品は多岐にわたりますので、このような軽く繊細で面白い、ひとつだけの竹香合もあるのです。


塩月寿籃作の菓子器(Japanese bamboo art by Juran Shiotsuki)

 
塩月寿籃作 蓋つき網代編菓子器うさぎと三日月(Japanese bamboo art by Juran Shiotsuki)


塩月寿籃さんの作品をいつも手にして愛でている。その都度思うのだが作品にこれほど人柄が出るのだろうか?裏表のない丁寧な仕事ぶりが竹編みにも拭き漆にも滲み出ている。


塩月寿籃作 蓋つき網代編菓子器うさぎと三日月(Japanese bamboo art by Juran Shiotsuki)


うさぎは自分の干支でもありお気に入りだ。三日月が描かれているけれど最初は月の世界にいるのかと思っていた。


塩月寿籃作 丸菓子器(Japanese bamboo art by Juran Shiotsuki)


塩月寿籃作 丸菓子器(Japanese bamboo art by Juran Shiotsuki)


塩月寿籃作 丸菓子器(Japanese bamboo art by Juran Shiotsuki)


かっちりした性格そのままの丸菓子器、今からちょうど30年前に創られたとは思えない新鮮さで今日も自分の手の中にある。


竹盃三枚組


竹盃


こんな竹盃で乾杯したくなる。この盃が竹皮の残し方など粋なのだ。


ウィークデイのスズ竹アタッシュケース

 
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修理に結構時間がかかっていましたので頻繁に登場していますが、どこを修理したのかとご質問をいただきました。実は使用している内にぶつけたとか、耐久性の問題ではなく本体側面に見えている縦に伸びる二本のヒゴがあります、ここを虫が喰いかけていたのです。


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一年間かけて煙に燻して炭化加工させた竹材であっても油断できないのが竹の虫のたくましさです。近くにもっと美味しい竹材が山のようにあるのに何故この竹を...?と不思議に思いますけれど自然素材は自分達が完全にコントロールできない事を改めて感じます。


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けれど一体何処を手直ししたのか分からないくらい綺麗に元通りになっています。こうして手を入れて修理しながら長く愛用できるのが竹細工の魅力のひとつです。




土曜日のスズ竹アタッシュケース

 
スズ竹アタッシュケース


長らく修理に出していたスズ竹アタッシュケースが戻ってきた。一年間かけて自然な煙に燻された竹の風合いは素晴らしい、光が当たると黄金色に輝いて見える。


スズ竹アタッシュケース、竹虎四代目(山岸義浩)


こんな時でも思わず出かけたくなる鞄はあるものだ。


スズ竹アタッシュケース、竹虎四代目(山岸義浩)


提げてもいい、開けてもいい。内側の革の手触りもいい。


スズ竹アタッシュケース、竹虎四代目(山岸義浩)


春はすぐそこまで来ている。世界に桜の咲くのは、いつの日か。




早川尚古斎作の竹帽子

 
早川尚古斎作竹帽子


前に早川尚古斎と言う方の竹帽子を美術館で拝見したことがありました。今ではこんな竹細工できる職人はいません、改めて昔の竹の技術の高さを思っていました。


早川尚古斎作竹帽子


そしたら先日その帽子を手にする機会があって何とも感激、やはり竹は手に触れないといけません。ガラスケース越しに想像した質感と重み、素晴らしいものでした。


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自分がいつも被る竹帽子は、ずっと簡素な作りです。


竹帽子の職人


地元では名人と言われた竹職人が、自分の父親がたまの休日に映画を観に行く時に使っていた帽子を見よう見真似で編んだ竹帽子。自分にはこっちが似合ってます。


渡辺竹清先生の煤竹ハンドバッグ

 
試作煤竹バッグ、竹虎四代目(山岸義浩)


祖父との親交が深かったので網代編みの巨匠と言われる渡辺竹清先生には若造だった自分なのに随分と可愛がっていただきました。30年以上前になりますが、その頃に試作した煤竹ハンドバッグがあります。本当に試作で販売できなかったので何とか今まで手元に残っています。


渡辺竹清作バッグ


実は先日、初期の頃の渡辺竹清先生の煤竹ハンドバッグを手にする機会がありました。持ち手を金具で留めるタイプで少なくとも30年はご愛用いただいているはずなのですが本当に美しく丁寧に扱われているのが伝わり嬉しくなるような作品でした。


渡辺竹清作煤竹ハンドバッグ


そこで当時の事を、あれこれ思い出していると画像が一枚だけ出てきました。もしかしたら一番最初に買ったデジタルカメラで撮ったものかも知れません。写りは良くありませんが金具ひとつひとつを、竹材のパーツと合わせながら銀細工の職人さんに手作りしてもらった事が鮮明に蘇ります。この煤竹ハンドバッグは限定で5個だけ製作したように思います、もしお持ちの方がおられましたら是非一度自分までご一報いただけると嬉しいです。


竹虎四代目
yondaime@taketora.co.jp




渡辺竹清先生が最後の最後まで手元に置いた煤竹波網代ショルダーバッグ

 
渡辺竹清作の煤竹波網代ショルダーバッグ


これが、最後の最後まで渡辺竹清先生が手元に置かれていた大切にされていた煤竹波網代ショルダーバッグです。細かく取った竹ヒゴを交互に編み込んでいく網代編みは、御所箱やハンドバッグなど箱物か、もしくは竹皿のような平面の作品になりがちで派手さはありません。


渡辺竹清作の煤竹波網代ショルダーバッグ


緻密な編み込みはお分かりいただけても、ともすれば似かよった籠になり本当の価値が伝わりにくい竹細工のひとつだと思います。


渡辺竹清作の煤竹波網代ショルダーバッグ


「100年暮らしの中で役立ってきた煤竹に、次の100年の命を吹き込む」と言って創作を続けてこられた渡辺先生は150年、200年と時を経た煤竹に人一倍こだわりを持たれてきました。ところが、そのような煤竹は風合いは素晴らしいものの長い風雪の中で強度をすっかり無くしてしまっている竹もあります。


渡辺竹清作の煤竹波網代ショルダーバッグ


煤竹ならではの雰囲気を最大限に活かしつつ、現代の炭化加工の技術で作られた人工煤竹を巧みに織り交ぜる感性が、誰にも真似できない渡辺先生ならではの魅力のひとつなのです。


渡辺竹清作バッグ、竹虎四代目(山岸義浩)


こちらの作品は側面に肩掛け紐も通せるようになっていますので、ショルダーバッグとはしていますけれど、幅広い形を見ますと、少しスリムな御所籠のようでもあります。


渡辺竹清作の煤竹波網代ショルダーバッグ


大事な小物入れとしてご愛用いただくのも良いです。


渡辺竹清作の煤竹波網代ショルダーバッグ


また、このような感じにショルダーを付けてお出かけされる事もできます。