青い鳥はここにいた、トートーバッグと竹手提げ籠

山葡萄手提げ


品の良いトートーバッグを提げている知人がいる、さっそうと歩く姿も格好良いので、たまに街に出る事があるとスーツ姿やカジュアルな服装の男性が持つ鞄を注視していた。今はバックパックに人気があるようだけれど、男の持つトートバックは渋いなあ...元々革製品も大好きなのだ。


そこで、ある時期、片っ端からバッグ店に入りトートバッグを見て回った事がある。やはり国産だと思って、知り合いの社長さんがされている日本の職人にこだわった鞄屋からだ。実はこの店では今まで数種類の鞄を購入しており、この20数年でダレスバッグはひとつ使いつぶした事もある。年々進化されている鞄屋さんでもあるので、さすがに目移りするような素晴らしいトートが並んでいた。


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しかし、何かしっくりこない。白い手袋をして丁寧な接客をしていただく店員さんには悪いと思いながらも外に出た。それからだ、実はあまり好きではないけれど、海外ブランドの店も目につくたびに全て覗いてみた。ボクは田舎者なので驚いたが、なんと店に入るために並んで待つような人気店舗もある。入り口に立っているモデルのような男性に、「首のタオルを取ってください」と言われやしないかとヒヤヒヤして入店したけれど目当てのトートバッグはない。


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どれくらいかなあ...数か月か、いやもっとか忘れてしまったが、探しているうちに分からなくなってトートバッグではなくて、ボストンバッグを買ってしまった(笑)。


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何をやっているのか?これだけ見て回ってもないものだなあ、そう思ってふと我にかえりデスクの周りをみると、50個近い竹手提げ籠たちがいるではないか!近くにあり過ぎて見えなくなっていたようだ。なるほど、これなら世界中さがしてもボクのトートバックは見つからないはずだ。




青い鳥は、最初からここにいた。



日本の伝統の技、本物の一閑張り手提げ籠の魅力

一閑張り一本持ち手角手提げ籠


新しく作った一閑張り手提げ籠の良さは一言「本物」という事だ。おっとその前に、そもそも一閑張り(いっかんばり)の技法の説明をせねばならないかも知れない。一閑張りは、竹編みの素地に和紙を貼り、その上に柿渋をかけて仕上げる技法の細工だ。一貫張りとも呼ばれる事があるが、和紙と柿渋の耐久性で一貫目(3.75キロ)の荷物も入れられるほど強くなるという機能性からと言われている。


一閑張り一本持ち手角手提げ籠


竹籠や竹ざるが一般のご家庭で多用されていた時代は、自分の使う道具は自分たちで編むのが当たり前でもあった。加工性の高い竹だが、毎日の使用でどうして傷んでしまう。そんな時に和紙を貼り、柿渋や漆などを塗布して硬く補強したのが一閑張りの起源だ。


一閑張り一本持ち手角手提げ籠


土佐和紙、阿波和紙、大洲和紙など四国には良質の和紙が多かったからだろうか?一閑張りの技法が栄えた地域だと思うけれど、近年では竹職人が少なくなり、和紙の下地に使われる竹編みが作れなくなっていた。一閑張りは竹に和紙を貼り付けて完成させるので、隠れてしまう竹編みなど編む職人がいないのだ。


一閑張り一本持ち手角手提げ籠


ところが、隠れてしまうと言っても楮100%の和紙の下からは、クッキリと四ツ目編が模様のように浮かび上がる。


一閑張り一本持ち手角手提げ籠


竹の編み目といい、持ち手の中央に浮かぶ竹節の模様といい、この自然の意匠がカッコイイのだ。


一閑張り一本持ち手角手提げ籠


竹、和紙、そして柿渋など日本伝統の素材を使った籠、どうしても和紙貼りが目立つのかも知れないけれど、一閑張りの魅力は、何といっても竹編みだ。実は縁の下の力持ちの竹こそが主役なのだ。





真竹コンテナ手提げ籠バッグできました2024

コンテナ手提げ籠


前回、動画を皆様にご紹介して以来、沢山のお問い合わせを頂いている真竹コンテナ手提げ籠バッグが編み上がった。とは言え、真竹を伐り始めたばかりで頃合いの太さの竹が少なく、出来たと言っても20数個だけだ。明日には持ち手を取り付けてお届けできる形になると思うので、来週早々に販売できるように準備したいと思う。


コンテナ手提げ籠


そもそもコンテナ籠は、堅牢さで日本中どこででも多用されていた御用籠が元になっている。物流でも鍛え上げられた竹編み角籠の最強DNAを受け継ぐ籠だけに、本当にタフで頼りがいのある逸品だ。お手元に置いてガンガンご愛用いただきたい。





竹籠、手提げ籠など竹細工の修理

スズ竹市場籠


竹細工の修理で良くお問い合わせを頂くのは、やはり持ち歩く機会の多い籠バッグだ。ただ、一口に手提げ籠と言っても真竹、淡竹などの一般的な竹材から、スズ竹や根曲竹、篠竹さらには高級素材の煤竹まで様々な種類があり、それらの竹を染めて編み込んでいる手提げ籠などもある。


虎竹やたらバッグ


竹材が異なり、さらに形や技法も様々な籠を修理するのは容易ではないが、それぞれに工夫する楽しみがあり、完成した籠は例外なく格好イイ。


根曲竹お買い物かご


高知県では、スズ竹のように寒い地方の竹は入手が難しいものの、同じ自然素材だから違う種類の竹材を組み合わせても実は全く問題ない。


真竹手提げ籠


そもそも使い込んだ竹細工に、真新しい竹ヒゴを合わせるので修理した部分は目立ってしまう。違う竹材なら尚更だけど、それがむしろ風合いとして、段々と馴染んでくる感じなどはたまらない。


染籐手提げ籠八ツ目バッグ


ところが先日、お客様から気になる事を聞いた。どういう理由か製作いただいた会社に修理をお願いするとお断りされたとの事なのだ。「むむ...?」他所で製作した竹製品まで手直しする自分たちは異例としても(笑)、自社で製作したものは当然修理するのが当たり前だ。少なくとも自分の知る職人で、自分の作った籠の修理をしないという方はいない。


手提げ籠バッグ


加工性が高く、修理して使えるのが竹細工の良い所だ。お客様がお断りされたという手提げバッグも、一体どこを手直ししたのか分からないくらい綺麗に修理できた。


虎竹買い物籠


何か特別な理由があったのかも知れないけれど、竹の良さを多くの方に伝える使命が竹を志す全ての人にあると思っている。修理すれば親から子の世代までも長く使える籠を含めた竹文化が見直される時代になった。



来月中には、真竹コンテナ手提げ籠バッグの再販

真竹コンテナ手提げ籠バッグ


竹の旬がよくなり、良質の竹材で編まれている真竹コンテナ手提げ籠バッグが来月中には発売できる予定だ。真竹で編まれた御用籠の伝統的な竹細工の魅力を現代に引き継ぎつつ、女性でも持ちやすいサイズ感に改良した。プラスチック製品に取って代わる自然素材の温もりを感じていただきたいデザインが特徴なのだ。


真竹コンテナ手提げ籠バッグ


特大サイズの御用籠は厚みのある竹ヒゴを使用しており、手にした時のしっかりとした重量感が安心感を与えてくれる。一方、今回製作中の小さいコンテナ籠の方は日常の買い物やさまざまなシーンでの使い勝手が良くなるように軽量化も考慮した。外出時だけでなく、室内でも野菜籠やマガジンラックとして活躍し、インテリアのアクセントにもなると思っている。


真竹コンテナ手提げ籠バッグ


経年変色によってバッグの色合いは美しい飴色に変わり、使い込むほどに愛着が増していく様子が楽しめるのも魅力。竹林で伐採した真竹をそのまま使用しているため、個々の形や色に微妙な違いがあるけれど、その一点物感もたまらない。手作りの温もりを感じるこのバッグは、他にはない特別な存在感だ。


真竹コンテナ手提げ籠バッグ


真竹コンテナ手提げ籠バッグは、普段のお買い物はもちろん、アウトドアのキャンプなどに威力を発揮しそうだ。持ち手はビニールパイプで作られており、荷物をたくさん入れても持ちやすく、手が痛くなる心配がない。また、底部分は幅広の力竹で頑丈に作られて、重たいものを運ぶ際の衝撃を和らげるしなやかさも持ち合わせている。家庭内での収納にも、もちろん役立ち、様々な用途に対応できる柔軟性を持っている万能選手。是非皆様に再販売をお楽しみにいただきたい!皆様の日常に、この用の美の竹製バッグが加わることを心より願っている。





虎竹革手提げ籠バッグ2024

虎竹革手提げ籠バッグ


虎竹を使った新しい手提げ籠バッグが、ようやく出来あがった。前回の赤染タイプをリニューアルしたので、竹籠は割と早くから編み上がっていたのだが、それでも、「ようやく」と言うのは、革持ち手部分で手間取ってしまったからだ。


虎竹革手提げ籠本体


虎竹革手提げ籠バッグ


しっかりとした革選びから、持ちやすいようにトップの持ち手は細めにするなど工夫を施している。


虎竹革手提げ籠バッグ


更に今回は竹籠本体とのジョイント部分は、革職人のアイデアを取り入れて縫ってもらった白紐がワンポイントになってオシャレ感を演出している。


虎竹革手提げ籠バッグ


もちろん、傷みやすい底の四隅には籐で丈夫な補強を施している。


虎竹革手提げ籠バッグ


虎竹の里の竹を使用して、その竹の美しさと、軽さ、機能性を兼ね備えた新虎竹手提げ籠バッグは日常使いにもぴったり。ショッピングやお出かけに最適で、和洋様々なスタイルにも合わせやすいのが嬉しいのではないかと思っている。




先日、虎竹の製竹作業の様子をYouTube動画でアップさせて頂いた。シンプルでありながらも存在感がある手提げ籠バッグの竹は、竹林の竹から、自分たちが時間をかけて創り上げたものだけに自信を持ってお届けできる。


虎竹革手提げ籠バッグ


こんな竹籠を何十個か製作しただけで、放置竹林や環境保全等おこがましくて言えないけれど、先人が守ってきた日本唯一の竹林と竹文化を継承していきたい思いを込めている。手にする皆様も、そんな誇りを手にしていただきたいと願っているのだ。



やはり国産!使い込まれた山葡萄手提げ籠の修理

山葡萄手提げ修理


これは竹を使った買い物籠ではない、好きな方にはとことん人気のある山葡萄手提げ籠バッグだ。自分が学生の頃には、一般にはほとんど知られてなくて、倉庫の片隅に積み上げられた籠が一山いくらで売買されていた。そんな夢のようなお話もあるけれど、その丈夫さ、経年変色の美しさが知られるようになると、海外で製造されるほど流通する自然素材の籠のひとつとなっている。


山葡萄手提げ修理


ただ、やはり国産で昔ながらのシンプルな網代編みのものに魅力を感じる。技巧が目立ち過ぎる編み込みは好みではない。長年使うものは、「好き」が一番大事なのだ。使えば使うほど風合いの良くなる山葡萄も、やはり底の四隅は傷みやすい。


山ぶどう買い物籠修理


実は、これだけ大きな穴が開いているので、職人によってはサジを投げられてしまっていた。だが、しかし、ここまで愛用してきた山葡萄だけに何とか修理してさしあげたい。


山葡萄手提げ修理


そんな一心が縁巻など細かい手直しにも活きている。


山葡萄手提げ修理


輸入の籠は手直しする所を探すのに苦労されていると聞く。国産はもちろんだが、たとえ海外の籠であってもお客様にとっては大事なパートナーのようにご愛用になっているのを見れば、何とか修理したいとお引き受けする事が多いのです。





新しい虎竹手提げ買い物籠バッグ

虎竹手提げ買い物籠バッグ


赤染した虎竹の手提げ籠をリニューアルして、虎竹の色合いそのままでお楽しみいただく買い物籠を準備している。今までなら、当然のように籐の持ち手を取り付けるところなのだが、近年どうも籐の入荷が不安定になっている。持ち手にできる頃合いの籐が少ないため革持ち手に変更してみたら、なかなか雰囲気がよい。


虎竹手提げ買い物籠バッグ


竹籠だけなら数か月もかかったりする事はないけれど、今回は革素材、仕様の変更に時間がかかっている。それでも、ようやく来月には皆さまにご覧いただけると楽しみにしています。





昭和の虎竹買い物籠バッグ

虎竹買い物籠バッグ


昭和の日本なんて言うと古臭く思われるだろうか。当時は、竹籠バッグを持つ主婦の姿が本当に当たり前で、日常的な光景だった。自分も、母が竹籠バッグを提げて近所にあった万屋に買い物に行くのを良く覚えている。当時の主婦の方々にとっては、市場や商店で買い物をする際の必需品であり、生活の一部として親しまれていた竹籠バッグ。籐もあったけれど、多くは耐久性に優れ通気性が良く、軽量な竹籠だった。


虎竹買い物籠バッグ


冷蔵庫は、もちろんあったけれど毎日新鮮な食材を求めて市場等に出かける事が一般的だったのかも知れない。そのため、竹籠バッグは現在のようにエコフレンドリーだとか、ファッションではなく、実用的な道具として一家に数個あり、ライフスタイルに密接に結びついていたのだと思う。ビニール袋などの普及で、いつの間にか竹籠バッグは姿を消したが、竹虎では懐かしい定番の楕円形と丸型の二種類を虎竹手提げ籠として復刻して販売させてもらっている。


虎竹買い物籠バッグ


通気性が良く、生鮮野菜や果物の持ち運びに適しているのは今も同じで、ご愛用の皆さまからは嬉しいお声をいただく事がある。そんな中で、「良い竹籠を持たれていますね」とお声を掛けてもらうというお客様からのハガキを何度か拝見した。昭和の時代でも、商店街や市場での買い物は、単なる食材の調達だけでなかった。地域の人々と顔を合わせ、コミュニケーションを取る大切な時間でもあり、竹手提げ籠が地域社会とのつながりの象徴でもあったように思う。昭和の時代のノスタルジックな価値も併せ持つ竹籠が、新しい人と人との繋がりを大切にするアイテムとなり、多くの方に愛され続けるようにしたい。





国産山ぶどう手提げ籠の修理について

国産山ブドウ買い物籠


国産の山ぶどう手提げは長く使えば使う程、渋く黒光りしてまるで上質な独特の革のような質感となってくる。本物を持って街を歩く方には、嫌でも目が行ってしまうが、この籠もその手の逸品だ。ただ、いくら耐久性の高い山ぶどうと言っても、さすがに30年、40年とお使いいただく内にはヒゴに傷みがでてくる。お気に入りで頻繁にお使いになられるバックなら尚更だ。


国産山ブドウ買い物籠


自分が若い頃に母から譲られたセンカドバックもそうだし、100年選手の腰籠を手提げにして愛用する籠たちも、それぞれメンテナンスしながら使っている。こちらの小振りの手提げ籠も、この風合いからすると随分と使い込まれている幸せ者だ。


国産山ブドウ買い物籠


持ち手のジョイント部分や、縁巻に傷みがみられる。


国産山ブドウ買い物籠


やっかいなのは、一番傷みの出やすい底部分の四隅には大きな穴が開いてしまっている事だ。持ち手を付け替えるくらいなら仕事は早いが、ここまで傷んでしまうと竹のように籐でかがる事もできないし、少し手間がかかりそうだ。職人に苦労はかけるけれど、手直しが終われば、籠に新たな命が宿ると思っています。