京都のお茶農家さんから、昔ながらの竹籠の修理依頼をいただいた。「おおかご」と呼ばれるその籠は、なんと約25キロもの茶葉を収めるという大型のもの。依頼主の農家さんは、小さい頃から祖父が使っている姿を見て育ち、今では自ら大切に使い続けているという。そして、その竹籠を愛情を込めて「この子」と呼んでいた。
そんな大切な竹籠ならば、できる限り元の姿のまま修理し、お届けしたい。そう思いながらお預かりしたが、目の前にある竹籠は、現在では作る職人もほとんどいなくなった貴重なものだった。幅広の竹ヒゴや極太の力竹など、独特な構造が特徴的であり、以前、同じ京都で似たような竹籠を見た記憶がよみがえった。
「こりゃあ、大きな籠じゃねえ」
工場に持ち込むと、周囲の職人たちも驚きと興味を隠せない。編み方や作りの技術を見ては感心し、触れては頷く。近年では、竹籠を購入したお店でも修理を断られることが増え、行き場を失った籠が全国から届くようになった。そうした各地の竹籠を手にするたびに、日本のそれぞれの地方に根付いた竹細工の奥深さを実感する。
やはり、日本は竹の国だ、そして南北に長いのが面白味を増している。籠や竹笊ひとつ取っても、使う竹の種類が違い、地域ごとに異なる特色がある。
そして、そこには受け継がれてきた技術や知恵が詰まっている。修理を手がけるたびに、新たな発見があって、竹人としての挑戦心をくすぐられるのだ。
「おおかご」と呼ばれる茶籠は、孟宗竹と真竹を組み合わせて作られていた。口巻にはしなやかな真竹を使用し、本体の編みには丈夫な孟宗竹と真竹が見事に組み合わされている。その一つひとつに、当時の熟練職人ならではの技が光っているのだが、やはり長年の使用によって竹ひごが折れていたり、無くなっている箇所もあったりしていくつかの修理が必要だった。
これだけの年季の入った素晴らしい竹籠だ。できるだけ当時の技法を再現し、孟宗竹、真竹と同じ種類の竹を使って補修させていただいた。
ようやく修理を終えた茶籠は、またしっかりとした強度を取り戻し、これからも長く使っていただける状態に生まれ変わった。日本の竹製品は、一度壊れたからといってすぐに捨てるのではなく、こうして修理を施しながら長く使い続ける事ができる。それこそが、日本の伝統的なものづくりの精神であり、竹の魅力でもあるのだと思う。
大量生産・大量消費が当たり前の時代が、少しづつ見直されつつあるけれど、竹細工のように手直ししながら使い続ける文化を大切にしていきたいものだ。今回の茶籠の修理を通じて、竹の持つ可能性や、日本の手仕事の素晴らしさを改めて感じている。竹虎では、これからも竹籠の修理でお客様の大切な道具を長く使い続けられるお手伝いしていきたい。
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