虎竹の里では虎竹の伐採が終わり、一段落したところに取材が入った。たまたま、今回お越しいただいたのはイタリア人のカメラマンの方だった。海外からの訪問者が多くなっているとニュースで見る事がある。訪日の方々は日本といえば富士山など象徴的なものを思い浮かべるが、竹も日本的な自然の光景として人気がある。
そこで、竹林を見に行くといえば、まず京都を思い浮かべるのではないだろうか。確かに、京都の竹林は美しく、観光名所としても有名である。しかし、インバウンドの皆様が訪れる竹林の多くは観光用に手入れされていたり、筍を栽培するための畑として管理されている竹林の場合が多い。
ところが、虎竹の里の竹林は、観賞用でもなく、筍を食することもない。竹製品や竹細工に適した、良質な竹を育てるために手入れされている。竹の成長や品質を見極めながら、適切な時期に伐採し、次世代の竹が健全に育つよう管理されている。これは、日本唯一の虎竹を維持し、長年にわたり受け継いできた山の職人の知恵と努力の賜物である。
今回の取材では、実際に竹細工に使うための竹を育てるという日本の竹文化の深さを感じ取っていただけただろうか。竹林の持つ役割や景観を保つ大切さを、多くの人々にも知ってもらえる機会になれば嬉しい。土佐藩政時代には、年貢として献上されていた虎竹の里の竹。この竹林は、単なる風景ではない、地域の竹文化を未来へとつなげるために存在していると思う。他にはない、この土地だけの価値を、国内外問わず伝えていくことが、130年にわたり竹と向き会ってきた自分たちの義務でもある。
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