スズ竹市場籠は、度々取り上げている竹細工であり、長年にわたり多くのお客様に愛用され来たので、ご存じの方も多いと思う。市場が移転する前の築地には、上京する機会があると良く出かけていたが、そこでは買い出しに来られた方が手にする手提げ籠と言えば、このスズ竹市場籠だった。
自然素材の風合いや、職人の手による確かな作りが魅力であるのはもちろんだが、スズ竹の持つ、しなやかさと強さは格別で、どんな重たい荷物でも気にせず出し入れできる実用性が素晴らしい。さらに、使い込むほどに味わいが増すものだからファンになるのも仕方ない。けれど、好きな手提げ籠だけに、長年の使用によって強靭な竹材が摩耗し、破損ができることはどうしても避けられない。
そこで、他の竹細工同様に、竹虎にはスズ竹市場籠の修理依頼が舞い込んでくる。竹製品は適切に手直しを施せば、さらに長く使い続けることができる。今回の市場籠の場合だと、口部分の籐巻きの巻き直し、一番傷みやすい持ち手の交換、底の四隅の補強など職人が一つひとつ丁寧に修理することで、かごは再び本来の姿を取り戻す。そして、親子二代にわたり受け継がれるほどの輝きを再び放ち始めるのだ。
どんな物でも、粗末にせず大切に使い続けることは、日本の古き良き伝統文化の一つではないだろうか。一時期の大量生産・大量消費が当たり前となっていた風潮が見直され、物を手入れしながら長く使う事が見直されてきたように感じている。持続可能な社会の実現が求められる昨今、修理しながら使い続けることの価値はますます高まっていると思うのだ。
竹は驚異的な成長力が知られ、再生可能な資源であり、環境負荷が極めて少ない。このような竹材こそ、今後もっと活用されるべき素材であり、修理を施すことでその寿命をさらに延ばすことができるならば、資源の有効活用という観点からも意義深い。
竹虎では、これからもスズ竹市場籠のみならず、竹細工の修理を通じて、お客様が一つの竹を長くご愛用できるようお手伝いしていきたいと考えている。復活した竹籠は、新品とは異なる独特の風合いを帯び、持ち主の方にとってさらに愛着の湧く、お出かけ時のパートナーのような存在になるから嬉しい(笑)。物を大切にする日本の心を次の世代へとつなげるためにも、これからも竹職人の手仕事を大切にしながら、出来る限り修理をお引き受けしていきたいと思う。
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