竹皮の黒革雪駄を持った、台湾からのお客様

虎竹竹林にて


インバウンドで賑わっているニュースを観る事はあるが、虎竹の里のような田舎ではあまり関係のない話だ。そんな事を思っている先日、驚くべきことが起こった。台湾から、一人のお客様が突然に竹虎へ来店されたのだ。何かのついでではなく、まさに竹虎の黒革雪駄を求めて、わざわざ飛行機に乗り、日本へいらっしゃったとの事。その目的は、長年愛用していた「黒革雪駄」の修理をお願いするためだった。


お客様は数年来、ネットを通じて手にいれられた黒革雪駄を愛用されており、履き心地の良さと耐久性に惚れ込んでくださっていた。しかし、さすがに長年使い続けると、どうしても劣化は避けられない。そこで「修理してもう一度履けないか」と考え、直接竹虎まで持参されたのだ。


竹皮雪駄


自分たちも可能な限りご要望にお応えしたい気持ちは山々だが、残念ながら黒革雪駄の修理は難しく、新しいものをご案内することになった。すると、お客様は「これほど履き心地の良い履物は他にない」と、なんと新しい雪駄を二足もご購入されたのだ。しかし、自分達が何より驚いたのは、この方の旅程である。普通、海外から日本への旅行となれば、観光やショッピング、食事など様々な予定を組むものだ。ところが、このお客様は本当に「黒革雪駄を買うこと」だけを目的に来日されていた。他の予定は一切なく、ただ竹虎の店舗へ足を運ぶためだけに台湾から日本へ来られている。この熱意には、自分達も少なからず感動した。


台湾のお客様、竹虎四代目、竹皮雪駄


黒革雪駄は、天然素材の持つしなやかさと丈夫さ、そして長時間履いても疲れにくい設計が特徴だ。竹皮の風合いは履くほどに足に馴染み、まるで自分の一部のように感じられる履物へと育っていく。ボクの手に持つ真新しい新品と、台湾かからのお客様のはき込んだ色合いを比べて欲しい(笑)。このような雪駄を、ここまで愛してくださる方がいることに、改めて深い感謝の気持ちを抱いた。海外にも竹虎のものづくりを理解し、共感してくださる方がいる事が自分たちにとって何よりの喜びだ。


竹虎本店にて


今回の台湾からの来客で、改めて「良いものを作り続けることの大切さ」を実感している。日本の伝統のモノづくりに共鳴し、遠く台湾からでも足を運んでくださる方がいる限り、自分達も誇りを持って竹製品を作り続けていく。また、このお客様はボクがいつも着ている作務衣にも興味を持たれ、翻訳機能を通じて話しているうちに決して安価ではないのにご購入頂いた。日本らしさや、日本文化は海外の方にこそ響いているのかも知れない。



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