虎竹の里のには、JR四国の線路が通っており、太平洋が一望できる景色が美しい事で知られる安和駅がある。無人駅であり、急行が停まらないため、一日に上りが5本程度しかない長閑な駅だ。先日、久しぶりに汽車に乗る機会があった。たまに乗る汽車は結構ワクワクする(笑)。車に乗ってばかりなので、いつもとは違う車窓の景色も楽しみだし、狭いシートも他のお客様との距離が近くて悪くない。しかし、さすがに次の便まで3時間ほどもあるので、急行の発着する須崎駅まで車で乗せてもらった。
須崎駅の待合室に座っていると、中年の女性が近づいてきて声をかけてくれた。
「竹虎さんですよね?」
今日は前掛けだけでなく、前掛けから作ったリュックサックも持っているので一目で分かるようだ。
その方は、長くヨーロッパで暮らされていたのだが、最近になって生まれ故郷の高知に帰ってきたらしい。そして、驚いたことに竹虎のYouTube動画「ウィズコロナ(COVID-19)時代!ソーシャルディスタンスを保つ竹製品!感染症防止・帽子!」などもご覧になられていた。何でも小さい頃に母に連れられて、竹虎に何度か立ち寄った事があられるとの事だった。
「母が使っていた財布があるのですが、壊れてしまっています。修理ができますか?」
どんな竹財布か伺ってみると、ボクがたまにお話する昭和の時代に一世を風靡した竹ビーズの製品だった。竹ビーズには球形や楕円球のような形など、大きさも色も様々なタイプがあり、それらを組み合わせてハンドバック、セカンドバッグ、ショルダーバックといったバッグ類のみならず、ベルトやネックレス、財布などの小物類も多数作られていたのだ。思わず懐かしくなって、是非一度拝見させてくださいと快諾した。笑みを浮かべて目の前におられるこの方が、お母様の使われていた竹ビーズの財布を、幼い日の思い出と共にお使いいただけるようになれば、こんな嬉しい事はない。
そして、改めて思った。竹虎には130年余りの歴史があり、ボクたちがインターネットで情報発信するずっと前から実は皆様に知られていた。日本唯一の虎竹という貴重な竹文化を繋いでいく会社として、多くの方に昔から応援いただいていたのだ。先人の偉大さに感謝しながら汽車に乗った。
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