小さい頃から川遊びをして、鰻や鮎、ハヤ、川エビ、そしてツガニ(モズクガニ)など捕まえてきたボクなどからすると、竹編みの魚籠は身近で当たり前にある生活道具のひとつだった。そんな竹魚籠は、地域ごとに魚や漁の仕方が異なるので、それぞれ違う特徴を持ち、また同じ竹材でも地元で手に入りやすい素材で編まれているから面白い。東北の篠竹で作られた、ある魚籠は魚を傷めないように、滑らかな竹表皮を内側にして編まれている。それぞれの土地で、そこに暮らす人たちの息づかいさえ聞こえてきそうな籠だから好きなのかも知れない。
残念ながら、魚籠を編む職人は年々減ってしまって昔のような達人にはお目にかかる機会は無くなった。しかし、竹編みの魚籠は長い年月をかけて培われた先人からの技術の結晶だ。これ以上何も足せないし、これ以上何も引けない、究極の形であり、ひとつの共同製作の作品のようでもある。
竹編み魚籠は単なる道具ではなく、日本の自然と人々の生活をつなぐ存在だ。独特な形や編み方に地域の知恵と工夫が詰まっており、自然と共存する日本の伝統文化を象徴していると思う。魚籠の価値を再発見し、多くの人にその魅力に触れてもらいたい。
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