虎竹の表皮に現われる虎柄模様は、自然の意匠でそれぞれに色づきが異なり一本たりと同じものがない。特に近年、温暖化によると思われる色づきの変化があって、竹の個性が際立つものが多いように思っている。大きな竹細工の場合には、全体的な色目で何とか調和もとれるのだが、例えばこの竹箸のように細く短い竹製品の場合、素材選びがより大切になってくる。一本の竹でも、虎模様が美しく出てる箇所、色合いの薄い箇所、反対に濃ゆい箇所もあるため、慎重に見極めないと竹材が無駄になる事が多い。
ちょうど、虎竹の里では伐採のシーズンを迎えている。今年は、重機を使って新しい山道もつけたので、今まで出しづらかった竹林の竹も伐採する予定で作業が進んでいる。
伐採された多くの竹の中から、虎竹を選り出し、さらに油抜き加工して色合いを出したあとの竹材から素材を選別していく。山のように積まれた虎竹だけれど、凝るほどに自分好みの竹は見当たらない。
虎竹は色柄だけではない。淡竹の仲間であるため身が薄いので、大きめの男箸や耳かき等、持ち手に厚みが欲しい竹材が少なく製造したくとも出来ない事があるのだ。真竹を使った茶道具を製作されている職人さんの工場で、竹材の厚みを拝見して「うらやましい」とため息が出てしまう(笑)。
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