蘇素任さんの竹ソファを、国立台湾工芸研究センターで初めて拝見した時の衝撃は、10年経った今でも鮮明に覚えている。見慣れているはずの竹編みの球ではあるものの、それを繋げてソファにするだろうか?発想の自由さ、面白さに驚いて、竹の可能性はまだまだ広がっていくのだとワクワクした。
その時には作品として展示されているので座る事はおろか、触る事もできなかったけれど、磨き細工特有の竹肌が飴色になるほどの長い時間をかけて、遂に作家の方にもお会いする事かでき、ソファに座る願いも叶った。
これだけ色合いが違ってくると、色違いのバリエーションのように勘違いされる方が多い。ところが、これは同じ作品である。元々、竹は経年変色していくのが楽しみなのだが、竹表皮を薄く剥いだ磨きの竹ヒゴを使っているので、更に色合いは深く、変化は早い。
蘇さんのご自宅に置かれている一人掛けの椅子も、惚れ惚れするような風合いになっていた。
出会った10年前が蘇る(笑)。
竹ソファと別に、室内にはヤタラ編みの座椅子も置かれている。
この椅子にも初めての時には、一体誰がどんな事を思って製作されたのか?と不思議に気持ちになった。それまでも国内の展示会で、台湾の竹工芸は先進的なモノが多く興味を持って見ていたが決定的な作品のひとつだ。
竹ソファはリラックスして座るものではなく、インテリアの要素が強い。けれど、このヤタラ椅子は竹ヒゴの弾力があり座椅子とし使い心地もよく機能性は十分だ。
更に、蘇さんのお部屋には竹ソファに使われた竹編みの球を組み合わせた竹灯りが設えられている。竹と光は良く似合うものだが、この照明は一段と良く出来ている、まるで浮雲がただよっているかのように感じられて雰囲気が素晴らしいのだ。
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