職人たちが惚れ惚れすると言う、山里の箒名人の竹箒が出来上がった。8月から9月にかけての暑い盛りに伐り倒した孟宗竹の竹穂を集め、竹柄に使う五三竹は少し遅らせて川岸に伐りに行く。近くの良い竹は取り尽くしてしまって今回は川の上流まで登って行ったそうだ。
さて、そこで皆さんに質問してみたい。ここに35本の竹箒があるのだけれど、この箒を製造するのに孟宗竹は何本必要だとお思いだろうか?孟宗竹は日本では最大級の竹で、20数メートルの高さがり、直径も10センチを超える大きな竹だ。
少し意地悪な質問かも知れない(笑)。箒に使う竹穂など想像もできないと思うが、実は何と80本もの孟宗竹を伐り倒して竹穂を集めなけばならないのだ!竹の枝も元に近い下の部分、半分は硬くて質が悪く使用できず、残り半分の竹枝から厳選して使用している。せっかく集めた竹材も、気に入らずにこれだけ大量に使わずに焚物になる。
まさに、箒の先端にこだわり抜いている。手入れされていない竹林での、孟宗竹伐採は大変だから、ついつい竹枝がもったいないと思ってしまうのだが、そこに名人は妥協がない。
乾燥するほどに硬くなる、箒柄の五三竹の太さにもこだわりがあって、少し細めに思うけれど、これくらいの竹材が割れにくい。竹の曲がりは一本づつ、畑の横で火炙りして、手矯めしているからコゲ目のあるもの、ないものがある。
そう考えれば、竹の穂も貴重品だ。孟宗竹の竹林で枝打ちした後に、綺麗にまとめて積み上げられている理由がお分かり頂けるかと思う。
エルメス表参道店に入って二階へ続く階段を見上げると、本田聖流さんの作品が飾られている。もしかすると、オブジェがあるけれど一体何で創作されているのか?お分かり頂けていない方もいるのかも知れない。それくらいモダンで、竹とは遠いように感じられるが、ご本人が「竹が自分で形になった」と話されるくらい、竹のしなやかさ、伸びやかさ、軽やかさを活かした作品だと思う。
本田さんの作品を、初めて実際に拝見したのは、2019年にパリのケ・ブランリー美術館で開催されていた「 空を割く 日本の竹工芸」だった。
出発の数日前に、偶然にも一枚の新聞の切り抜き記事を頂いて本田さんにお会いしたくなった。
鹿児島という所は、明治維新から重要な役割を果たしてきた地域だ。戦国時代まで遡っても飛び抜けた人物を生んできた興味のつきない県でもある。孟宗竹が大陸から伝わった土地であり、孟宗の竹林面積が日本一という事で、竹の本場とも言える場所だが、本田さんはそんな鹿児島のご出身だった。若い頃からの苦労などが記事に書かれていたので、ボクが竹と関わる中で疑問に思っている事の答えをご存知なのではないか?そんな期待をずっと持っていた。
高知の古老の職人が、竹ざるの事を「サツマ」と呼ぶお話しは何度もさせてもらっている。土佐と薩摩の竹文化の交流を、伺い知る事ができるけれど、まだまだ不思議に思う事が多い。お忙しい本田さんに時間を取っていただいて、ようやくお会いする事ができ、祖父や父と親交の深かった渡辺竹清先生や塩月寿籃さんと三人でゴルフに興じる仲良しと知り親近感を持った。
けれど、本田さんが若かった頃の鹿児島の竹については、あまりご存知なかった。独特の竹文化や、九州、四国との技術交流など、竹籠を触れば様々な推察が頭をよぎるけれど、本当のところは藪の中だ。
竹炭枕をリビングでもご愛用いただいているお客様を知ってから、それなら少し大型のクッションタイプを作ったら良いのではないか?そう考えて作ったのが国産の高温竹炭を18リットルも詰め込んだ竹炭クッションだ。
製造前にも色々と試作と試用を繰り返したが、販売開始した今でもお客様の声なども頂戴しながら規格は柔軟に変更したいと考えている。現在、販売中の竹炭まくらは竹炭が10リットルだから比較すると1.8倍の容量が入っている。
炭は昔から神社仏閣などにも多用されてきた。消臭や湿度調節の機能はもちろんだが、埋炭等でいわゆるイヤシロチと言われる澄んだ空気感があり、リラックス効果を感じられる方も多い。本能的に心地よいものを知っているのか室内のペットが竹炭枕から離れないと聞いた事もある。
いずれにしても、竹林の心地よさは毎日通っても思うところ。そんな竹を皆様の身近に置いて生活に役立てていただくのに竹炭は最適だと思っている。
ところで、このYouTube動画をご覧になられたでしょうか?竹炭の調湿能力は、竹の専門家である自分達でもビックリ!ご存知ない方は、是非一度ご覧いただけると嬉しいです。
納屋から随分と古い時代の白竹麻の葉脱衣籠が出て来た。実は、この脱衣籠は編んでいた職人さんが仕事を退かれて、現在では廃版となってしまっているものだが、ロングセラーだったから、つい数年前まで店頭にあった籠と何ら変わらない形だ。
ただ、初めての方なら驚くほど色合いが違っている。真竹を晒した白竹を使っているので、元々はこのように真っ白い竹材だったのだ。
青々とした竹が熱湯で油抜きされ、天日干しして生まれる白い竹肌は魅力的だ。多くの方に馴染のある色目なので、竹と聞けば、このような風合いを思い出される方もいるかも知れない。
この脱衣籠は、少し時代が新しいモノと編み上がったばかりのモノを比べている所だ。時間の経過によって深まる色づきは、季節の紅葉のように移ろいでいく。竹の楽しみのひとつだから、多少高価だと感じられても良い物を手にしてもらいたい。
前回、動画を皆様にご紹介して以来、沢山のお問い合わせを頂いている真竹コンテナ手提げ籠バッグが編み上がった。とは言え、真竹を伐り始めたばかりで頃合いの太さの竹が少なく、出来たと言っても20数個だけだ。明日には持ち手を取り付けてお届けできる形になると思うので、来週早々に販売できるように準備したいと思う。
そもそもコンテナ籠は、堅牢さで日本中どこででも多用されていた御用籠が元になっている。物流でも鍛え上げられた竹編み角籠の最強DNAを受け継ぐ籠だけに、本当にタフで頼りがいのある逸品だ。お手元に置いてガンガンご愛用いただきたい。
車で知らないところを走っていても、気になる竹林ではついつい立ち停まってしまう悪いクセがある。この竹林もそうだ、何という事はない何処にでもありそうな、手入れされていない少し鬱蒼とした竹藪が気になってハザードランプを付けた。
暫らくは人手が入っていない様子の、立ち枯れした孟宗竹が目立つ普通の竹藪だ。このような場所にくると、やはり蚊が多い、さっそく耳元に嫌な音が聞こえてきた。同じ竹林でも、手入れされた虎竹の竹林などでは蚊がほとんどいない。
そうそう、竹酢液の蚊除け効果を実証しようとして竹林に入ったものの、あまりにも蚊がいなくて実験を中止したYouTube動画があるくらいなのだ(笑)。
まあ、それはさておき。孟宗竹の竹藪の向かい側には同じ竹かと思いきや、立派な真竹が伸びている。太い真竹の材料が無くなって編めなくなる籠もあるので、このサイズの真竹をみると少し伐りたくなってくる。
さて、この孟宗竹と真竹の間には一本の舗装された道路が種類の異なる竹を分けるように通っている。竹は成長力が強く、根が縦横無尽に伸びて森林を侵食すると言われるけれど、このような道を境にしてお互いの棲み分けをしている。もっと小さな人が歩けるくらいの道であっても案外お互いが侵食する事はないので不思議なものだ。
流鏑馬(やぶさめ)をテレビ等でご覧になられた事のある方も多いと思う。馬に乗って猛スピードで駆けながら弓矢で的を射るという、武士の嗜みとして行われてきた伝統的な武術のひとつだ。近年では、大きな寺社から地方の小さな神社まで、全国数カ所かで神事として奉納されているようだ。
さて、その際に射手が被る流鏑馬笠を復刻したのは、別に流鏑馬に関心があったからでも、誰かに頼まれた訳でもない。今では輸入品ばかりになってしまった竹笠だが、昔から日本で編まれてきた本物の竹笠の技術を、少しでも繋いでいければという想いからだ。せっかく細々と遺された技も、実際に使っていないと錆びついてしまう。もしかしたら、このような笠を復刻しても見向もして頂けないかも知れないが、最後の一閑張り職人の工房に、寂しく忘れられていた笠を手にした時、どうにか再現したい気持ちになった。
しかし、その甲斐あって、国産の竹笠ならではの良さを活かせる日がやってきた。今回の流鏑馬射手の方は、ご自身で笠の形を少し別の形に仕立てられたいと希望されていた。流鏑馬には、それぞれの流派があり、笠の形も微妙に異なっているようなのだ。
柿渋と漆で仕上げた後では硬くなってしまい、形を自分好みにする事はできない。そこで竹編み素地のままで提供させていただく事になった。
竹虎の流鏑馬笠と、射手であるお客様の笠とはこれだけ形が違う。また、柿渋や漆を塗布する段階でも色合いが異なっている。
笠を上から見た形も、何となくスピード感が伝わってきそうな格好の良いフォルムに仕上がっている。
何を隠そうボクも高校時代は弓道部にいた事もあるので、弓の扱いには多少慣れているが、二つを比べた時に笠のツバは反り上がって狭い方が射やすいのではないかと思う。流鏑馬は伝統行事であると共に、ちょっとしたミスで大怪我をしてしまう事もある激しいスポーツだ。それだけに、使用する道具は見栄えは当然だが、使いやすく機能的なものが求められる。竹編みの技の継承を考えるのなら、更にブラッシュアップしたモノ作りをしていく必要があると思っている。
早朝の雨の中、カーブの続く山道を登って行くと霧だ。小鳥たちも寒さで震えているのだろうか、物音ひとつしない静かな谷間に游文富(Wen Fu Yu)さんのインスタレーションがあった。この大きな建物全体を竹編みで囲ってしまっているのか、これは凄い。
近づいて見てみると高さもあり、ずっと向こうまで続く竹の壁が大迫力だ。長野県大町市に開催されている北アルプス国際芸術祭を、たまたま知って初めてやってきたけれど雨に煙る作品も幻想的で素晴らしい。
游文富(ヨウ・ウェンフー)さんは、この創作のために竹編みのシートを600枚も台湾から運んで来られたそうだが、何とその竹編みは自分が先日お伺いしたばかりの竹山鎮で作られたそうだ。
日本国内では、これだけの巨大な竹アートを見る機会はないので一体なんだろうか?と思ってしまう。しかし、游文富さん自身は様々な創作活動の中で、このような竹を使う大型作品は何度も経験されているようだ。
竹編みシートは台湾から持ち込み、地元の皆さんが伐採された竹材が骨組みに使われている。そう言えば、このような大きな作品を拝見すると、10年近く前に見た新潟の夢を思い出す。作者の王文志(ワン・ウェンヂー)さんも台湾の方だった、竹を使った大きな創作が多いお国柄なのだろうか。
竹編みは、しなやかで竹細工に使いやすい台湾真竹(桂竹)が使われている。これだけ多くの本数なのに丁寧に竹ヒゴにされていた。
今回、運よく游文富さんの作品に触れる事ができて、台湾に改めて興味が沸いた。
底の角部分が壊れて大きな穴の開いてしまった腰籠が届いた。持ち主の方は「もうダメだ!とても使えない!」きっと、そう思われて放置されてしまっていたのではないだろうか。竹虎では、竹細工の修理にも力を入れてはいるが、ここまで傷みの激しい籠はなかなか珍しい(笑)。
丸型が多い中で、カマボコ型で体に添いやすく使い勝手良さそうな形とサイズの腰籠だから、収穫籠などとして多用されたのだと思う。
しかし、壊れてしまった後は、もしかしたら倉庫の片隅で忘れられていたのかも知れない。スズ竹の竹ヒゴは長く使用した風合いではなく、表皮のツヤも失せて、ただ置いておいて古くなってしまった印象だった。
細いけれど、丈夫で実用的なハリガネが本体にしっかりと取付られているあたり、かなり熟練度の高い職人さんの手によるものだ。
口部分の藤巻きも随分と傷んでいたから、すべて取り除いた上で新しく巻き直すことにした。こうして出来あがりを手にすると本当に生まれ変わったみたいである。
高知県では寒い地方で成育するスズ竹が手に入りにくいため、晒した真竹をお預かりした竹のヒゴ幅と同じに細く割って手直してもらった。
ぽっかり空いていた大きな穴を綺麗に塞いだ後に、籐かがりをして頑丈に仕上げられている。ぜひ、農作業などにお役立ていただき、末永くご愛用いただければと思っている。
竹細工の修理で良くお問い合わせを頂くのは、やはり持ち歩く機会の多い籠バッグだ。ただ、一口に手提げ籠と言っても真竹、淡竹などの一般的な竹材から、スズ竹や根曲竹、篠竹さらには高級素材の煤竹まで様々な種類があり、それらの竹を染めて編み込んでいる手提げ籠などもある。
竹材が異なり、さらに形や技法も様々な籠を修理するのは容易ではないが、それぞれに工夫する楽しみがあり、完成した籠は例外なく格好イイ。
高知県では、スズ竹のように寒い地方の竹は入手が難しいものの、同じ自然素材だから違う種類の竹材を組み合わせても実は全く問題ない。
そもそも使い込んだ竹細工に、真新しい竹ヒゴを合わせるので修理した部分は目立ってしまう。違う竹材なら尚更だけど、それがむしろ風合いとして、段々と馴染んでくる感じなどはたまらない。
ところが先日、お客様から気になる事を聞いた。どういう理由か製作いただいた会社に修理をお願いするとお断りされたとの事なのだ。「むむ...?」他所で製作した竹製品まで手直しする自分たちは異例としても(笑)、自社で製作したものは当然修理するのが当たり前だ。少なくとも自分の知る職人で、自分の作った籠の修理をしないという方はいない。
加工性が高く、修理して使えるのが竹細工の良い所だ。お客様がお断りされたという手提げバッグも、一体どこを手直ししたのか分からないくらい綺麗に修理できた。
何か特別な理由があったのかも知れないけれど、竹の良さを多くの方に伝える使命が竹を志す全ての人にあると思っている。修理すれば親から子の世代までも長く使える籠を含めた竹文化が見直される時代になった。
本年も早いもので、クリスマスケーキやお正月お節料理の予約を見かけるようになった。それもそのはず、11月も今日は6日、あれよあれよという間に師走になるにちがいない(笑)。2024年も沢山の皆様に御愛顧いただき何とかここまでやってこられた、本当にありがとうございます!そこで、いよいよ竹虎の一年を締めくくる恒例お楽しみと言えば、そう、竹虎カレンダーだ!
2024年の感謝の心、そして新たな2025年もよろしくお願い致しますという気持ちを込めて、来月12月末日までに竹虎で商品代金合計3,300円(税込)以上、お買い物していただいたお客様、先着2025名様に竹虎カレンダーを無料プレゼント!
2025年のカレンダーは、熟練の竹職人の手仕事。下のYouTube動画にミカン籠として親しまれてきた虎竹盛り籠(鉄鉢)を編み込む職人の手業を紹介しているが、竹籠の細部に宿る匠の技は見惚れてしまう。
竹炭粒を100%詰め込んだ枕には沢山のお客様から嬉しいお声を頂いている。消臭や調湿効果はもちろんだが、高温で焼き上げた竹炭は熱伝導率も高く、まさに安眠の基本「頭寒足熱」となり頭を冷やす事で深部体温が下がりゆったり眠られるようになる。ストレス軽減や睡眠の質が上がり朝までぐっすり眠られる方が多いので、多数頂いているお客様からの竹炭枕への感想をご一読いただきたい。
そんな竹炭枕を、もっとお求めやすく手軽にお使いいただけるようにと新しく製作する事にしたのが、ワンジャリ竹炭枕。ワンジャリとは、枕に頭をのせたら竹炭粒から「ジャリ」と音が聞こえるけれど、音が一回聞こえただけで次の瞬間には眠りに落ちている、という自分の体験から命名した(笑)。
実は枕の好みは十人十色で、様々なご要望をいただいている。そんな中でも、硬さは竹炭100%だから仕方ないけれど、高さについては結構な時間をかけて検討してきた。竹炭微粉末が漏れにくい最高の不織布を二重にした構造だが、その中に5リットルから10リットルまで1リットル刻みで竹炭を入れてテストもした。本当に自分達が一番効果を体感している枕なので、これからも品質や価格も含めて見直しながら、さらに喜んでいただける製品作りを目指したい。
早いもので今年も虎竹伐採の季節がやってきた。虎竹とは、表面に虎皮状の模様があり、全国でもこの地域でしか成育しない珍しい竹だ。虎竹の伐採、そして山出しは、高知県須崎市安和の虎竹の里で毎年晩秋から1月下旬までのシーズンに行われる。この期間に、一年分の材料が山から運び出される。
虎竹は良質な親竹を残しながら、間引きされながら、伐り出される。伐採された竹は運搬機で山を下っていく、運搬機は曲がりくねった道でもスムーズに竹を運ぶ事ができるように改良されている。虎竹は地域の宝であり、この伝統的な作業には、多くの人々の手間と情熱が注がれてきた。
竹林での伐採、山出し、土場での選別を経て工場に入ってきた虎竹は例外なく油抜きという加工が施される。700度の高温になるガスバーナの窯に入れて余分な竹の分を取り除くと共に耐久性を高め、独特の虎模様を美しく浮かび上がらせるのだ。今年最後となった虎竹の油抜き作業を動画にした、百聞は一見にしかずだから、油抜きした時の熱を利用して竹の曲がりを矯正する「矯め直し」工程にも注目してご覧いただきたい。
竹籠は底部分の四隅、つまり角部分が一番傷みやすいのだが、さすがにここまで大きな穴が開いてしまった籠は珍しい(笑)。スズ竹で編まれたもので、竹ヒゴの変色の状態から随分と古く、壊れてから長い間放置されていたのが分かる。
形やサイズ感から腰籠として使われていたようだけれど、ここまで壊れてしまっているのに、今まで破棄されていないのは、貴重な籠だから捨てられなかったのか?倉庫に忘れられていたのか?とにかく本当に良かったと思う。
形がユニークなのが面白い。普通は丸型が一般的だけれど、そうではなく身体に添うようにカマボコ型に編まれた所をみると、恐らく別誂えではないかと思う。腰に下げる両サイドには針金が取り付けられていて、紐を通して腰に固定できるようになっている。
スズ竹は数年前の開花からまだ竹林の十分に復活していないので材料集めに苦労されているようだ。
口巻きの籐もボロボロだから、ここも巻き直しになるかと思う。スズ竹の竹材自体は高知では手に入りにくいので晒した真竹で対応する予定になっている。この竹籠がどんな風に生まれ変わるのか、是非お楽しみにしていただきたい。
蘇素任さんの竹ソファを、国立台湾工芸研究センターで初めて拝見した時の衝撃は、10年経った今でも鮮明に覚えている。見慣れているはずの竹編みの球ではあるものの、それを繋げてソファにするだろうか?発想の自由さ、面白さに驚いて、竹の可能性はまだまだ広がっていくのだとワクワクした。
その時には作品として展示されているので座る事はおろか、触る事もできなかったけれど、磨き細工特有の竹肌が飴色になるほどの長い時間をかけて、遂に作家の方にもお会いする事かでき、ソファに座る願いも叶った。
これだけ色合いが違ってくると、色違いのバリエーションのように勘違いされる方が多い。ところが、これは同じ作品である。元々、竹は経年変色していくのが楽しみなのだが、竹表皮を薄く剥いだ磨きの竹ヒゴを使っているので、更に色合いは深く、変化は早い。
蘇さんのご自宅に置かれている一人掛けの椅子も、惚れ惚れするような風合いになっていた。
出会った10年前が蘇る(笑)。
竹ソファと別に、室内にはヤタラ編みの座椅子も置かれている。
この椅子にも初めての時には、一体誰がどんな事を思って製作されたのか?と不思議に気持ちになった。それまでも国内の展示会で、台湾の竹工芸は先進的なモノが多く興味を持って見ていたが決定的な作品のひとつだ。
竹ソファはリラックスして座るものではなく、インテリアの要素が強い。けれど、このヤタラ椅子は竹ヒゴの弾力があり座椅子とし使い心地もよく機能性は十分だ。
更に、蘇さんのお部屋には竹ソファに使われた竹編みの球を組み合わせた竹灯りが設えられている。竹と光は良く似合うものだが、この照明は一段と良く出来ている、まるで浮雲がただよっているかのように感じられて雰囲気が素晴らしいのだ。